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ラテンベース 入門その30「クラーベに左右されないTumbao〜Clave Neutral〜その1 USP Unanticipated-Single-Ponche」

ラテン音楽はクラーベに基づいてできています。
その中で言うとベースラインは主に2つに分類されます。
一つは″Clave Aligned″
クラーベの向き(2-3or3-2)に沿ったフレージングです。

もう一つが″Clave Neutral″
クラーベの向きに左右されないフレージングとなります。
ここではClave Neutralのトゥンバオについて書いていきます。

Clave Neutralでのトゥンバオ

ラテン音楽の中で圧倒的な多数を占めているベースラインは「Clave Neutral」です。
これらのトゥンバオはどちらの向きのクラーベにもフィットします。
Afro Cuban音楽とサルサにおいて、一般的なClave Neutralでのトゥンバオには4つのパターンがあります。
これらについてはKevin Mooreの著書「Beyond the Salsa」で体系化に記されています。

彼の本で使用されている命名法は非常に上手いもので、これを言い換えるは難しいです…。
したがって、このBlog記事で使用されている用語は「Beyond the Salsa」から引用しています。

4つのトゥンバオのフォームはアクセントの配置が異なるだけで非常によく似ています。
しかし、これらの微妙な変化がリズミカルな動きに大きな変化をもたらします。
これらにそれぞれ4つのバリエーションがあり、4パターン×4バリエーション=合計16のリズムの組み合わせができます。
ということで、4つのClave Neutralでのパターンを紹介します。

4つのトゥンバオのパターン

ここからClave Neutralのパターンを紹介していきます。
これらに冠している名称はラテン音楽で使われる音楽スタイル・ジャンルとして知られている名前です。
しかし、ここでは単純にトゥンバオのリズムパターンの名称として提示していますので誤解なきようにしてくださいませ!

Tresillo(トレシージョ)

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Tresillo(トレシージョ)は、最も一般的でよく知られているトゥンバオのバリエーションだと思います。
ほとんどの人が学ぶ最初の「ラテンベースのパターン」です。
このBlogでもこのパターンがラテンベースの大半だというように紹介しました。
Tesillo(トレシージョ)と同型のリズムは、アメリカのポップスやセカンドライン、Rumba-Flamenco、バルカン音楽、アラビア音楽、Afro-Brazilian、カントンブレ、およびアフリカ音楽の影響を受けた多数の音楽スタイルに同型のリズムが見られます。
言ってしまえば、あらゆる音楽で使われている汎用的なリズムの一つかもしれません。

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実際のコード上で演奏すると上記のようなトゥンバオになります。
下記の音源などでこのトゥンバオが聴けます。

Celia Cruz&Johnny Pacheco “Quimbara”2:05〜

Tito Puente”Abnitquito”

Marc Anthony “Aguanile” 0:47〜

El Gran Combo “Brujeria”
モントゥーノセクションまではこのTresilloのパターンです。

Elvis Presley “Hound Dog” アメリカ音楽でも同型のリズムがみられます。

Habanera(ハバネラ)

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Habanera(ハバネラ)のパターンは、前述のTresillo(トレシージョ)に非常に似たパターンです。
違う点は、2拍目の裏と3拍目のビートの間のタイがなくっている箇所です。
Habanera(ハバネラ)もTresillo(トレシージョ)と同様に、レゲエ、レゲトン、ソカ、バチャータなど他のアフリカ由来のスタイルに同型のリズムがあります。

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実際のコード上で演奏すると上記のようなトゥンバオになります。
下記の音源などでこのトゥンバオが聴けます。

Ernesto Lecuona “La Habanera” Rubato
ちょっとわかりにくいかもしれませんが

Ñico Cadenon “Chappottin”

Orquesta Aragon “El Bodeguero” from CubanOriginals

Roy Orbison “Oh,Pretty Woman”
1:21〜 アメリカの音楽でも同型のリズムがみられます。

Guaracha(ワラチャ)

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Guaracha(ワラチャ)はソン・モントゥーノによく似たキューバ音楽のスタイルから名付けてられています。
(音楽スタイルとしてのGuarach(ワラチャ)についてはこちらの記事でも紹介しています。)

このベースのリズムは、Son、Mambo、Cha Cha Chaなど多くのスタイルで同様のパターンが使用できます。
2拍目の音符は、コンガのスラップを模倣しています。
これによりベースラインに軽快な躍動感が与えられます。
これが、他のトゥンバオのパターンと異なるフレーバーとなる非常に効果的な要素です。

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実際のコード上で演奏すると上記のようなトゥンバオになります。
下記の音源などでこのトゥンバオが聴けます。

Orquesta Aragon “Rico Vacilon”

Fajardo y sus Estrellas “Fajardo esta de Bala”

Charlie Palmieri “El Pachadengue” 1:50〜

Grupo Niche “Cali Pachanguero”

Oscar D’León “La Mulata Coqueta” 2:57〜

Bolero(ボレロ)

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Bolero(ボレロ)も通常の音楽スタイルにちなんで命名されています。
(音楽スタイルとしてのBoleroについてはこちらの記事で紹介しています。)

しかし、ベースのパターンと同型のリズムは音楽スタイルとしてのBolero(ボレロ)に限定されて使用されるものではなく、
キューバ音楽の中でも特に古いチャランガのスタイルでは一般的に使われています。
更にこのリズムとそのバリエーションは、Songo(ソンゴ)、Timba(ティンバ)、そしてブラジル音楽のAfoxe(アフォシェ)などモダンな音楽スタイルで積極的に取り入れられています。

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実際のコード上で演奏すると上記のようなトゥンバオになります。
下記の音源などでこのトゥンバオが聴けます。

Orquesta Aragon “Cuatro Vidas” 2:30〜

Sexteto Nacional “Bururu Barara”

Machito y his Afro-Cubans “Nague” 2:40〜

Celia Cruz “Saoco”

The Beatles “I’m Looking Through You”

ということで、
Tresillo(トレシージョ)
Habanera(ハバネラ)
Guaracha(ワラチャ)
Bolero(ボレロ)

という4パターンのトゥンバオのリズム型をまず紹介しました。
これが基本形となりさらにそれぞれに4つのバリエーションがあり合計で16のパターンができあがります。

この基本形は
"Unanticipated-Single-Ponche"=USP
と称していきます。
Tresillo(USP)と記載していたらここで紹介している基本形のTresilloのパターンとなるわけです。
ということで、次回以降の記事でこのバリエーションについて紹介していきたいと思います。

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城戸英行
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