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起業ライダーマモル・アドバンス 収支計画を立てよう 3日目:実践!売上高予測を立ててみよう


ビジネスの成否を決める収支計画。

1回目は価格決定の大切さと、価格決定に当たって参考になる競合調査等について、2回目は客単価の構成要素と、客単価を設定する方法等について話をした。

1回目の記事はこちら。

2回目の記事はこちら。

今回は、それらを踏まえて具体的な事例に基づいて、簡単な数値も使って、みんなと一緒に「売上高予測」を立ててみたいと思っている。

・・なんだか面倒そう、と思ったそこのキミ!

これが実はとっても簡単なんだ!!(声を大にして言いました)

事例に沿って数値の流れを目で追いながら、「なるほど、こんな感じね」と理解できれば十分だ。

もちろん、収支計画を最初から自分で作れる必要なんてない(みんなそれができたらオレは必要ない)。少しずつ、丁寧に見ていこう。

【前回までのおさらい】

まずは前回までのおさらいだ。要約すると、次の2点がポイントだ。

2日目のポイント 
売上高 = 『 客数 』 X 『 客単価 』
1日目のポイント
「適切な売上高予測」は「適切な客数と客単価の見通し」で決まる。

そして、「適切な客数と客単価の見通し」を立てるための方法としては、例えば以下のようなものが考えられる。

≪客数の見通しの立て方≫
◆競合店や類似店などの集客動向を実地調査して、客数の見通しの相場感を得る。
◆業界関係者や見込み顧客へのヒアリングを通じて、自社の商品・サービスに対する客数の見通しを立てる。
◆友人・知人等のネットワークを通じて事業のPRを行い、実現性の高い見込み顧客リストを作成する。等

見込み顧客リストについては是非作成してみてほしい。それは単に集客の見込みを見える化するだけでなく、具体的な顧客像が見えることで自分の商品・サービスを検討する時に”何をやり、何をやらないか”を決める上でも助けになってくれるからだ。

≪客単価の見通しの立て方≫
◆競合店や類似店などの商品・メニューを実地調査して、客単価の相場感を得る。
◆業界関係者や見込み顧客へのヒアリングを通じて、自社の商品・サービスに対する客単価の見通しを立てる。

客単価は見通しが甘くなりがち(高く設定してしまいがち)だ。ヒアリング時に「いいね!」と言ってくれる人に、「実際のところ、何円で購入してくれますか」等、一歩踏み込んでヒアリングすることが大切だ。

以上のポイントを踏まえて、売上高予測に挑戦しよう。

・・・

実践! 売上高予測:学習塾のケース

今日は、ちいさな学習塾を例に、実際の売上高予測を立ててみよう。

ケース:学習塾のコンセプト
勉強の苦手な小学生を対象に、若く親しみやすい先生とゲーム感覚で学べる教材を活用し、リアル・オンラインでいつでも相談ができる指導体制によりスキマ
時間に学習する機会を増やすことで、学習する習慣をつける学習塾

まず、売上高の計算式をケースに当てはめると、

売上高 =『 生徒数 』X『月謝または年間料金』

となる。

つぎに、先ほど説明した売上高の見通しを立てるための方策をケースに当てはめてみよう。

≪客数の見通しの立て方≫
◆他の塾や学童保育施設、カルチャースクールなどの集客動向を実地調査して、生徒数の相場観を養う。
◆塾経営者や生徒をもつ親(見込み顧客)にヒアリングをして、自社独自の強み・サービス、他の競合ができていないサービスに対する需要の見通しを立てる。
◆まずは友人・知人で生徒をもつ親等に事業のアピールを行うことで、実現性の高い見込み顧客リストを作成する。


≪客単価の見通しの立て方≫
◆他の塾や学童保育施設の月謝・年間料金・カリキュラム・テキスト品質・サポート体制(塾外でのフォロー)などを実地調査して、客単価の相場観を養う。
◆塾経営者や生徒をもつ親(見込み顧客)にヒアリングをして、自社独自の強み・サービスに対する客単価の見通しを立てる。

その他、商圏調査などもあるが、それはまたの機会に紹介したい。

以上を踏まえ、現実的な相場観を掴み、数値を組み立てていくというのが売上高予測の流れだ。

・・・

今回のケースでは、調査の結果、次のことが分かったとしよう。

1、競合の状況

近隣の競合となる学習塾は2件。A塾は生徒数30名、B塾は10名。また、学童保育施設が1件あり、そこにはおよそ15名の登録者がいる。

学習塾は両方とも難関校進学塾で、入会金や月謝などはやや高めであり、カリキュラムも過密で、学習意欲が高い生徒(主として有名私立中学校受験生)向けであることが分かった。

学童保育施設では、子供たちに習い事サービスも提供しているが、施設の制約もあり、現在はお絵描きと習字の2クラスにそれぞれ4-5名程度が在籍している。

2、見込み顧客のニーズ

知人や地域コミュニティの伝手を頼りに、学区内に小学生の子供をもつ親たちにヒアリングをしたところ、勉強が苦手で学校の授業についていけない、学校を欠席することが多く、欠席日の授業が追いつけない、などの悩みを抱えている生徒が少なからず存在することが分かった。

また、共働きの夫婦も多く、子供の勉強をみてあげたいがなかなか時間がとれない、塾にも行かせたいが進学塾は高いし送り迎えがむずかしい、中学受験は考えていないが子供の勉強が遅れてしまうことが心配、という声が多数よせられた。

3、見込み顧客リストについて

約半年間にわたって40名ほどの親にヒアリングを実施したが、塾のコンセプトについて「すごく興味がある/興味がある」と言ってくれた人が30名、そのうち「値段がやや高くても行かせたい」と言ってくれる人が4名、「値段がリーズナブルであれば行かせたい」と言ってくれる人が21名、「安ければ検討する」と言ってくれる人が5名であった。

4、客単価の相場観について

A塾の入会金は3万円、月謝はリアル教室のみで5万円、別途教材費が月額8千円、オンライン補講サービスを追加3万円(年間)で提供している。
B塾の入会金は1万5千円、年間料金制のみで生徒1人45万円(教材費込)となっており、オンラインサービスは実施していない(途中で入塾する場合には、一定のテストを経て、月割り計算の料金を支払うシステム)。

また、A塾はオプションとして時間指定の付添い送迎サービスを提供しており、1回1千円程度で約半数が利用している。

上記の結果と各種の資料を参考にすると「学習支援サービスに対する確かなニーズは存在する。だが、地域特性もあり、価格に対してはやや厳しい見方をする層が多いと同時に、有名私立中学校に対するこだわりはそれほど強くはないということがわかった。

また、ヒアリング結果では『学習する習慣を身に着ける』というコンセプトに対する評判がすこぶる高いことがわかった。

以上により、オンラインを最大限に活用して固定費を抑え、リーズナブルな価格を提示するとともに、子供たちが楽しみながら学び、結果として勉強の遅れをとりもどす/未然に防止する/やや成績が向上するという成果を明確に示すことが事業成長のカギとなる」と想定した。

上記の結果を踏まえ、見込み生徒数15名、月謝3万円を見込み客数と顧客単価として導きだしたなら、月謝分の見込み年間売上高予測は以下のようになる。

売上高予測 月謝分                         「見込み生徒数15名」X「見込み月謝3万円」X「12カ月」        =540万円

同様に、年間料金32万円、見込み生徒数5名だとしたら、年間料金分の見込み売上高予測は以下のようになる。

売上高予測 年間料金分
「見込み生徒数5名」X「見込み年間料金32万円」
=160万円

すると、合計金額は以下のようになる。

売上高予測 合計
月謝分+年間料金分
=700万円


・・・以上だ。これが『売上高予測』だ。

調査内容はご参考もかねてやや具体的に紹介したが、算式そのものはとってもシンプル。数値の流れについても「まあ、そんな感じなのかな」と見て取って頂けると思う。

もちろん、数字の例は何度だって組み立てなおせる。極端な話、実際に事業を始めてからだって、価格設定などの修正はできる。

大切なのは、学習塾という自身のビジネスについて、きちんと靴底を減らして調査を行い、しっかりと数字で裏付けること。商圏調査やヒアリングなどによって試行錯誤し、数字のシミュレーションを繰り返し、自分の納得できる形でその数字について語れるまで調査することなんだ。

・・・

今回は、収支計画で特に大切な売上高予測について、具体的な事例に基づいてお話をした。

必要とリクエストに応じて、また異業種での数値例を紹介したり、売上原価や費用項目を踏まえた利益計算の例を紹介したいと思っている。

みんなの起業、応援しているぜ。


起業ライダーマモル・アドバンス
収支計画を立てよう
3日目:「実践!売上高予測を立ててみよう」おわり~