起業家が再チャレンジしやすい環境をつくるには?
フェイルセーフ
もし皆さんが、飛行機や自動車のように安全性が求められる物の設計を任されたら、どんな考え方で設計しますか?
おそらく「絶対に故障しないような設計にする」と答える方が多いのではないでしょうか。
しかし実際に身の回りにある機械や乗り物、インフラなどは少し違う考え方で設計されています。
それは「故障しても事故にはならないように設計する」というもので、この考え方は「フェイルセーフ(Fail Safe)」と呼ばれています。
例えば、飛行機は1つのエンジンが故障しても残りのエンジンで飛び続けられるように作られていますね。踏切は故障しても遮断機が自重で降りてくるようにできています。
この「失敗しても大丈夫なようにする」という発想はビジネスの考え方にも通じるものがあります。
例えば、成功する起業家に共通する考え方を体系化した「エフェクチュエーション」の中に「許容可能な損失」というものがあります。
いかに起業家が「失敗から学ぶ」というマインドを持っているからといって、再起不能なほどの失敗をしては元も子もありません。だから、失敗してもOKな範囲でトライ&エラーを重ねることが重要なんですね。
失敗への「心の準備」
起業には勇気が必要です。「もし失敗したら・・・」などと考えてしまうと、二の足を踏むのも無理はありません。
もちろん先ほどのフェイルセーフのように、失敗しても大事故にならないように緻密に計算しながら起業すれば大丈夫かもしれませんが、こればっかりは「やってみないとわからない」という側面もあります。
事業が軌道に乗るまでに、どのくらい資金や期間が必要で、最初にどのくらい損失が出るのか。やる前からわかっていたら苦労しません。
特に急成長をめざすスタートアップは、「Jカーブ」といって最初に大きな赤字を“掘る”ところから始まります。この深さも長さも、当然わかりません。
ただ、ひとつだけ確実に備えられることがあります。
それは「心の準備」です。
もし「失敗しても再チャレンジできる。そのためには、こうすればいい」という心の準備があれば、起業にも挑戦しやすくなるのではないでしょうか。
再チャレンジ起業家ガイドブック
実は、そんな心の準備に役立つガイドブックがあります。経済産業省・近畿経済産業局が2021年に発行した「再チャレンジ起業家ガイドブック」です。
これは実際に起業に失敗して、廃業や破産を経験した人の声を集めたガイドブックで、その起業家を支えた金融機関や専門家の声も載っています。
このガイドブックを作成した背景について、近畿経済産業局のホームページには次のような記載があります。
このような状況に対し、失敗した起業家が再チャレンジしやすい環境を整える目的で、このガイドブックは作成されました。
そして、ガイドブックは大きく4つのパートで構成されています。
実際に当事者の声を集めただけあって、リアルな心境や苦悩が伝わってきます。同時に、再チャレンジに向けて動いている起業家の前向きな姿勢も感じ取ることができます。
また、出資機関や専門家の声からは「どんな起業家なら、一度失敗しても再び支援したいと思うか」が具体的にわかります。
資金繰りや破産の手続きなど、かなり具体的なこともたくさん書いてあるのですが、それらは生々しいので・・・
ここではマインドセットや人間関係について印象に残った言葉をいくつか紹介します。
どんな状況でも、仕事でつながった人には誠意を持って向き合い、良好な関係を保っていれば再び挑戦できる。そんなメッセージが伝わってきます。
他にも人事での失敗談や金融機関との上手な付き合い方など、参考になる言葉がたくさん載っていますので、興味のある方はぜひ読んでみてください。