恋するシーサー
旧暦5月4日ユッカヌヒー。
糸満の一大イベント、御願(うがん)バーレーが開催される。
海人たちは伝統衣装を身にまとい
龍や魚や波が鮮やかに描かれたサバニ(船)に乗り込み、
集落対抗戦で競漕する。
幼なじみの翔太は初めての舵取りを任され、
この日のために1年かけて練習を積んできた。
「ゆーみーが帰ってくるってさ。俺の勇姿を見たいんだはずねー」
内地の大学院に通う由美は私の親友の糸満美人で、
翔太の初恋の相手だ。
「ゆーみーに見とれて船から落ちんなよ!絶対優勝してよ!」
翔太は任せとけと自信満々に答える。
御願バーレーは豊漁と海上安全、家内安全を祈願する祭祀でもある。
白熱するレースを前に、おばぁたちはパーランクーを打ち鳴らし、
すでに応援合戦だ。
「みーかー!」
呼ぶ声に振り返ると、由美が彼と手をつないで歩いてきた。
サバニに乗り込んだ翔太が由美を必死に探している。
そして、由美を見つけたその顔が途端に曇ったのがわかった。
そんなことはお構いなしに、サンティンモーから旗が振り下ろされ、
ハーレーはスタートした。
鐘打ちの合図に合わせ、漕ぎ手の男達がエークを力一杯に漕ぐ。
翔太も必死で舵をとる。
抜きつ抜かれつの戦いに観客も大興奮だ。
終始息のあったレース展開だったが、相手チームの驚異的な追い上げで、
翔太のチームは2位となった。
「ごめん。あとからねー!(また後でね)」
呆気に取られる由美を残し、私は急いでスーパーへ向かう。
お麩に卵、豚肉、キャベツ、もやし、人参。
今日はいつもより上等な花カツオを使おう。
あとは、アーサと島豆腐。
忘れちゃいけないオリオンビール。
翔太の大好物のフーチャンプルーとアーサ汁。
いつか食べさせたくて、おばぁに教えてもらった得意料理だ。
私の胸は高鳴り、ドキドキが止まらない。
お気に入りの唐草模様のやちむんに
フーチャンプルーをこんもりと盛り付け、
翔太に写メした。
きっともうすぐ、翔太がやってくる。
シーサー顔の私の、恋の戦いが始まる。
*みーかーのフーチャンプルー*
材料(2人分)
車麩 20g あれば沖縄の車麩
卵 大1個
豚肉 50g
もやし 80g
キャベツ 150g
人参 30g
鰹節 2g
塩 適量
醤油 少々
サラダ油 大さじ2
1 麩はちぎって水につけて戻し、固く絞る。
2 卵に塩少々を加え卵液を作る。1の麩を入れてからめる。
3 キャベツは一口大に切る。人参は4cmくらいの短冊切りにする。
4 フライパンにサラダ油大さじ1を熱し、2の麩を入れて炒め、卵に火が通ったら取り出す。
5 4のフライパンにサラダ油大さじ1を熱し、豚肉を炒め、もやしと人参、キャベツも炒める。
6 5に塩少々で調味し、麩を戻し入れ、炒め合わせる。
7 仕上げに鍋肌から醤油少々を流し入れ、鰹節を加えてさっと煽ったら出来上がり!