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最近の記事

【後編】大江健三郎「セヴンティーン」太宰治「女生徒」  書評

太宰治をよんでいた時期は、ちょうど今から一年前のことだったことを覚えている。太宰治といえば、「人間失格」であり、「人間失格」といえば中高生がこのんで読んで、「人間失格」で読書を習慣的にするようになったというひともおおい。私もそうしたひとをおおくみてきた。 私はといえば、読書をはじめるきっかけはぜんぜん「人間失格」ではないし、もっと個人的なことをいえば「人間失格」なんておもしろくないと思っている。今から一年前、ひょんなことから太宰治を読むようになって、もちろん「人間失格」に手

    • 【前編】大江健三郎「セヴンティーン」太宰治「女生徒」  書評

      言葉というものは、どうも、話し言葉と書き言葉があり、それはべつべつにそんざいしているように思える。もちろん、言文一致という話とはべつにして、それは現代のわれわれの生活レベルにおいても偏在している。 簡単な話、本にかいてある言葉をそのまま読み上げれば、それは本の言葉とわかる、論理的でなくもはや感覚的にそう思ってしまう。ただ、話し言葉と書き言葉がべつべつにそんざいしていたとしても、それが言葉であるかぎりにおいて、この二つをわけることはできない。 たとえば、読み上げてもいないの

      • 宇佐見りん「推し、燃ゆ」 書評

        まず「推し」というものがいたおぼえはない、だから主人公「あかり」に共感したとか、そういう感想はない。 2019年に芥川賞を受賞してから本作は書店の店頭に大量に平積みされ、たびたびネットニュースとしてとりあげられていたことがぼんやり記憶にのこっている。目新しいことと言えば、この「推し、燃ゆ」の文庫本が出た事だ。手ごろな価格で買えるし、(私はハードカバーをけっこうまえに購入しているが、ブックオフで売っているものでも価格は1000円をこえていた)本人のあとがきと金原ひとみの解説が

        • 阿部和重「グランド・フィナーレ」 書評

          私は「涼宮ハルヒの憂鬱」のアニメが好きで何度も見ている。とくに好きな話は28話だ。 キョンがハルヒのちょっとした無茶ぶりにいつものようにヤレヤレとこたえ、遠く暖房をとりに出かけるという話だ。「ハルヒ」では宇宙人、未来人、超能力者がでてくるなど、ハチャメチャな話ばかりだが、この28話だけはとくになにも起こらない。SOS団の部室で朝比奈さんと長門、小泉がおもいおもいのことをして静かに時間がすぎていく。キョンと小泉はボードゲームに興じ、長門は読書をし、朝比奈さんは編み物をしてすご

        【後編】大江健三郎「セヴンティーン」太宰治「女生徒」  書評

          村田紗耶香「消滅世界」 書評

          河出文庫からでている村田紗耶香氏の「消滅世界」をよんだ。たいへんおもしろい内容だった。文庫版解説は精神科医の斎藤環氏。 主人公の女性の子供時代から大人までの半生でなにが起こったかを追うストーリーになっている。世界半はSFのようである。そこでは人間同士の肉体的な恋愛がある種タブーとされていて、主人公の幼少期の章におけるテーマでもある。 肉体的な恋愛がいけないという「子供のような」おまじないじみたタブー視によって主人公の恋愛はさまたげられるわけだが、それではなにが恋愛のスタン

          村田紗耶香「消滅世界」 書評

          なんとなくはじめて、それから徐々にフェードアウトしていく予定、☞でも、どうしていつもそうなっちゃうのだろう。

          最近になって、人の話を聞かなくちゃ、とよく思うようになった。そうすると、僕にとって人と話すことというのはどういうことだったろうという疑問に思いあたった。 そういえば僕は自分の話ばかりしている、人の話なんてあんまり親身になって聞いてきていなかった。結局、そうしてわりかし普通の生活を送れているのだから気にしなくてもいいとは思うのだが、やっぱり話し相手にとって、自分の話を聞いてくれないというのは少なからず悲しいことだろう。 でも正直、ずっとこんな会話でもない会話ばかりしていた僕

          なんとなくはじめて、それから徐々にフェードアウトしていく予定、☞でも、どうしていつもそうなっちゃうのだろう。