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「一緒に考えてほしいんです!」相談から始まる北海紙工社のものづくりメイキングレポート Vo.3

北海紙工社へのご依頼には相談から始まるケースもある。
アイデアに形を与えるメイキングプロセスを3回連載で大公開!

Vol.03 時計を作れる紙箱屋になりました

本刷りの紙箱にいよいよムーブメントと針を装着!

2月下旬の初回ミーティングに始まり、3月のサンプルチェックを経て4月上旬、「納品します」と北海紙工社の梅田さんからクライアントの川尻竜一さんのもとに連絡が入った。

梅田さんが信頼を置く紙箱設計士さんの工房を訪ねると、テーブルの上には時計トロフィーのボディとなる青色の紙が。

川尻さんが考えた盤面文字「SAPPORO ART DIRECTORS CLUB 2022 RYUICHI KAWAJIRI CHOICE PRIZE → KOJI TERAO」が印字されている。

追加案で横にも「EXACTLY SEVEN O’CLOCK IS SPECIAL」の文字を箔押し。
なぜ「7時」が特別なのかはvol.1へGO!


「かわいらしいなぁ」完成品を手に取る川尻さんの小さなつぶやきが嬉しそう。


手作り時計キットはメーカーや価格によって秒針の有無やパーツの色・長さが異なる。
ここでは梅田さんが気を利かせて用意した秒針有り・無しの両方を見比べた。

「うーん、どっちもいいなあ〜」。甲乙つけがたい魅力に悩む川尻さん。
最後は「カチカチと動いている見た目の安心感と動くトロフィーとしての“生きている感”が強まるから」と、秒針有りバージョンを選択した。

作業の過程で大収穫!新しいトンボの入れ方

こだわりと工夫は、紙箱づくりのあらゆる場面に宿っていた。

紙箱の折りには、美しいたたずまいを表現するために紙に半分切り目をいれるハーフカットを採用したが、そうすると箱全体の強度がやや弱くなることを見越した梅田さんは、作業工程を「文字盤の箔押し→ハーフカット→本体カット」の順に組み立てた。

このとき思わぬ発見だったのは、紙を切り出す機械プロッターで加工するハーフカットを応用して外トンボ(断裁時の目印)を付けることができたこと!

通常は紙箱本体をカットしてから箔押しするため、箱の天面や側面などに合わせて箔押しの位置合わができる。

ところが時計トロフィーのようにこの順番を逆にした場合、箔押し後の紙を何の目印もないまま箱形にカットするのは至難の技。

かといって箔押しでトンボをつけるとコストが跳ね上がる…といろいろ考えあぐねた末に梅田さんたちはこの「ハーフカットで目印をつける」という斬新なアイデアに行き着いた。


くの字のような二重線がハーフカットで入れた外トンボ。
これを目印に位置を合わせて機械が本体をカットしていく。

「プロッターでトンボを入れたのは、うちの仕事でもこれが初。これからいろんな場面で応用が効きそうです」。梅田さんの経験値がまた一つアップした瞬間を垣間見た。

切り出した針を抜いているところ。紙目(紙の繊維の方向)をタテに揃えて針が丸まらないようにする、耐久性を考えてサンプルより厚めの紙に変えるなどの微調整もきいている。

遊びを歓迎する「梅田さんあるある」で楽しく飛躍

「…うん、いいですね」。全てを見届けた川尻さんの口から、梅田さんが一番聞きたかった言葉が出た。

息子の景くんを思って『BLUE』を作った寺尾さんに、デザイナーとして父親としても敬意を込めて家族の時を刻む「川尻竜一賞」トロフィーを贈りたい。

川尻さんの思い描いたコンセプトが今、目の前に、確かな形を得てたたずんでいる。


右の青い本が寺尾さんの川尻竜一賞受賞作『BLUE 2021-2022』。その奥に最初の打ち合わせに川尻さんが持ってきたデザイン案が見える。

「今回、ぼくは確かに時計のデザインは考えましたが、梅田さんから“実際に時計を動かしましょうよ!”と言ってもらえなかったら、こういう仕上がりにはなっていなかった。このいい意味での“思ってたのと違う”ものづくりが、“梅田さんあるある”なんです。そこをいつも楽しんでいます」

梅田さんだから、北海紙工社だから相談したい。そう思わせてくれる「何か」の正体がここにある。

どのスタートラインも「喜ばれるものづくり」

「ぼくとしては毎回お客様に奇抜なアイデアをご提案しているわけではないんです」と笑う梅田さん。

「当社の大半を占めているのはごく一般的なクライアントワークですし、どの仕事も《喜ばれるものづくり》を目指すというスタートラインは同じです!」と強調する。

「それでもご提案してボツになったアイデアは次に使えるかもしれないし、今回のハーフカットトンボのようにそこで生まれた発見が自分の糧になっていく。これからもこの繰り返しで、技術の幅を広げていきたいです」


「時計トロフィーのおかげで時計を作れる紙箱屋になりました」と梅田さん。


川尻さんは本作を札幌ADCコンペティション&アワード2023のジェネラルグラフィック〈立体〉部門に出品するという。

紙だからできた。紙なのにできた。その両方を行き交う北海紙工社のものづくりに、こうして時計トロフィーという新たな実績が加わった。

もちろん今回のようなデザイン性の高い案件だけでなく「皆さんの身近にあるDM等の販促物や包装のお仕事も気軽にお問い合わせください!」(梅田さん)とのことなので、関心がある方はどうぞ北海紙工社へ。

「喜ばれるものづくり」の時間を一緒に共有してみませんか!

[クライアントトーク]川尻竜一さん 

「先日寺尾さんに会って、今年の夏に控えている授賞式よりいち早く完成品を見てもらいました。その時に改めて、寺尾さんがいたおかげでこういう面白いものが生み出せんだなと実感しました。そういえば、もともと誰に頼まれたわけでもないのに、いつのまにかみんなでカッコイイ時計をつくることに夢中になっていた。その結果、自然とこの《時計のようなトロフィー》が生まれたことがすごく面白かったです」



(編集後記)

以上。
これにて大ボリュームの3話は終了です。お付き合いいただきまして誠にありがとうございました。お楽しみいただけましたでしょうか?
一緒に楽しくものづくりをする感覚を感じていただけたなら幸いです。
もし株式会社北海紙工社に興味を持たれた方がいましたら、下記までお気軽にお問い合わせくださいませ。


株式会社 北海紙工社
担当:梅田
〒061-3244 北海道石狩市新港南2丁目3722-4
Tel: 0133-64-5633 
Mail: info@sikoh.co.jp
HP:https://sikoh.co.jp


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