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黄黒真直
2021年8月28日 21:42
カーマインは幼い頃から、星を見るのが好きだった。 色とりどりの星々の瞬きを見ているだけで、何時間でも過ごすことができた。 空を巡る双子の衛星の追いかけっこは、朝まで眺めることができた。 やがて成長し、科学の本を読み漁る年齢になると、カーマインは思った。 いつかあそこへ行ってみたい、と。 気が付くとカーマインは、それより遥か先へ行く日々を送っていた。*** 壮年と呼ばれる年齢
2021年8月2日 21:49
何気ない日常が壊れるのは、いつだって突然だ。それは良い場合もあるし、悪い場合もある。ぼくの日常は、あのラビー君が転校してきたことで、大きく変わったんだ。 よく晴れた初夏の朝だった。クラス担任のクジャク先生が、新しいクラスメイトを連れてきた。「さ、自己紹介をお願い」 先生にうながされると、彼はぼく達と同い年とは思えない大人びた声で自己紹介した。「初めまして、帝都から来たウサギのラビーです
2021年8月1日 14:55
楽しみにしていたのに。 冷蔵庫の扉を開けた私は、そのまま硬直していた。入れてあったはずの私のケーキが、何者かに食べられ、なくなっていた。 いったい誰が食べたのか。そんなもの、妹に決まっている。うちの家族で、一度に二個も食べるような食欲があるのは、私を除けば妹しかいない。 いやいや、いかんいかん。私は頭を振った。 私はパズルとミステリを愛する文学少女だ。そんな状況証拠だけで妹を犯人