妙見山黒石寺~貞観の薬師如来~
黒石寺について
仏像を求めて岩手県奥州市にある黒石寺(こくせきじ)に向かった。黒石寺には多くの仏像が祀られているが、今回のお目当ては国指定重要文化財になっている薬師如来坐像である。
なお、黒石寺の仏像を拝観するためには、事前予約が必要となる。詳細は黒石寺さんのホームページ(下記URL)を参照いただきたい。
http://kokusekiji.sakura.ne.jp/wp/
黒石寺は天台宗の寺院で、山号は妙見山(みょうけんざん)という。天平元(729)年に行基による開基とされ、最初は東光山薬師寺と称したが、延暦年間の蝦夷征伐の戦火により焼失した。
大同2(807)年に飛騨の工匠が薬師堂を再建し、嘉祥2(849)年に天台座主慈覚大師円仁が復興し、妙見山黒石寺と改名した。
最盛期には伽藍48宇を誇ったが、度重なる火災により伽藍の一切が焼失し、明治17(1884)年に現在の本堂と庫裏が再建された。
黒石寺には、本尊である薬師如来坐像をはじめ、文化財に指定されている仏像が数多く伝わる。
また、旧正月7日夜半に行われる「黒石寺蘇民祭」は東北地方への蘇民信仰の伝播を伺わせる祭りで、国の無形文化財に指定されている(黒石寺蘇民祭は祭りを担う関係者の高齢化と今後の担い手不足により祭りを維持していくことが困難な状況となったため、令和6年2月の開催を最後に長い歴史に幕を下ろした。)。
黒石寺薬師如来坐像
黒石寺の駐車場に車を停め、階段を上って本堂に行く。駐車場前には公衆トイレや自動販売機等が整備されている。御朱印や拝観料などは釣り銭の無いように渡したい主義なので、自動販売機は個人的にすごくありがたい。
本堂の前では住職さんが待っていてくださった。
住職さんの案内で本堂脇の収蔵庫へ。扉を開けていただいた。
黒石寺薬師如来はかつては33年に一度しか拝むことが出来なかったという。
予約さえすれば拝観が叶う時代に生まれたことに感謝しながら収蔵庫に入る。
黒石寺の薬師如来坐像は、本などに掲載された写真から大きく迫力のある姿を想像していたが、実際に目の前にすると想像より小さかった。というのも、黒石寺薬師如来坐像は像高126㎝なのだ。
黒石寺薬師如来坐像は、カツラ材の一木造りで、内刳を施した像内には貞観4(862)年の墨書銘が記されており、国指定重要文化財に指定されている。
薬師如来坐像には、台座と光背、頭部に金箔が残っている。面相は如来に似つかわしくないほど厳しく、頬はこけ、唇はとびだし、切れ長の目は吊り上がっている。光背の化仏の柔和な表情とは対照的である。両肩はいかつく張っており、両膝は厚く幅広い。刻まれた衣文は太く力強い。
像自体はそれほど大きくないが、なんとも力強い雄大な仏像で、他地域の平安時代の仏像とはまったく異なる特徴である。
なぜこのような仏像が製作されたのだろうか。
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