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「わたしを離さないで」を読んで「ノルウェイの森」を思い出したり


先週、図書館で借りた本の一冊

「わたしを離さないで」カズオ・イシグロ著

読了しました。


読んでいて思い出したのは、
「ノルウェイの森」村上春樹著
でした。

最初は、「作中に出てくる音楽が小説のタイトルになっているんだな、ノルウェイの森もそうだったな」、と。

※正確には、「わたしを離さないで」は作中の曲「夜に聴く歌(Never Let Me Go)」の中の歌詞、「ノルウェイの森」は作中に流れる曲のタイトルがそのまま使用されている という違いがある はず


↓「Never Let Me Go」



だけど、どんどん読み進めていくうちに、「それだけじゃないぞ、なんか、ずっと似てる感じがするぞ」、と。


舞台設定も世界線も全然違う。というか共通しているところがないとまで言っていいと思う。

だけど、
作中の世界に流れる「色調」みたいなものが、そこにある匂いが、似ている気がするのだ。

どちらも、なんとなくずっとグレースケールな世界にみえた。「表立っては出てこないけど一貫して流れている『悲壮感』」の度合が似ている気がした。

ハッキリとした救いはない。そんな運命を自らで納得させる必要があり、大切なものを失っても、それでも生きていく。みたいな。


まあ自分は読書量が多い方ではないので、もっと似ている作品は山ほどあるのだろうとは思う。自分の経験値で綴っているだけです。。



ところで
「わたしを離さないで」の舞台設定は、「約束のネバーランド」(原作:白井カイウ、作画:出水ぽすか)を想起させた。
なんだろう、主人公らが「自らの意思ではない外部の目的によって育てられている」「搾取される側」「最終的に死ぬ運命にあることが決まっている」みたいな設定が、似ている。その後の展開は違うけど。


あと、「わたしを離さないで」ですごく印象的だった部分がここ。第三部、最終場面のエミリ先生の言葉。

(前略)「臓器提供用の生徒たち、つまり、あなた方を作り出すことはしかたがない。でも、普通の人間より明らかにすぐれた能力を持つ子供たちが生まれたら、この社会は、いずれそういう子供たちの世代に乗っ取られる。それは困る。それは怖い。ね?世間はその可能性の前に後込みしました」

「わたしを離さないで」p.403


これ今の時代のAIへの考えと一緒なんじゃ?
AIは便利、でも乗っ取られるのは困るし怖い。って世間はあけすけには言わないけど、共通して皆が抱いている漠然とした不安ではなかろうか?


また、柴田元幸氏による解説の一節を以下に引用する。

(前略)持ち前の緻密な書きぶりを駆使して強引かつ精緻に最後まで書き切ったかのような迫力がある。

「わたしを離さないで」解説p.443

お〜〜本当にその通りです。と思ってしまった。
緻密に描かれている「よくありそうな人間関係」の隙間から、奇妙な世界の雰囲気が少しずつ顔を覗かせてくる。それは迫力という言葉で形容できるリアルさがある。


様々な角度から考えさせられる作品でした。

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