財布にATMで使えない5000円札が入ってた話
正月早々、財布の中に偽札と思われる5000円札が入っていた話
それに気づいたのは
近所のスーパーのATMで電子マネーにチャージしようとした時だ。
入金できず何度も吐き出される。
自分だけに分かるようにエラーのメッセージが表示されるだけならいいのだが、
スーパー店内の周りの人に聞こえる音声でアナウンスされた。
「紙幣以外のものを、いれないでください」と繰り返された。
困った困った困ったぞ、どうする、どうする、どうする、と思った。
世間の目が世間の目が俺を見ている、あの芸人ではないけど、ヤバい、ヤバい、ヤバいぞ。そう思った。
犯罪者だと思われてるぞ。と、思った。
あの男が偽札を使おうとしていると思われているぞ、と、思った。
早く逃げないと警備員がおおぜいやって来て、「お前か偽札を使おうとしてるやつは」、と言い両腕をつかまれて、
店員だけが出入りする扉の裏のどこかに連れていかれるに違いないと思い、俺は焦った。
キョロキョロ見まわそうものなら、余計に怪しまれると思いそれは控えた。
いい大人なのに子供のように心が動揺している。
とにかくこの場を立ち去ろうと思い、平然を装い店を出た。
別の店に行って使ってみようと思った。
その店で、現金払いにして支払おうと5000円札を投入すると、二回とも紙幣が吐き戻された。
アナウンスで注意を促すのではなく、ピーピーという音で知らせるものだったので、
素知らぬ顔して、小銭を投入して支払いその場を収めた。
俺は「困ったぞ、この5000円札どうすればいいのだ」と、心の中でそう思った。
部屋に戻って考えることにした。
部屋の電灯の明るい場所で、何が問題なのか紙幣をジロジロと精査した。
よく見ると、旧紙幣の透かしの部分に、油じみのようなものがあった。
その油じみはちょうど左手の親指の形をしていた。自分の指を重ねて見るとしっくり来た。
これか!機械が読み取れない原因は、そう思った。
機械では読み取れないが、人間が見れば偽札ではない、と判断できるものだった。
しかし これをどうしようかと俺は悩んだ。
紙幣を交換するのは、最寄りの銀行でいいのかと思ってネットで検索すると、そうではなく日本銀行でしか交換してもらえないようだと分かった。
日本銀行なんて、行った事がない、ネットで調べて見ると東京でも数が少ないことが分かった。
最寄りの日本銀行は新宿だ、そこまで電車代を払ってこの5000円のためにわざわざ行くのか?と思った。
地元の普通の銀行で、何とか交換してもらえないのだろうか?と思った。
少し悪いことを考えた、近所の八百屋かなんかで、しれーっと、使ってしまえばいいのではないかと思った。
そもそも、偽札ではないのだから問題は何もないのだ。もちろん犯罪者でもない。
俺は、ふと、この5000円札が、どこから来たのかを記憶を辿ってみた。
昨日の深夜2時頃にコンビニに行った。
その時、電子マネーにチャージするのに、1万円を機械に入れて5000円をチャージしたのだ。
そのお釣りが、この5000円札だ!思い出したぞ、と、そう思った。
その時 お釣りがなかなか出てこなかった
外国人の名前の店員が、こちらから見えないスイッチかなんかを押して、
お札を無理無理出したように感じた。
あの店員、あの男が怪しい、本当に偽札だったら、その店員を怪しんだことだろうが、
破損紙幣とわかったので、まともに使えない5000円をどうしようか悩んだ。
そこで俺は思った、あのコンビニの機械から出てきたくらいだから入るんじゃないか?ってね。
早速 そのコンビニに持って行き、支払いで使ってみた。
機械に通り使えた。見事に出てきた所に戻すことに成功した。
元の鞘に収めたという言いかたでいいかは分からないが、
無事に解決に至った。
正月早々、ドキドキした出来事だった。
令和の時代、もう現金はあまり使うことはなくなったが、
電子マネーにチャージする時だけは使っている。
考えてみれば、あの紙幣は労働して手に入れたお金そのものだった。
人間の左手の親指の形をした油じみは、それを物語っていた。
word かっつぇ・imaging factory