第48回 マンション防災を考えよう
マンション防災と第三者管理
皆様こんにちは。マンション防災研究所の城戸です。
このマンション防災を考えようのシリーズでは、マンションという共同住宅では戸建てとは違ったさまざまな設備や管理運営の仕組みがあることから、一般的な地域防災とは別の考え方が必要になる内容も多いため、「マンション防災」としての考え方をいろいろと考えています。
今日は、この数カ月で一気にマンション業界で話題になり始めたマンションの管理方法、「第三者管理方式」についてと、その管理方式での防災について考えてみましょう。
この数カ月で、日本経済新聞をはじめマンション業界の専門紙などでも話題が増え、大手マンションデベロッパー、管理会社が今後の物件では中心的に導入をしていくという「第三者管理方式」ですが、別の言い方では「管理者管理方式」とも言います。
区分所有法ではマンションの管理運営を行う「管理者」を置くことになっていますが、この管理者を通常のマンションは区分所有者の集合体である管理組合の中から選任することになっています。そのため、数人~十数人の理事を選出し、その中から理事長を選出して管理者としています。
この「管理者」を外部の人に管理者になってもらい、管理運営の実行を委託する方式が「第三者管理」もしくは「管理者管理」と言います。
このような方式が採用されるようになってきた背景には、大きく2つの社会的環境が影響しています。
一つは、マンション居住者の高齢化です。
特に既存のマンションで多いケースですが、居住者(区分所有者)の高齢化が進み、マンション内で理事を務めることができないようになってしまった方が増え、理事会が維持できないという事態になったマンションが多くなってきたことにより、外部の方に依頼しなければならなくなったのです。もちろん区分所有者の中には理事を務められる時間も能力も体力もある(若干若い)方はいらっしゃいますが、単年であれば可能でも、継続的に長年するわけにもいかず、結果的に区分所有者の総意として外部に委託することになります。
もう一つは、共働き世帯の増加です。これは新築マンションでのケースが多いのですが、現在、マンションの販売価格は、円安の影響もあり、材料費、工事人件費のさらなる高騰により非常に高額になっています。マンションの平均的な購入年齢層は30代~40代前半程度なのですが、その世代の年収では購入できない事態になっています。生活費も値上がりなどで圧迫されていることから、多くの生態が共働きにより世帯年収を上げている(確保している)状態です。そのような環境下でマンションを購入した場合、マンション管理の為に土日に理事会に出席し、修繕の計画を立て、実行するなどの活動はとても手間がかかり、敬遠されるのです。平たく言えば、「そんなことやっている暇がない」となるのです。
そこで、新築の販売時より「管理運営は外部のプロにお任せするので、手間がかかりません」ということが魅力的になってきたということです。
このような背景を基に、もう理事会も無くしてしまい、委託された管理者が区分所有者からの希望やその他の意見を聞き、「いい感じに」管理をしていくという形式が採用されるようになってきたのです。もちろん管理組合は存在しますし、年1回の定期総会も実施されますが、普段はほとんど管理組合活動に時間を取られないようになります。
長くなりますので、今回はここまでです。
次回は、この第三者管理方式のメリットとデメリットを挙げ、その中で防災の視点で考えたときの問題点と解決策を考えていこうと思います。
今回もお読みいただきありがとうございました。また次回以降もご覧いただければ幸いです。よろしくお願いいたします。
マンション防災研究所 所長 城戸 学
マンションに限らず防災関連のセミナーや講演、コンサルティングのご依頼をおまちしております。よろしくお願い申し上げます。