『スーツケース・ジャーニー』を観て
「北欧、暮らしの道具店」の新しいドラマ、『スーツケース・ジャーニー』を観た。
なんなら、前編、後編ともに5回以上観た。今までの、『青葉家のテーブル』も『ひとりごとエプロン』も両方好きだった。そして、『スーツケース・ジャーニー』もやっぱり好きだった。いろんな好きがたくさんあったので、拙いながらに感想を書いてみよう。
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そんな荷造りもありだなぁと思う
初めのシーンを見て思ったことは、「そんなに大きなスーツケースで行くの?」だった。栞の「荷物、多いかな」のセリフに、「うん、多いよ」と返事をする。
一泊二日の、近場の、そして間違いなくおもてなしが手厚いであろうホテルを目的地とした旅行に、クッションや、マグカップや、それからぬいぐるみを持っていくのかと。
僕が旅行に行くときは、なるべく荷物を少なめに行きたいタイプである(子どもを連れて行くようになってからは、そうも行かなくなったけれど)。だから、よっぽどでなければパジャマも持っていかないし、もちろんマグカップやクッションなんかを持っていこうと考えたこともなかった。
けれど、シーンがすすむに連れて、こんな荷造りもありなのだなと思う。それは山の上ホテルの、部屋にあったメッセージをみたときだった。
おうちの居間とおんなじように、リラックスできるものを持っていくのも、それもいいじゃないかと。慌ただしく飛び回るだけが旅じゃない。そのために、大荷物ででかけたっていいじゃないかと。
また、後編を観て、栞にとってはこの40分の旅が、かなりの大冒険なのを知る。旅慣れたナツとは違うかもしれないけれど、、一泊二日だから、近場だからと言って、ちょっとした不安やドキドキがあったに違いない。普段と変わらない何かがそばにあるだけでホッとする。そんな目的もあったのかなと慮る。
思い返してみれば、僕も旅行初心者のとき、あれもこれもあったほうがいいかしらと、かなりの荷物を用意していた。だんだん旅慣れていくうちに、自分にとってあったらいいものとなくてもいいものがわかってきた。もしかすると栞も、この作品の中でスーツケースの中身がだんだんと変わっていくのかもしれない。それもこれからの楽しみである。
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食事シーンは、まさに飯テロ
「北欧、暮らしの道具店」のドラマは、どれもお腹が空く。料理や食事のシーンがとっても美味しそうなのだ。
特に印象に残ったのは夕食のシーンだ。天ぷらやさんのしゃんと背筋の伸びたえび。万願寺とうがらしが油に入るシーン。きれいに油を泳ぐ白身魚。栞が天ぷらをサクッと食べるのが、本当に美味しそうである。
僕にはここ4年くらい、ずっと行ってみたい天ぷらやさんがある。栞と同じようにメニューをみて、ちょっと怯んでしまっているのだ。このドラマをみて、思い切って行ってみようという気になっている。それくらい、食事のシーンがとっても良かった。
それからノンノンのカクテル。エスケープのお祝いにとプレゼントしてもらったいちごのカクテルを準備しているときの、まあるい氷の綺麗さ。そっと添えられたいちごと、カクテルの鮮やかさ。そして、朝ごはんのふんわりとした黄色いオムレツ。どれもがやっぱり美味しそうで、夜に見るには、なかなか飯テロだった。
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物語の力を見せつけられた気分
今回のキーとなるのは、やはり「西の魔女が死んだ」の本である。
恥ずかしながら、僕はこの本を読んだことがなかったのだけれど、ドラマ中で抜粋されていたフレーズは、どれもが栞にそっと寄り添っていた。
ナツがストックホルムに行ってしまって、栞はどう感じだのだろうか。彼女の生き方、選択を応援すると同時に、どこか置いていかれてしまったような淋しさを感じたのではないだろうか。でも、ナツを責めることはできないし、淋しさがポカンと宙に浮いてしまうような、そんなやりばのない気持ちではなかっただろうか。
そんな栞が、勇気を出してノンノンに行くシーンも好きだ。
「やっぱり行きたい」
そう言って、おめかしして駆け出す姿が、勇敢でチャーミングだった。そして、バーに入ったあとに、こういうバーが初めてであると、正直に打ち明けた姿も好感が持てた。等身大の自分で一歩踏み出した姿は、格好良かったのだ。
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改めて、やっぱり「北欧、暮らしの道具店」の創り出す世界観がとっても好きだ。この『スーツケース・ジャーニー』も、続きのある物語になりますように。そんな思いを込めて、この感想文を終わります。