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ベイビーティース、病んでいるのはティーンより大人たちか、
渋谷PARCOの劇場に行ったらガラ空きだった。外には沢山の人が居たのに。やや映画業界が心配な昨今だ。本題の映画のあらすじは不治の病の少女とそこに現れる恋愛関係になる男子という王道中の王道なのだが、擦られた設定かと思いきや監督のセンスなのかベタついた感じがなく悲しいのに爽やかささえ感じるものだった。同じ設定でいうと「きっと、星のせいじゃない」(2014)がある。それよりもっと今っぽかったし選曲もかなり良くspotifyでリストになっている。https://open.spotify.com/playlist/0ISV5HPnKN31LSoAtaw3W8?utm_source=embed_v2&go=1&play=1&nd=1
(以下ネタバレあり)主人公の女の子はどこかで見たことあるなと思ったら、グレタ・カーウィグの「ストーリー・オブ・マイライフ(若草物語)」の三女ベス役のエリザ・スカンレン。振り幅があってこれから楽しみな女優になりそう。監督は舞台の演出を経験して来たシャノン・マーフィー。いつもながら女性監督が描く女性ってリアルでいいよなと思う。女が共感できる女。
エリザ演じる主人公のミラは不治の病でもうすぐ死期が近そうだ。病気の詳細や診察などは殆ど語られない。父親は精神科の開業医で家の中を見る限りではまぁまぁ金持ち。ミラはティーンだし、自分の病を知っているので浮き沈みが激しく無茶もする。薬中のモーゼスを好きになったりクラブに行って屋上で寝たり、ってティーンならこれ位普通なんだけど彼女にとっては命取りになる。こんな状況で両親はというと、母親は抗精神薬常用でいつも情緒不安定、こんなお母さんやだ〜って感じで色気もなぜかムンムンしてる。父親はしっかりしているかと思いきや、モルヒネ打ってるし、おいおい・・・モーゼスもいつも目の周り赤いしさ。そんな感じでメインの登場人物ほぼ全員精神状態が諸刃の刃で病んでいるのだ。精神不安定のグループの中にいるミラがだんだん一番まともに思えてくるのは監督が仕掛けた演出なのか。(ミラともう一人、一般的には一番不安定になりやすい妊婦のお向かいさんが一番まともに見えてくるのが面白い)
ラストは設定どおりミラの死を迎える。しかし通常の起承転結な感じではなく、彼女の死ぬ間際の恋を通して短い間でも彼女が輝いた時間、それに巻き込まれながら周りの人間達も影響を受けていく。と言ったら真面目な論評みたいだけど。説明部分がかなりカットされていて、いきなり誕生日会にモーゼスの弟がいたり、学校のトイレでミラのカツラをしつこく貸せと言って来た女の子は伏線かと思いきや(私が見逃しているかも)その後の登場はなく、モーゼスの一瞬出てくる彼女のくだり、母親のくだり、色々断片なんだけど、なんか上手いこと一本になっちゃってるのはミラへのフォーカスを続けていること、もしくはミラ目線なのか。そしてやっぱり音楽が語っている部分も大きいのかなと思う。にしても今っぽさを感じたのは大人の方が病んでいる描写だった。意外と捨て身のティーンの方がメンタルが強く、自分の欲しいものが分かっているのかもしれない。大人の方が依存しているのだ色んなものに。