「わたしを離さないで」を読んで「ノルウェイの森」を思い出したり
先週、図書館で借りた本の一冊
「わたしを離さないで」カズオ・イシグロ著
読了しました。
読んでいて思い出したのは、
「ノルウェイの森」村上春樹著
でした。
最初は、「作中に出てくる音楽が小説のタイトルになっているんだな、ノルウェイの森もそうだったな」、と。
※正確には、「わたしを離さないで」は作中の曲「夜に聴く歌(Never Let Me Go)」の中の歌詞、「ノルウェイの森」は作中に流れる曲のタイトルがそのまま使用されている という違いがある はず
↓「Never Let Me Go」
だけど、どんどん読み進めていくうちに、「それだけじゃないぞ、なんか、ずっと似てる感じがするぞ」、と。
舞台設定も世界線も全然違う。というか共通しているところがないとまで言っていいと思う。
だけど、
作中の世界に流れる「色調」みたいなものが、そこにある匂いが、似ている気がするのだ。
どちらも、なんとなくずっとグレースケールな世界にみえた。「表立っては出てこないけど一貫して流れている『悲壮感』」の度合が似ている気がした。
ハッキリとした救いはない。そんな運命を自らで納得させる必要があり、大切なものを失っても、それでも生きていく。みたいな。
まあ自分は読書量が多い方ではないので、もっと似ている作品は山ほどあるのだろうとは思う。自分の経験値で綴っているだけです。。
ところで
「わたしを離さないで」の舞台設定は、「約束のネバーランド」(原作:白井カイウ、作画:出水ぽすか)を想起させた。
なんだろう、主人公らが「自らの意思ではない外部の目的によって育てられている」「搾取される側」「最終的に死ぬ運命にあることが決まっている」みたいな設定が、似ている。その後の展開は違うけど。
あと、「わたしを離さないで」ですごく印象的だった部分がここ。第三部、最終場面のエミリ先生の言葉。
これ今の時代のAIへの考えと一緒なんじゃ?
AIは便利、でも乗っ取られるのは困るし怖い。って世間はあけすけには言わないけど、共通して皆が抱いている漠然とした不安ではなかろうか?
また、柴田元幸氏による解説の一節を以下に引用する。
お〜〜本当にその通りです。と思ってしまった。
緻密に描かれている「よくありそうな人間関係」の隙間から、奇妙な世界の雰囲気が少しずつ顔を覗かせてくる。それは迫力という言葉で形容できるリアルさがある。
様々な角度から考えさせられる作品でした。