3:友達
今日は風が冷たい。
シルバーアッシュのクルクルの髪が風に煽られる。
胸元がざっくり開いたニットにデニムのショートパンツ、マウンテンジャケットを羽織って寒空の下を歩く。
生きてる実感が欲しくて開けたピアスは昨日で11個に増えた。
腕を切るよりオシャレに見える。
ありさとの待ち合わせ場所に着くが時間通りに来たことがない。
大抵、寝てたとか男と電話してたとか。
だんだん鼻の頭が赤くなって来ている。
私の住む街は煌びやかなネオンや高層ビルの街並み、東京の様な華やかでキラキラしている所とは少し違う。
いや、地方の街並みなんて少しどころかとても貧相にみえる。
居酒屋と夜のお店の客引き、同窓会や結婚式の二次会の集まり、仕事帰りのサラリーマンや女子会と思われる女の子達の集団。
表向きは小さな夜のアーケード、2流3流のレストランと気軽に入れる居酒屋が軒を連ね客引きで捕まった男の人達がワイワイとお店に入っていく。
しかし、少し横手の小道に入ると街灯もまばらで、風俗嬢とガラの悪い人達がチラホラ。
裏路地にはゴミの山の中で寝ている人もいれば、小さな空き地でホームレスが大きな独り言を言っている。
絡まれている人が居ても誰も助けになんて行かない。
ありさとの待ち合わせはいつも、ソープランドの目の前にある駐車場だった。
そんな所で待ち合わせするものだから、大抵は風俗嬢と勘違いされて声をかけられる。
ある程度タイプの人なら、ありさとの待ち合わせもすっぽかして近くのホテルに泊まる事もざらだ。
今日はありさの方が早かったらしい。
目の前のお店からニットのワンピースにチェック柄のチェスターコートを着たありさが出てきた。
「今日は何食べる??お金ある??」
「ある訳ないっしょ。今日売り上げいくらだったの??奢れよ。」
「またありさにタカる気~??その辺のオヤジ捕まえようよ~」
財布なんてお飾りで、小銭しか入ってない事もしょっちゅうだ。
しかし、お寿司も焼肉も居酒屋も行きたい。美味しい海鮮と、食べたことの無い高級食材でお腹を満たしたい。
「オヤジ探すか~~」
ありさと連なって夜の街のなかへ【社長】を探しにふわふわと歩いていく。