暮らしの余分を楽しむこと
くしゃみ3回から広がる話。
楽しそうだから浮かび上がる影。
ちくりと痛むから踏みとどまる涙。
見えなくなって迷い出す。
時間を数える。失うから大事な今。
私には、ずっと1人で暮らしているおばがいる。
おばには好きなことがあり、ずっとその好きなことを大事にしながら過ごしてきていて、交友関係が幅広く、おいしいものを食べること、素敵なものを見ること、季節を楽しむこと、毎日の暮らしを楽しむことが好きな人。
小さな頃からかわいがってもらっていて、いろいろなところに連れて行ってもらった。
私が小さな頃には、まだおしゃれなカフェや雑貨屋は近くにあまりなかったのだけど、バスに乗って隣町にあるかわいらしい喫茶店と雑貨屋がひとつになったお店や、おしゃれな服屋さん、たくさんのときめく文房具が並ぶお店にときどき連れてもらっていた。
フルーツパフェやマロンパフェに心を奪われ、たくさんの見たことのないかわいい雑貨にときめき、フリルや水玉の服にほれぼれし、たくさんの文房具に夢中になっていた。
誕生日には好きなものをプレゼントしてくれたので、それらの中から欲しいものをひとつ選び、プレゼントしてもらっていた。
こういうの好きだなぁ、かわいいなぁ、心奪われるなぁと、自分の好きなものがどんなものなのか知ることが出来たのは、そうやっていろいろな場所で、いろいろなたくさんの物を見る機会を作ってくれたおばの影響だと思っている。
おばの家に行くと、その季節に合ったものが飾られている。お正月、節分、ひな祭り、節句、梅雨時、お盆、十五夜、クリスマス……。それらに合わせて小さなオブジェが棚の上に並べられていた。並べ方にも手をかけている。
いつも部屋には花が飾られていて、天気がいい日にはいつも布団を干してふかふかの太陽の匂いいっぱいの布団で寝ている。休みの日にはあちこち1人でも友達とも出かけている。出かけた時には、季節の移ろいに敏感できれいなものや素敵なものが大好きで、好きなものには一直線だ。
そういう姿を小さな頃から見聞きしてきて、大人になった今、ああこれが毎日の暮らしを楽しむってことなんだなぁと思うようになった。
寝たり、食べたり、出かけたり、買い物したり、お風呂に入ったり……。日々の暮らしはただそういうことを繰り返すことで過ぎていくけど、余分を楽しむ感じ。
ただ寝ることもふかふかの布団にして気持ちよく眠ること、肌触りのいいお気に入りのシーツにすること。そういう余分なように思えることにおばは一生懸命に手をかけている。
そういうところがいいな、全部はむずかしいけど真似したいなと思っているし、とても影響を受けている。
おばとは性格がまるきり正反対で、一緒に過ごしていると合わないなというところもある。でも合わないところもあるけど、とても話が合うところもあるし、素敵なところがたくさんあることを知っているから、合わないところがあってもそういう一部があるだけ、と思えるようにもなった気がする。
おいしいものが大好きで、出かけることが好きで、心が踊るものを見聞きすることが好きなのはきっとおば譲りなんだと思う。