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発達障害認定を受けていない子どもの関わり方が分かりません。

今回の事例は、2歳児(男児)が成長と共に集団生活が難しくなり、本児の日々の様子から担任とは別に保育士を配置しています。その本児の傍についている保育士(5年目)からの相談です。
【保育士編】事例8

◆最近の保育園では…

発達障害・グレーゾーンの子どもは年々増加傾向にあります。
発達障害というのは、「注意欠陥多動性障害」「自閉症スペクトラム障害」「学習障害」という3つの脳機能の障害に対する総称で、一つの障害を指す言葉ではありません。そして、3つのうちどの障害を持っているかによって、親や保育士の対応はまったく違ったものになります。

一方で、「グレーゾーン」の子どもとは、知的な遅れがないか、あってもごく軽度のもので、社会的、対人的、学力的、そして行動の適応に何らかのつまずきが見られる子どもを指します。家庭や集団生活の中では、先ほど挙げたような「ちょっと変わっている」特徴を示すことも多いものです。また、発達の遅れといってもパターンはさまざまで、全体的に遅れている子もいれば、例えば社会性など、特定の部分だけが遅れている子もいます。

そして、平成16年に公布された「発達障害者支援法」にて、児童の発達障がいの早期発見と支援が求められたことで、こうした特性をもつ子どもへ注目が集まっています。支援が必要なのか、それとも個性なのか、発達障がいの「グレーゾーン」なのか、我々保育士も学び対応について適切に行っていくことが求められています。

今回の事例は、これらの診断が出ていない、いわゆる「グレーゾーン」と言われる子どもへの関わり方について考えていきたいと思います。

◆保育士はどんな時に困っているのか

子どもへの関わりの中で日常的に見かける姿として、

・クラス活動中に他の子と一緒に活動しようと誘ったら、嫌だと言って癇癪を起してしまう。
・朝の会や帰りの会の時、クラス内での活動に参加することを嫌がり、クラスから出て行こうとしたり、部屋の中をぐるぐる走り回っている。
・遊んでいる際に、自分のパーソナルスペースに他の子どもが入ってきたら叩いたり、蹴ったりしようとする。
・活動と活動の切り替えができず、いつまでもその場から離れようとしないもしくは、活動に集中しすぎてその場から離れようとしない等…。

◆グレーゾーンの可能性がある子どもとの関わり方

先の項目で子どもの行動を挙げましたが、これらの中にはグレーゾーンでなくても、普段の子どもの成長過程でも見られることもあります。
関わる側の保育士の力量にもよりますが、まずは、子どものペースを大切にすることは重要です。

クラス内では時間と共に次々と活動が展開されています。

『登園→自由遊び→朝の会→朝のおやつ→トイレ→活動→トイレ→給食→着替え→トイレ→お昼寝→トイレ→おやつ→帰りの会→自由遊び→降園』
(平均的な2歳児の生活:トイレの回数などは適宜)

この平均的なデイリープログラムに無理やり沿うことはありません。まずは、子どもの気持ちや子どもの行動観察をすることが重要です。子どもは今何がしたいのか、何が嫌なのか、何が伝えたいのか、どういう環境でいたいのか等を子どもと真摯に向き合い、サインをキャッチする力を養いましょう。

そして、グレーゾーンと呼ばれる子どもも他の子どもと同じで、出来たことについて大いに褒めてください。発達障害・グレーゾーンの子どもにも非認知能力である「自己肯定感」や「自尊心」「達成感」等を育むことは大切です。時間はかかりますが、子どもとのやり取り、コミュニケーションを根気よく取り、信頼関係も築いていきましょう。

◆何でもかんでもグレーゾーンにしない

保育士同士の申し送りやミーティングにおいて、よく見られる発言…。

「A君って、多動じゃない?めっちゃ動き回るし落ち着きなさすぎ、他の子と比べてグレーかも。」
「B君は、自由遊びの時に集中してるのは良いんだけど、他の子に邪魔されると手が出るし、止められなくなるくらい癇癪起こすからグレーかも。」
「C子ちゃんは、言葉が遅いし、こちらから話しかけてもぼーっとして意思疎通が図れないことが多いからグレーかも。」

子どもの様子によっては、グレーゾーンの可能性があるように感じたとしても、我々保育士は断定できる立場でありません。

むしろ、勝手にグレーゾーンと決めつけることは子どもたちに失礼です。

日々子どもの成長観察を行う中で、本当に子どもの発達に違和感を覚えたならば、まずは園長・主任の指示を仰ぎながら自治体等の心理士による巡回指導を利用しましょう。

巡回指導はあくまで巡回なので、診断が出るものではありません。しかし、「気になる子」として、気になる行動や態度に対する適切な対応の仕方等のアドバイスを受けることは可能です。
これらをもとに、一人ひとりの子どもにあった適切な対応や関わりができるよう園全体で体制を整えることが大切です。

◆まとめ

グレーゾーンは、「ゾーン」と呼ばれるようにはっきりとした区域や特徴と区別する意味がありますが、一方で、「グレー」という「白でもなく黒でもない」曖昧な範囲です。

子どもの個性と間違えられやすく、家庭環境や遺伝なども大きく関与していることからベテラン保育士でさえも関わり方について、常に自問自答しています。

経験が浅い職員でもすぐに実践できることは、
子どもが癇癪やパニック状態になったとしても、保育士は慌てない。子どもの感情に流されない。子どもの気持ちと行動に寄り添う。そして、保育士自身がグレーゾーンの子どもについて十分な知識を持つことも合わせて必要です。

様々な子どもがいますが、一人ひとりの育ちを大切に、保育で忙しくても保育士の皆さんが心穏やかに保てるよう、応援しています☆


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