木を切るよりも、斧を研げてますか?
最近、会社全体で感じている課題を端的に表現すると「木こりのジレンマ」です。
例えば、ある日ミーティング中に、ふと「なぜこんなにも皆が疲弊しているのか」と思ったことがありました。そのミーティングは、部署間の連携を目的としていたものの、論点が曖昧なまま進行し、誰も明確な結論を出せないまま時間だけが過ぎていきました。参加者たちの表情には疲労感が滲み、議論が深まるどころか逆にストレスを溜めているように見えたのです。どの部署も目の前の業務に忙殺される中で、全体の方向性や成長戦略が置き去りにされているのではないかと強く感じました。エンジニアリングだけでなく、営業やマーケティングといった他部署も同様に、この状況に陥っているのではないかという懸念を持っています。
「木こりのジレンマ」とは
効率的に木を切るために斧を研ぐべきなのに、木を切ることに追われすぎて斧を研ぐ時間が取れない状況
を指します。
この現象は、部門ごとに異なる形で表れるため、問題の本質を見逃しやすいという特徴があります。
---
気づくきっかけ
ある日、プロジェクトの途中で「なんでこんなに各部署いっぱいいっぱいなんだろう」と自問しました。
振り返ると、コロナ以前からの手法で売上は堅実に伸び、各部署の最適化も進んでいました。特に、人員が減る中で売上を上げるという大業を成し遂げたのは事実です。しかし、それ以上の飛躍的な成長にはつながらず、現状のやり方に限界を感じ始めているのが現在。
しかし、そこから成長を飛躍的に成長させられているのか?..否。それはなぜか...
原因は、過去から現在までの延長線上での効率化に留まっていることではないかと考えています。
言い換えるなら、
必要なのは会社としての抜本的な業務改革ではないか..
と考えるようになりました。
さらに気づいたのは、各部署やチームでの最適化は確かに進んでいるものの、会社全体としての連携が十分ではないということです。いわば、部分最適は達成しているが、全体最適ができていない状況でした。
この課題を解決するためには、今のやり方や在り方を見直し、全てを抜本的に変えていく必要があると強く感じた瞬間でした。
---
なぜ気づけないのか?
1つ目の理由は、各部署が自分たちの「木を切る作業」に集中しすぎていることです。
例えるなら、エンジニアリング部門では、新機能のリリースに追われて既存システムのパフォーマンス改善が後回しになり、営業部門では目の前のクライアント対応に忙殺されて新規提案の準備が滞る、といった状況です。
日々の成果を出すことに追われ、全体像を振り返る余裕がなくなり、他部署との連携や業務全体を俯瞰するための適切な対策が後回しになりがちです。
ありがちな例として..部署間連携を図る目的だとしても、結果的に、非効率なミーティングが横行していることも問題です。論点が定まらないまま長引くミーティングや、参加者が多いのに決定事項が曖昧なまま終わるミーティング——雑談に終始していたり..と。
私自身も何度か「これ、本当に必要だったのかな?」と思うミーティングを経験したことがあります。いわゆる形骸化ですね。
2つ目は、短期的な成果が優先されやすい風潮です。特にベンチャー企業では、即効性のある結果を求められることが多く、どうしても長期的な改善に取り組む余裕が後回しになりがちです。
また、問題が断片化して見えるために、全体像を把握するのが難しいことも一因です。各部署が「自分たちは問題なく動いている」と思っていても、全社的には効率が悪くなっている可能性があります。つまり、「全体」をみる必要があるのです。
---
打破するにはどうする?
会社全体の木こりのジレンマを打破するためには、以下のようなアプローチが考えられます。
1. 横断的なコミュニケーションを強化する
他部署と連携しやすい環境を作ることが鍵です。
例:プロジェクトごとの横断チームを作る
具体的な課題解決に向けて、部署を超えたメンバーで協力する。この際、チームを正しく導くリーダーが必要です。全体を見通し、議論をまとめ、行動に繋げる存在が成果を大きく左右します。
2. 長期的な目標を設定し評価する
短期的な成果だけでなく、長期的な視点を持つことで本質的な改善が可能になります。
- KPIに改善活動を組み込む:営業なら「新しい提案資料の完成数」、企画運営なら「イベント改善施策の実施数」など、改善が見える形で評価する。
- 改善の成果を見える化する:例えば「この改善で○○時間の削減につながった」といった具体例を示す。
また、リーダーの存在も重要です。長期的な視点を持ちつつ、現場の努力を適切に評価し、モチベーションを維持する仕組みを作ることが求められます。
3. 斧を研ぐ文化を育てる
最終的には、改善に向き合う時間を継続的に確保することが重要です。
つまり、継続的に斧を研ぐということ。
- 成功事例を社内で共有する:たとえば「新しいイベントテンプレートを導入したら参加率が上がった」といった具体例を全社でシェアする。
- 必要なスキルを育てるためのワークショップを開催する:全社員が効率化や改善に必要な知識を身につける場を提供する。
---
まとめ
木こりのジレンマは、日々の業務に追われる中で誰もが陥りがちな状況です。それが会社全体に広がると、効率が下がり、結果的に大きな成果を失うことになりかねません。
特にベンチャー企業では、目の前の成果と未来への投資のバランスを取ることが非常に重要です。評価軸を明確にし、改善活動が会社全体の成長につながることを実感できる仕組みを作る必要があります。
一方で、「斧を研ぐ時間を作る」というのは簡単ではありません。でも、小さな一歩を踏み出すことで未来が大きく変わります。
このために、リーダーの存在は非常に重要です。いや、今では、リーダーシップなのかもしれません。昨今では、各国では、マネージャー不要論も出てきています。中間管理職よりも、自律型人材、チームが求められてきている節もありますゆえ。
いずれにしても、自分の働き方やチームの状況を振り返り、まずは今日の5分から「斧を研ぐ時間」を確保してみることが、本質的な改善..いや、改革へとつながるのではないでしょうか..