北の枕草子。
北の枕草子
春は函館。満面の五稜郭の桜は言うまでもなく、世界広しといえどもここより秀麗な春を知らない。
夜景を見れば大地はくびれて湾は藍色。街あかりは熟れた柑橘のきらめく色彩。もっといいのは夜に浮かぶ漁船の漁火。あの闇の上でだれかが働いていると思える自分が好き。
夏は富良野。盆地の地形が美しくラベンダーは紫。でも本当にすばらしいのは十勝連峰。
真ん中にそびえるのは夏でも白い十勝岳。左に美瑛岳、美瑛富士、オプタテシケ山。右に目を移せば上ホロカメットク山、そして最後に富良野岳。日本アルプスの美しさ、スイスのアルプスの荘厳さを知らなくても、この景色だけを知っていればそれでいい。
秋は札幌。銀杏並木はいたるところにあり黄色。紅葉が赤めく様子にあわせて恋する2人。8月の後半から涼しくなれば夜。冷たい雨ふり歩道に散る葉は終わった恋。
冬は網走。知床半島にひっかかる流氷。見たことがある北海道民は少数派。
地球上で流氷が見られる最南端がここなのにその希少性をだれも知らない。寒さとそこにたどり着くまでの労力と引き換えの等価交換。テレビで見て知った気になっている人は興醒めで論外。
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