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【S-books 2】『林陵平のサッカー観戦術――試合がぐっと面白くなる極意』(平凡社)
サッカーにまつわる多種多様なおすすめの本を紹介する連載企画「S-books」。
今回は、かつて柏レイソルにも所属したサッカー解説者・林陵平さんの著書。現役時代からヨーロッパをはじめ世界中のサッカーを観てきて、現在は月100試合を観戦するという林さんが、試合前何を知り、試合中に何を観ているとサッカーがぐっと面白くなるかを解説している。
サッカーの見方は無限。だからこそ知っておきたい基礎の観戦術
2010年、J2リーグを圧倒的な強さで優勝したレイソルにてシーズン10得点を記録した林陵平さん。レアンドロドミンゲスや北嶋秀朗とのコンビネーションを思い出すファンも多いのでは。
フォワードとして活躍していた現役時代からヨーロッパのサッカーマニアとして知られていたが、現役引退後、さらにサッカー観戦にのめり込んでいった林さん。その結果、『チーム全体の構造はこうだ、だから、このゾーンにスペースができるし、こうしたプレッシングが効果的になる』といった具合で、より俯瞰的な思考でサッカーを観戦するようになったのだとか。
その林さんのサッカー観戦の基本を一冊にまとめたのがこの本だ。
心構えから始まり、一試合90分間の見どころ、ポジション別に求められる能力、システムの特徴と現代の流行などを体系的に語っている。さらにヨーロッパの名将監督たちや林さんおすすめの選手たちも紹介している。
個人的にはゴール裏の熱狂やバックスタンドの拍手中心の観戦も、ブリティッシュパブでの観戦や自宅でのDAZN観戦も、どんな観戦もすべて正解と考えていたが、平易な文章でつづる林さんの観戦術にあっという間に引き込まれてしまった。
百聞は一見にしかず。「ジュビロ磐田 × 横浜F・マリノス」の試合で観戦術を実践してみた
このnoteを書いている2024年11月16日、ヤマハスタジアムでジュビロ磐田と横浜F・マリノスの試合が開催されている。実際に試合を観ながら、林さんの観戦術を確認してみよう。
ホームのジュビロは前節、ガンバ大阪との試合で前半先制するもその後3点を奪われ、終了間際に追いついたが、後半アディショナルタイムに被弾し敗戦を喫している。
いっぽう、マリノスは前節、サガン鳥栖に2-1で逆転勝利。直前のACLEで大勝して連勝したなかでヤマハスタジアムへ乗り込んできた。
『試合直前にやるべきことは、まずその試合の“立ち位置”を頭に入れておくこと』と林さん。さらに、『キックオフ1時間前くらいに発表されるスタメン』を把握し、『試合を想像し、質的な優位性、さらにはシステムの噛み合わせなどをイメージ』するとよいそう。
スタメンを見たところ、ジュビロは前節怪我で交代したハッサンヒルがベンチ外。ということは、ここ最近採用していた3バックをやめて、4バックに戻すのか。それとも誰か別の選手をディフェンスに入れて3バックを続けるのか。
マリノスのアンデルソンロペス、ヤンマテウス、エウベルの強烈なスリートップを、ジュビロのリカルドグラッサ、伊藤槙人らディフェンス陣がどこまで抑えられるか、噛み合わせがどうか。そんなことをイメージしながら試合開始を待った。
普段チェックしていない2チームとあって、過去の試合情報なども見ながらどんなシステムを採用するか、妄想することが意外とおもしろい。
試合は3-4マリノスの勝利で終結
ジュビロは試合開始直後、ボールの保持時は右サイドの松本昌也が高めにポジショニングする4バック、非保持時は3バックの可変システムを採用。事前の妄想の折衷案が正解のフォーメーションだった。
本書には『キックオフから10分は「4局面の振る舞い」に注目』という項目がある。
4局面とは、「攻撃」、「攻撃→守備の切り替え」、「守備」、「守備→攻撃の切り替え」のこと。開始早々にジュビロ・ジョルディクルークスが奪ったゴールは、まさに「守備→攻撃の切り替え」が結実したシーンだった。
しかし、その後はマリノスの選手一人ひとりのうまさに翻弄され、ショートパスが次々と通り、繰り返しゴールを脅かされる流れに。ジュビロも粘り強く守ったが、前半アディショナルタイムにマリノス・アンデルソンロペスのゴールで追いつかれてしまう。
ハーフタイムに改めて本書を開いてみると、『ハーフタイムでは「スタッツ」を確認』、『後半は「対相手」の対策を意識』、『60分前後は監督の駆け引きに注目』と、試合の状況に応じた観戦術を解説。
DAZNのスタッツでは、前半16本ものシュートを放ち、67%ボールを支配したマリノス。その流れは変わらず、後半開始早々にマリノス・西村拓真のゴールで逆転した。
得点が必要なジュビロは54分に選手交代を行い、4バックへフォーメーションを変更。リスク承知のシステムへ変えたわけだが、逆に64分、70分と立て続けに失点し、マリノスのリードが3点差へ広がってしまう。
試合の最終盤にジャーメイン良が2点を奪い、1点差にまで迫ったが、そのまま試合終了のホイッスルを迎えた。
結果を次へつなぐイマジネーション
林さんは結果に一喜一憂せず、試合後に「狙い」がどれだけ機能したかを確認するそう。『もちろん、勝利というのは最大の目標なわけですが、偶発的に勝っても継続性にはつながりません』と記す。
4-4-2から3-4-2-1、4-1-4-1や5-4-1などフォーメーションを自在に変化させ1点差まで迫ったジュビロだったが、守備面では多くのチャンスメイクを許し、直近2試合で8点を取られている。狙いがどれだけ機能したか確認し、修正するポイントが多数ありそうだ。観戦を通してそんなイメージを得られただけでも、この本を読むメリットがあるのではないか。
“書かれているのは知っていることばかり”などと決めつけず、一度、本書を片手に林式の観戦術を試してみてほしい。
また他にもいくつか著書があるので、それらのリンクも以下に紹介しよう。参考にしていただけると幸いです。
・新書版
・Kindle版
・単行本
・Kindle版(kindle unlimited対象)
単行本(現役時代に発行)
Kindle版(kindle unlimited対象)
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