腕時計にこだわりがちな人。
時計の読み方って特殊だよなぁ。
長針、短針があって秒針がある。むかしどこかでみたナゾナゾで「24時間ずっとおいかけっこをしているチビとノッポはだれでしょう?」というものがあって、答えはもちろん「時計」なのだけど、子ども心をすっきりさせるには十分なナゾナゾだった。
時計の見方・読み方って、たしか小学校のなにかの授業で習ったような気がするのだけど、当時の私は「なんて理不尽なものだろう」と考えたことを覚えている。
いまが何時なのかは短針をみればわかる。短針が示す先をみれば1から12のどれかあたりを指しているから、子どもでもなんとなく理解ができる。
でも長針、おまえはダメだ。
いま、何分なんだろう? と思って時計を見つめる。1から12の数字のどこかを指しているが、たとえば長針が「5」を指しているとき、これは「5分」ではない。「25分」だ。表記されている数字を5倍しなければならない。なんて理不尽な!
いま、これを読んでいる方はきっと大人だろうから、この感覚をとうのむかしに置いてきているかと思うのだけど、表記されているものと出力されるものが異なる、というこの感覚はよく考えると理不尽だ。
「言わなくてもわかるよね」みたいな暗黙のルール・法則をきちんと理解することを、私たちは子ども時代に覚えなくてはならない。そういや私の妹はだいぶ大きくなるまで時計が読めなかったなぁ。
昨日会った人からこんな指摘を受けた。
「イトーさん、その腕時計ずいぶんアンティークなものですね。オメガですか?」
昨日の私は外国時計メーカーのORISの腕時計をしていた。だから「あ、これですか、オメガではなくORISなんです」答える。
すると相手は「お〜、ORISですか、珍しいなぁ」と言ってくれたのだが、彼の左手首にはロレックスが巻かれていた。商談の最初から「ロレックスだなぁ」と思ってはいた。きっと時計が好きなのだろう。
続けてこうも言われた。
「ORISのアンティークをしている、ということは、きっと似たようなアンティーク時計をあと2、3本持っているのではないですか? しかもこだわりを持って。そうだな、たとえば、製造年がお母さんのお誕生年のものとか?」
ドンピシャである。
私はこの腕時計のほかに、SEIKOロードマーベルとオメガのシーマスターを持っている。高額な時計ではないがどちらもご指摘の通りのアンティーク調で、片方が母の誕生年、もう片方が父の誕生年の製造。ちなみにORISの腕時計は妻の誕生年の製造だ。
それを伝えると、その方は続けてこう言う。
「イトーさんのような方ならやはりそうだと思いました。時計はストーリーが大切ですからね」
自尊心。
私は続けて彼のロレックスのストーリーについて質問したが、そこにもまたきちんとした物語があった。
時計にせよなんにせよ「言わなくてもわかるよね」みたいな暗黙のルール・法則がある。だが、ルール・法則を超え、ある事象の裏側を類推できる人には初めて会った。
言い当てられすぎて、ちょっと引いた。
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