時空を超えるいたずら。
小学校5年生のとき、席替えを終えた私は、教室の真ん中、後ろから3番目あたりの席に座っていた。
席替えにおける席移動には
2つのパターンがある気がしている。
ひとつは、机ごと移動するパターン。自分の机と椅子をもって、新たな席に移動するやつ。
もうひとつは、机はそのままに、自分の身体だけを移動させるパターン。机の中の荷物をもって、新しい席に移動するやつだ。
前者と後者ならば、おそらく圧倒的に後者の「自分の身体だけを移動させる」パターンが多い気がするが、全国ではどうなのだろう?
…
新しい席に座った私は、
机の中に教科書や資料集をしまった。
新しい席、新しい景色で普通に授業を受ける。
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ある日、机の中を手で触っていた。授業中、ヒマだったのだ。どんなきっかけかはわからないが、机の中に手を入れて、その天井部分を触った。
カサッ。
何かが手に当たった。
手触りはやや固く、サイズ感は小さい。
おや?
と思って、何だろうかと少し触ってみると、それは紙であると分かった。指先に神経を集中させる。机の中の天井部分に紙が張り付いている? どうやって? と思ってもう少し触ると、丸く固いものの感触が伝わってきた。
画鋲である。
つまり、机の中に紙が折り畳まれていて、それが画鋲によってとめられていたのだ。
なんだろう? と思って、授業中、先生にバレないように力を入れて画鋲を引っこ抜いてみた。スポッと画鋲が抜けるのがわかった。
机の中から手を出してみる。
私の手には折り畳まれた紙がにぎられていた。
ワクワクする。
なんだこれは?
先生はもちろん、隣の席の女子にバレないように、折り畳まれた紙を、そ〜っと開いてみた。
すると、
て、手紙だ!
しかも1997年!?
私が小学校5年生のときは、
西暦でいうと2001年だ。
4年前のだれかからの手紙ということになる。
私の記憶が正しければ、手紙の主は女子っぽかった。女子が書く独特の丸みを帯びた筆跡だったから。
すっげぇ。
タイムマシンみたいじゃん。
ロマンだ。すごい。この手紙を見つけた私は、誰に言うでもなく、これを残した主がどんな人物なのだろうかと想像を膨らませた。そしてこう思ってしまった。
「おれもやりたい」
そう考えたあと、
実行に移すまで時間はかからなかった。
でも、
同じことをやるのではつまらない。
あ、そうだ。
クイズにしよう。
手紙にメッセージを添えて、クイズを出題する。
クイズを解くと、次の場所が示されていて、そこにいくとまた手紙がある。次の手紙にもクイズが書かれていて、それをまた解くと次の場所が浮かび上がる。
うん。
たぶん、手紙が永遠に見つかることはなさそうなんだけど、でもおもしろい。やってみよう。
というわけで、授業中に手紙を作った。
4枚だ。
1枚目にはクイズを。
自分の机の中の天井部分に貼る。
極力紙をうすく折りたたんで画鋲ではっつける。
どんなクイズにしたかは忘れたが、クイズを解くと「音楽室のピアノの裏」となるようにした。音楽室のピアノの底はきっとだれも見ないから。
で、休み時間に音楽室に行く。1人で。
ピアノの下に潜り込んで、2枚目の手紙を貼る。セロテープで。
その手紙にもクイズを書いた。
これまたクイズの内容は忘れたが、それを解くと「ベートーヴェンの絵」となるようにした。音楽室の後ろにはベートーヴェンやモーツァルト、バッハなどの音楽の偉人の絵が飾ってある。これもなかなか移動されることはないから。
休み時間、だれもいない音楽室で1人、ベートーヴェンの額縁を引っ張って、その裏に3枚目の手紙を貼った。セロテープだ。もちろんこれにもクイズが書いてある。
これまたクイズの内容は忘れた。
これに正解すると「体育館 舞台 階段 裏」となるようにした。我が母校の体育館の舞台には両脇に階段が置いてあった。その階段は持ち運びの移動ができるようになっており、中が空洞になっている。
これまた休み時間に体育館に1人でいき、階段を動かす。で、階段の中の空洞の天板に4枚目、最後の手紙を画鋲ではっつけた。
最後の手紙にはこう書いたことを覚えている。
あの手紙がだれかに見つかることはなかったかもしれないし、だれかが見つけた、ということを確認する術もない。
だれに言うでもなく、1人でそんな遊びをして、
私はあの小学校を卒業したのだった。
最近までそれを忘れてたよ。
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