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【事業者向け】家賃支援給付金の申請のために知っておくべきこと【2020/9/4更新】

 新型コロナウイルスの影響で売上が減少した事業者(個人事業主・法人)を支援するため、地代・家賃の負担を軽減する給付金の支給が始まりました。
 これまでの定額給付金、持続化給付金、感染拡大防止協力金などと比較して給付金額が大きく、土地や建物を借りて事業を営む事業者を広く対象としている制度ですから、対象となる方は是非とも利用するべき制度です。
 他方で、申請の手続が少し複雑になっていて、必要書類がわからないとか、必要書類を揃えられないような場合もありますが、多くの方はポータルサイトからスムーズに手続ができますし、申請サポート会場で手続の補助を受けることもできます。

 この記事では、特に申請にハードルのある方を対象として、申請の注意点・解決方法についてまとめました。
 なお、給付要件は概要を簡潔にまとめたものですので、申請に際してはご自身が給付要件を満たしているかどうかを十分に確認してください。
 また、この制度は運用が始まったばかりで、担当者によれば今後対応を随時改善していくとのことですので、申請時点での最新情報を参照するようにしてください。

1 概要 

 今回の家賃支援給付金制度は、特に小規模な事業者にとって最大の固定費である賃料(土地を借りているときは「地代」、建物を借りているときは「家賃」ともいいます。この記事では「賃料」で統一します。)の負担を軽減することを目的としています。
 賃料を支払えなければ賃貸借契約を解除され、事業を継続することができなくなってしまうからです。
 以前の記事でオーナーに対して賃料減額をお願いする方法をまとめたところ、多くの方から「オーナーが賃料減額に応じてくれた!」とのご連絡を受けましたが、金額や期間は限定されていますし、賃料減額に応じてくれるオーナーばかりではないため、事業者の負担はまだまだ重く、死活問題となっています。
 そこで、新型コロナウイルスの影響で売上が減少した事業者を対象として、法人に最大600万円、個人事業者に最大300万円が迅速に一括支給される制度が始まりました。

2 対象になる事業者

(1)事業者の規模
 資本金10億円未満の中堅企業、中小法人、小規模事業者、フリーランスを含む個人事業者(医療法人、農業法人、NPO法人、社会福祉法人なども対象)

(2)売上が減少したこと
 2020年5月~12月の売上高について、
  ①1か月で前年同月比50%以上の減少
 または
  ②連続する3か月の合計で前年同期比30%以上の減少

(3)賃料を負担していること
 自らの事業のために占有する土地・建物の賃料を支払っていること

3 給付額

(1)算定方法
 申請時の直近1か月における支払賃料(月額)に基づき算定した給付額(月額)の6倍

(2)算定の基礎となる給付額(月額)
ア 法人
ⅰ 支払賃料(月額)75万円以下の場合
  支払賃料×3分の2
ⅱ 支払賃料(月額)75万円超の場合
  50万円+(支払賃料の75万円の超過分×3分の1)
  ※100万円が上限
イ 個人事業者
ⅰ 支払賃料(月額)37.5万円以下の場合
  支払賃料×3分の2
ⅱ 支払賃料(月額)37.5万円超の場合
  25万円+(支払賃料の37.5万円の超過分×3分の1)
  ※50万円が上限

(3)算定の基礎となる費用
ア 対象となるもの
 賃料(地代、家賃、使用料)、共益費、管理費
イ 対象とならないもの
 水道光熱費、減価償却費、保険料、修繕費、契約関連費用(更新料など)、敷金・保証金、看板設置料など

4 「賃貸借契約」ではないけど大丈夫?

(1)対象となる契約
ア 契約の種類
 賃貸借契約、または賃貸借契約以外の形式により、土地または建物を占有して使用収益する契約(自ら直接利用する契約)
イ 契約の期間など
①2020年3月31日の時点で契約が有効であること
②申請日時点で契約が有効であること
③申請日より直前3か月間の賃料の支払実績があること

(2)契約の名称にこだわらない
 土地または建物を自ら直接利用し、定期的に賃料を支払う契約であれば、契約の名称(契約書のタイトル)にはこだわりません。
 たとえば、フードコートなどの「テナント出店契約」、レンタルオフィスなどの「利用契約」も、対象となります。
 また、支払う費用の名目が「賃料」ではなく「利用料」「使用料」「会費」などであっても、実質的に賃料と同視できるものであれば、対象となります。
 逆に、契約書に「賃貸借契約」と記載されていても、物件を実際に直接利用しないバーチャルオフィス契約などは、対象とならない可能性があります。

(3)特別に必要とされる書類
 申請には契約書の提出が必要ですが、契約の名称が「賃貸借契約」でない場合には、必要に応じて、その契約が制度の対象となることを説明する書面の提出が求められます。
 業界団体によるガイドライン(その契約が制度対象となることを説明するガイドライン)があれば良いのですが、ガイドラインがない場合、申請者自身で、契約が制度の対象となることを説明しなければなりません。
 ただし、この説明は必要に応じてすれば良いものとされていますので、必要不可欠ということではないようです。

5 「契約書」が無いけど大丈夫?

(1)契約が存続していることが条件
 この制度は、直近3か月分の賃料を支払っていれば、給付額の6か月分を支給することになっています。
 不正受給を防止するために、契約が①2020年3月31日の時点と②申請日時点の両方で有効に存続していることを証明しなければなりません
 基本的には、2つの時点を含む契約期間が明記された契約書を提出することになります(「対象時点をカバーする」と表現します。)。
 提出する契約書の部数に制限はなく、上記2時点で契約が有効であることを証明すれば良いので、たとえば契約期間が
 「2019年4月1日から2022年3月31日までの3年間」
と記載された契約書であれば1部で足りますし、
 「2018年5月1日から2020年4月30日までの2年間」
と記載された契約書と、
 「2020年5月1日から2022年4月30日までの2年間」
と記載された契約書の2部を提出することでも構いません。

(2)自動更新と法定更新
 問題となるのは、対象時点をカバーした契約書がない場合です。
 大きく2つの場合が考えられます。
ア 自動更新
 契約書に「自動更新」に関する規定があり、契約書を新たに作成しなくても、契約が更新されたことになっている場合があります。
 自動更新とは、「契約期間満了の3か月前までに特段の申入れがないときは、本契約は自動的に同一条件で2年間更新されるものとする。以後も同様とする。」というような規定です。
イ 法定更新
 もうひとつは「法定更新」という制度です。
 自動更新は契約の規定があって初めて効力を生じますが、法定更新は法律の規定によって契約が更新されます。
 オーナーとの合意や承諾が仮に得られなくても契約が有効に存続することになるので、契約書の規定からは分かりません。
 法定更新の場合にも給付金の対象となると考えられますが、申請には特別の対応が必要となります。

(3)特別に必要とされる書類
 自動更新の場合には、管理会社等から「更新通知」や「更新覚書」といった書類が送られてきている可能性があります。これらの書類は、契約の存在を証明する書面ですから、まずは、この書類を揃えることができるかどうか検討しましょう。
 
 このような書類がない場合には(特に法定更新の場合)、オーナーの署名捺印入りの「賃貸借契約等証明書」を提出する必要があります。
 給付金申請のために必要であることを説明して、オーナーに発行してもらいましょう。
 もっとも、好意的なオーナーであれば申請に協力してくれることもあると思いますが、たとえば立退きを求められて揉めているような場合や、オーナーと連絡がつかない場合、めんどくさがられてしまうような場合には協力が得られず、この書類を提出することができません。
 家賃支援給付金コールセンターに確認したところ、そのような場合は管理会社や仲介業者に書類を作成してもらっても良いとの回答を得ましたが、管理会社や仲介業者がオーナーの意向に反してまで申請に協力してくれることは考えにくいです。
【2020/9/4更新】
 ガイドラインが修正され、管理会社や仲介業者の作成では足りないことになったようです。

 では、どうすれば良いかというと、少なくとも本記事作成時点において、ガイドライン上は残念ながら申請手段が無いことになっています。
 しかし、家賃支援給付金制度の趣旨に照らせば、法定更新で書類が揃わない場合であっても、給付は受けられるものと思われます。
 制度の不備を指摘する声もあり、今後、運用が改善されることが期待されます。
 
 また、行政側としても、不正受給を防止する必要があるために各書類の提出を求めているに過ぎませんから、不正受給でないことを説明すれば、広く給付の対象とする姿勢のようです。
 制度の運用改善を待っていられないという事情もあると思いますので、コールセンターや弁護士に相談するなど、積極的な対応で給付を受けられるように試みましょう。

6 弁護士等に相談しましょう

 家賃支援給付金制度に関しては、制度開始前後から多数お問い合わせがありました。その多くは「制度の対象となるのか」とか「申請書類が揃わないがどうすれば良いか」といったものです。
 現時点で、ご相談のあった契約のほぼすべてが制度の対象となり、申請書類も問題なく揃えられています。
 必要書類が揃わず申請が困難と思われる場合でも、弁護士が「意見書」を作成して、使用の実態を示す写真などと合わせて提出すれば、通常より審査に時間が掛かったとしても給付が受けられるものと思われます。
 法人は上限600万円、個人事業者は上限300万円の多額の給付(貸付ではなく支給)が受けられる制度ですから、給付要件に該当するならば、できる限り給付を受けられるよう手を尽くすことをお勧めします。
 申請のハードルとなるのは契約内容に関する説明ですので、税理士ではなく弁護士への相談が適していると思われます。
 通常、弁護士への法律相談には相談料や手数料が掛かりますが、成功報酬としてもらえないか、相談してみましょう。

7 東京都の上乗せ給付金も合わせて申請

 東京都が、国の家賃支援給付決定が出たことなどを条件としてさらに家賃の上乗せ給付をする制度を8月中旬から開始します。
 概要はこれから発表されますが、東京都の事業者は必ず合わせて申請するべきです。

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