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第二話:特急やくもに気をつけろ 〜出雲の神様から試練の詰め合わせギフトを贈られた話〜
前回までの試練はこちら。
出発前夜から怒涛のハプニングラッシュ。
岡山にたどり着いたばかりだというのに、
私の頭の中に
「この旅行、生きて帰って来れんのか...」
という不安が蔓延り始めた。
「もしかして、私って出雲に行ったらダメなんじゃ...」
完全に自信を失っている。弱気中の弱気だ。
岡山駅でJRのおじさんに華麗なる横入りを決められてから、確実に私の中の何かが動揺を始めていた。
そんな中差し迫る、乗車時間。
そう、私は特急列車に乗って出雲に向かうのだ。
出雲に行けば大丈夫、出雲に行けば大丈夫。
弱気になってる場合じゃない!
そう信じて私は乗り込んだ...
特急やくも!!!
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全席指定の特急列車、切符を握りしめて乗り込んだ。荷物を置いてトイレに向かう。
この3時間はどうか穏便に過ごせますように...
座席に戻ると、訝しげな表情を浮かべたおじさんが待ち構えていた。
な、なにごと!?
「あの、こちらの席なんですが」
え!!!!!
まさかの逆パターン!!さっきの逆!
私がおじさんになってしまった!!
(前回の記事参照)
「あ、あれ!?ごめんなさい!!間違えたかも!!」
大慌てで荷物を退けて、おじさんの隣に移動する。やだ、私ったらなんつー失態。
....いや、待てよ?
私は今回、全席窓側指定で申し込みをしたはず。
窓からの景色を眺めるのが列車旅の醍醐味だろ、窓側以外ありえない!!!って思いながら申し込んだもん。
ってことは通路側のはずがない。
切符を確かめると、そこにはやはり
おじさんが座っている窓側の座席番号が。
困惑する私。
「あ...あの...私の座席もそこみたいで...」
と、切符をおじさんに見せようとしたその瞬間....
「あああああ!これ、帰りの電車の切符でした!!!」
言い放ったのは、そう、私。
おじさんじゃなくて私。
お前かーーーい\(^o^)/
私が完全にやらかしてた!!
帰りの電車の切符見てた。
いやぁあああ恥ずいぃぃぃ!!!
おじさん、ごめん!!!
ペコペコともげそうなほど何度も頭を下げ、急いで行きの切符の座席番号に移動する。
早速これだ。やんなっちゃうよ。
これは完全に私の不注意だけど、それもこれも、前夜からのハプニング続きに動揺した結果とも言える。(ビバ他責思考)
恥ずかしさと情けなさでバクバクする心臓を撫でながら、やれやれほっと息をつき、さっき購入した駅弁を広げる。腹が減っては戦はできぬのだ。
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気づけば電車も発車していた。
なんだかよく揺れるな...
お腹が空いているからか、ちょっとこの揺れ、気持ち悪いな。
そんなことを思いながらも、カニ飯をたいらげた。おいしかった。
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窓からの眺めも、THE田舎の景色!
って感じで良い。うん、いいね。
流れゆく景色を片目に、読書タイムを楽しもうと本を広げた。
ガタンッ
ゴトンッ
ゆ、揺れる。
なんだこの電車、めっちゃ揺れる。
しかも左右にグォングォンって...
胃の中が掻き回されるような揺れ。
ちょ、集中できない...気持ち悪くなりそう...
揺れるたびに視線を上げ、遠くの景色に意識を飛ばす。
待って、これが3時間続くのかい!?
そう、「特急やくも」には罠があったのだ。
山あいのカーブの多い伯備線を高速で走行するため、現在の車両にも「振り子」装置が取り付けられているが、遠心力に任せて車体を傾けるため、この振れが乗り物酔いの原因になっていた。 SNSなどでは“ぐったり はくも”などとやゆされることもあった。
ぐったり はくも...
って、うまいこと言ってんじゃないよ。
でも朗報もある。
私が乗っているのは「新型」のやくもだ。
なんと最大23%、酔いが軽減されるらしい。
に、23%...
うん、普通に酔う\(^o^)/
ぐったりはくもまでは行かずとも...
まだ出雲に着いてもいないのに、私は心に決めた。
次来る時は絶対に飛行機にしよー!!
...この時はまさか旅の間毎日やくもに乗る羽目になるなんて思いもしなかったけどね。
食事も終え、やや揺れにも慣れ始めた頃、
車掌さんが私のいる車両に入ってきた。
手元の機械で乗客の確認をしているようだ。
切符?切符出すタイプのやつ?
と思いながら本を読んでいた私。
車掌さんはなぜか私の前で止まっている。
機械と私を交互に見比べているではないか。
え、待って、なんか嫌な予感する...
👨🏻✈️「切符...よろしいですか?」
え、なんで!?他の人にはしてなかったじゃん!なんで私だけ切符の確認!?
さっきは帰りの切符で席間違えちゃったけど
今度こそ行きの切符を見たはずなのに...
車掌さんに切符を手渡す私。
ドキドキドキドキ....
👨🏻✈️ニコッ☺️
あ、なんもなかったのか、よかっt
👨🏻✈️「あちら側ですね😊」
ひゃああああああああああ!!!
逆サイドだったああああああ
私の席、あっち側の窓側だったああああ
「ひぇ!!やだ!!すみません!!!」
慌てて正しい席に移動した私。
こんなに早く動けるんだ、人間って。
ってレベルで瞬間移動した。
酔いもすっ飛ぶくらいびっくりした。
穴があったら入りたい!!!
自分でももはやもう分からない。
なんでこんなことに!?
(さっきテンパって移動したからだろ)
このとき私は初めて悟ったのだ。
あの数々のハプニングは私を試すための試練なのではないかと。
きっとハプニングが起きても、イラっとしてはいけないのだ。どんな理不尽なおじさん相手でも。
あのおじさん達ほど無デリカシーではないけれど、私もおじさん側になってしまうことだってあるのだ。
流石にここまできたらもう何も起こらないだろうけど、なんかあっても広い心で受け止めよう、そうしよう。
そんなことを思いながら、正しい席で再び田舎の景色を楽しみながら読書に耽った。
まさかその「なんか」がこのあとすぐに起こるとも思わずにね...(全てがフラグになってしまう日)
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私の座席の前には、お母さんと男の子2人が座っていた。5歳くらいと2歳くらいの。
お母さんは、旅の疲れかぐったりはくもの影響か、2歳くらいの弟くんを膝に抱えて眠りについたようである。
5歳くらいのお兄ちゃんはiPadで静かに動画を鑑賞中だ。
(さっきまで斜めうしろに座ってたからさ、知ってるんだよね、ははは)
時々激しく揺れるやくもにビビりながらも、穏やかな時間が流れていた。
前で何かゴソゴソと音がする。
ペットボトルを開ける音がして、どうやらお兄ちゃんが1人でお茶を開けて飲んでいるようだった。お母さん疲れてそうだもんね、自分でやってえらいね。
ガタンッ
ゴトンッ
来たよ、この揺れ。
ぐったりはくもめ、抜かりないな。
と思った瞬間、
バシャンッ
明らかに何か、いや、ペットボトルが落ちた音。
あっ...
男の子の絶望した声も聞こえた。
そして私の足元にまで広がるお茶の海。
静岡もびっくりのお茶の海。
おそらく寝ていたお母さんも、ペットボトル落下の音で目が覚めた様子で
ひゃ!!!何やってんの!!!!
と絶望の声が響き渡る。
違うんよお母さん、いま電車、揺れたんよ...
お兄ちゃん、お母さん起こさないようにお茶飲もうって思ったんだよ多分...
と内心で思いながらも、見守るしかなかったチキンな私。結構な勢いでお母さん怒ってたから...
5歳の(知らんけど)お兄ちゃんの尊厳を守ってあげられるのはうしろにいる私だけだったはずなのに、ごめんな、坊や。
自分たちの荷物もびしょ濡れになったようで、
床に広がるお茶の海には気付いていない。
椅子の下から後ろは見えていないみたいで、お茶だまりになったところから、通路の方までお茶が伸びていく。
それでも自席で奮闘するお母さんに、私は「こっちまで濡れてますよ」とは言えなかった。追い打ちをかけるみたいでできなかった。だってお母さんの気持ちもわかるもの。
でも多分、これを放っておいたら床に荷物を置いている後ろの人たちが被害を受けてしまう。
だけど拭けるものが何もない!!!
そこへさっきの車掌さんカムバック!!
グッドタイミング!!
すみません〜!!
と声をかける。
え、聞こえてない!!うそだろ。
す、すみませんっ!!!
まだ聞こえてない、なんなら車両を出て行ってしまった。なんでやー!!!
思わず追いかける私!!!
あの!!すみませんっ!!!!
ようやく追いついて気づいてもらって
床にこぼれたお茶を拭きたいので何か拭くもの貸してください、と伝えることができた。
👨🏻✈️「あ〜はいはい!モップ持ってきますねぇ!!」
ホッとして座席に戻ると、お母さんが蒼白な顔で私を待っていた。
私が勢いよく車掌さんを追いかけて行ったことで事の次第に気がついたようで
ごめんなさい😭すみません!!すみません!!
とめちゃくちゃ謝ってくれて...
私はそっと車掌さんにお茶を拭いてもらって事なきを得たかったのに、逆に申し訳ない気持ちになってしまった。
そりゃ大声で車掌さん追いかけたら何事かと思うわな。
ドンマイ私\(^o^)/
無事にお茶も綺麗に拭いてもらえて、車内に再び穏やかな時間が訪れた。
そうこうしているうちに、もうそろそろ出雲に到着しそうな様子である。
やっと出雲に到着かぁと
数々のハプニングを思い返して
感慨深い気持ちになりつつあった。
弱気になったときもあったけど、それらを乗り越えた私は一皮も二皮もむけている。旅は人間を成長させるのだ。
さすがに6時間の列車旅は疲れたけど。
いや、ハプニングがなければそうでもなかったかも...!?
出雲についたらまずホテルにチェックインして、夕方はできれば夕焼けを見に行きたいなぁ。
細かいことは何にも調べてないけど、何とかなるでしょ♪
数々のハプニングを経ても尚、この楽観っぷりには我ながら天晴れである。
この楽観っぷりが悲劇を生むなんて...
そう、まだまだ続くよハプニング。
しかし、出雲市駅では気持ちの良い快晴が出迎えてくれた!!ハプニングの匂いなんて微塵もない。この瞬間はそう信じていた...
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次回、「夕焼けの向こうは暗闇」!
よかったら次回も、私に降りかかる悲劇を笑い飛ばしに遊びにきてね👉🏻👈🏻
(つづく)