第80回 マンション防災を考えよう
マンションの外部管理者方式について
皆様こんにちは。マンション防災研究所の城戸です。
このマンション防災を考えようのシリーズでは、マンションという集合住宅では戸建てとは違ったさまざまな設備や管理運営の仕組みがあることから、一般的な地域防災とは別の考え方が必要になる内容も多いため、「マンション防災」としての考え方をいろいろと考えています。
今回は、以前に考えたマンション管理の方式、この数年トレンドになってきている第三者管理(管理者管理)方式について、新しい動きが出てきているので、少し考えたいと思います。
現在、この方式は用語として外部管理者方式という名称に統一され始めています。また、国土交通省がこの6月には外部管理者方式を実施するにあたってのガイドラインを発表する予定となっています。
そのような状況の中、6月5日に三菱UFJ信託銀行がこの管理者管理方式の管理者を管理組合から受託する事業に参画すると発表しました。これは同行社員のアイデアから端を発して事業化されたものだそうです。
同行のリリースによると、管理組合役員のなり手が少なくなってきていることなどマンション業界の事情を把握し、外部に管理者を委託する場合の委託先として金融機関であることの信用、信頼度の高さを武器に、高い透明性を有する中立的な立場であると言っています。
これはマンションにとってどういうことでしょうか。
現在の外部管理者方式の中心はマンション管理会社で、管理組合から外部管理者を受託し、別契約で管理業務も受託する方法が主流となりそうな中、国土交通省ではその利益相反を防止するために外部法人の監査を受けることや管理組合員の中で監査を設置することなど、いくつかのアイデアが取りざたされていますが、まったく別業界からの参入発表は初めてです。
金融機関であることで、今後は管理者の受託だけでなく管理費会計などの処理についても受託する事業にも拡大していきたい意向は見てとれますが、それでは管理会社と同様の利益相反の可能性も否定できなくなります。
また一方、マンション管理業務(建物の維持、保守など会計以外)についてはノウハウがあるわけではなく、その部分は従来通り管理会社が請け負うとしても、それを管理、指導するなどのノウハウがなければ、単に管理者として存在するだけの立場で事業化できるのか、また管理組合員からの意見やその他管理組合としてのコミュニケーションに関するノウハウはどうか、などさまざまな点で今後の動向が注目されます。
その中で、このマンション防災を考えようシリーズとしては、前に考えたように、外部に管理者がいてしまうことでの災害時の主導者不在、組織的防災活動ができないという危機感などは払拭されるものではないと予測します。
いずれにしても、この発表、事業化が今後のマンション管理業界を大きく変えてしまう火種にもなる可能性があり、注目をしていきたいと思います。
今回はここまでです。次回は、先日も能登半島地震の余震がありましたが、地震をはじめとした災害の発生の可能性について考えてみたいと思います。またよろしくお願いいたします。
マンション防災研究所 所長
防災士 福祉住環境コーディネーター
城戸 学
マンションに限らず防災関連のセミナーや講演、コンサルティングなどのご依頼をお待ちしております。よろしくお願い申し上げます。