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黄黒真直
2021年8月7日 23:54
天気予報に得点制が導入された。予報の精度を上げるため、国民が正誤を投票することにしたのだ。しかし実際には精度は上がらず、代わりに彼らは曖昧な予報ばかりするようになった。ついには「明日は明日の風が吹く」などと言い出したが、この予報すら外れた。翌日は、今日と全く同じ天気だったのだ。
2021年8月7日 22:20
「なんで様式変えたんだ?」部長がまた、俺の出した書類を突き返した。「見づらいだけだろこんなの。いつもの様式で書き直せ」「はい、すみません」お前が変えろと指示したんだろ、とは言わなかった。誰もこの人に文句なんて言わないからだ。部署全体に、そういう空気が出来上がっている。俺は部長ではなく、その空気に従っていた。疲れた足取りで席に戻る。隣の同僚が「大変そうだな」という目で俺を見た。
2021年8月1日 14:55
楽しみにしていたのに。 冷蔵庫の扉を開けた私は、そのまま硬直していた。入れてあったはずの私のケーキが、何者かに食べられ、なくなっていた。 いったい誰が食べたのか。そんなもの、妹に決まっている。うちの家族で、一度に二個も食べるような食欲があるのは、私を除けば妹しかいない。 いやいや、いかんいかん。私は頭を振った。 私はパズルとミステリを愛する文学少女だ。そんな状況証拠だけで妹を犯人
2021年8月1日 14:30
「S博士、お呼びでしょうか」「おお、待っていたぞ、C君。実は、例の平成の頃に書かれた古文書が、ついに解読できたのだ」「えっ、本当ですか!」「この古文書は、ほとんど同じ内容のものが全国でいくつも見つかっている。これの解読は千年前の人達の生活を知るのにきっと役に立つ……と思ったのだが」「だが?」「解読できたのに、結局何が書いてあるのか、さっぱりわからんのだ」「どういうことですか