第85回 マンション防災を考えよう
マンション防災計画の考え方1 項目分類
皆様こんにちは。マンション防災研究所の城戸です。
このマンション防災を考えようのシリーズでは、マンションという集合住宅では戸建てとは違ったさまざまな設備や管理運営の仕組みがあることから、一般的な地域防災とは別の考え方が必要になる内容も多いため、「マンション防災」としての考え方をいろいろと考えています。
今回から、マンション防災を計画する際の考え方を何回かに分けて考えていきます。
マンションの防災組織や各個人(各住戸)で防災活動や準備を考えるときに、どこから手を付ければ良いか、何をどう考えていけばよいのかを知らない、わからないという方は、この考え方を基にしてできるところから考え始めていただきたいと思います。
では、その第1回目として今回は【項目分類】です。
これはマンション防災を考える際に準備するべき要素を整理して、それぞれで必要なことを考えるというものです。防災関係に詳しい方は「ハード・ソフト・ハート」という言葉で知っている方もいらっしゃると思います。
ハード・ソフト・ハートとはそれぞれ、「設備・資機材」「体制・運用」「意識・合意」を言いやすくしたものです。(諸説ありますが、私の理解ではこのような分類です。)
まず、ハード「設備・資機材」です。これはもちろんマンションそのもの、建物やその中にある施設・設備や、備蓄資機材などに含まれる機械類、用具道具など、ハードウェアと言われるものです。
建物の耐震性能や非常階段などの構造的な要素、消火栓・スプリンクラーなど消防設備、機械式駐車場、エレベータなどの設備、駐輪場などのスペース、会議室などについて、災害が発生した際にどうなってしまう可能性があるのか、その可能性(課題)に対してどのような対策をすることが必要か、可能か、などを事前に考えておくことです。
例えば、エレベータは地震発生時にはどのような安全機能になっているのか、それにより万一閉じ込め事故が発生した場合はどう対処するのか、平時に訓練が必要か、訓練の実施は可能か、保守点検や災害時の連絡先はどこか、対応可能か、など設備の一つ一つを確認していきます。
(実際にはすべての設備に対して調査確認を行っていくのは大きな手間なので、リスクの可能性を想像し、できる範囲での対応を考えてく程度から始めます。)
次に、ソフト「体制・運用」です。これはマンションの防災組織の組成、防災マニュアル等の整備、災害対策本部の計画と運用方法の確立、平時の活動方針の策定などがあります。実際には管理組合理事会とは別に管理組合内委員会として防災委員会を設置することや防災会を立ち上げること、もしくは自治会での活動として位置づけ、計画を作っていくことになります。
内容としては、防災マニュアル(行動計画)の策定、災害対策本部の構成や役割の計画などを策定し、合意を得て告知するなどの活動をしていくことになります。災害発生以前の活動も多くありますが、その計画の中での災害対策本部は、実際の災害時を想定した防災活動のメインとなるものですので、重要な内容です。
3つ目はハート「意識・合意」です。災害発生前に居住者の防災・災対対策への意識の維持向上を図ることや、災害発生時の合意形成の方法、範囲なども決定しておく必要があります。災害発生時には居住者がマンション内に居ない場合も考えられ、そのような場合の意識統一、想定外の事態への対応について合意形成が必要な場合もありますので、そのようなリスクの想定もしておくことが重要です。また特にこの意識・合意は2つ目の体制・運用の計画とともに事前の活動が中心となりますので、2つを併せて防災活動を考えていく必要もあります。
このように活動、計画に必要な要素を分類して分けて考えると、それぞれの中身同士は近い考え方になるので、計画を立てやすくもなります。
今日はここまでです。次回は防災の計画を考える際に、この要素のそれぞれをタイムライン、フェーズで切って整理していくためのフェーズ分けについて考えます。
マンション防災研究所 所長
防災士 福祉住環境コーディネーター
城戸 学
マンションに限らず防災関連のセミナーや講演、コンサルティングなどのご依頼をお待ちしております。よろしくお願い申し上げます。