木田昨年

木田昨年と申します。今はネオンネウロンという名前で音楽をやっています。サブスクで聴けます。 →https://www.tunecore.co.jp/artists/neon-neuron

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第65回角川短歌賞予選通過作品『銃身と花束』

 『銃身と花束』                木田昨年 開花予想三月二十日ひび割れている落花生の殻から砕く

¥100
    • 短歌、音楽、ぼくの人生とか。雑記。

      本当に遺作にしたいと願って最近はいつも作る。 現在の僕が抱えているものが僕だけになったとしたら、きっとそうしたい。 初めて入院した高校二年の夏のことをこの時期には思い出すけど、今年は特にそんな夏で、でもそれは別に悪いことではなくて、僕はその入院が短歌を始めた夏だったから。 あんまり暑くない。僕はほとんど汗をかかない。こないだ友人が部屋で汗をかいていて、気遣いが足りないと思ってクーラーをつけた。 いまは間違いなく自分の首をぶっ刺すことがわかりきっているので、メロンを割るため

      • 君の言葉はかならずごみだよ。

        多くの人は、話す人の言葉ではなく、その唇をみているのだから、君の言葉はかならずごみだよ。 須く、そうあるべきだ、と世界は云うからね。 僕はぶっ壊そうと思うよ。 ついてきてくれるかい。 経過する永遠の、1/3に差し掛かったよ。 ほら、青いトンネルが終わって雨が降る準備はもう整っているんだ。 くだらない言葉も、嘘も、質量を失った酸素のようなんだ。 君は、ぼくを愛してるという。 その唇を見ている。 /木田昨年(ネオンネウロン)

        • 雑記

          僕は、僕の心を動かせる言葉を愛していて、常にさがしている。 言語のプロとして大抵の言葉や表現には驚かない。 例えばそれは本に書いてある。 例えばそれは君の唇から垂れている。 薄っぺらい言葉を俺に吐いたやつからぶっ殺すぞ。

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        第65回角川短歌賞予選通過作品『銃身と花束』

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          給水塔

          換気扇の下で煙草を吸いながら、思い出す。 或いは、コンビニの灰皿の前で思い出す。 或いは、夏の駅前で思い出す。 花を食べる君の手つきを。 笑った口の、端から、 蜜のようによだれを垂らして、 僕らは馬鹿な大人になろうと思った。 僕は給水塔のような悲しみを抱えて 君のことを思い出そうとしているうちに すぐに消えてしまう煙を吸っている。 蛇口を捻って、 煙草を消す。

          春の賃貸を抜け出して、夜をやり過ごすこと

          僕はこの公園の空気も、夜の桜も、街灯も、全て愛していた。 君はどうだろう。

          春の賃貸を抜け出して、夜をやり過ごすこと

          HTML.CSS.TANKA

          こんなものは僕の救いでもなんでもない。 血肉でもなんでもない。 僕の先走った死体から湧いてくる腐敗臭を、 三十一文字にまとめあげて、 まるで僕を構築しているかけがえのない言葉のように、 操り、 インターネットに接続する。 自分の短歌が美しかったら、僕が美しいというわけではない。 歌に明るいあなたなら、 もうお分かりだと思うが 僕はもっぱら虚構専門の歌人である。 こんなものは一生付き合ってゆく呪詛でしかない。 短歌も詩も、まるで寝言のように溢れてきて、 ぼくはその記録係とし

          HTML.CSS.TANKA

          まじどうでもいい雑感

          欲しいものがなにかわからない のになんか欲しい もがくのをやめたら終わる気がして音楽をやる スネアを鳴らすと 連続して鳴らすと うるさい 心地がいい 死ね とおもう 誰かに対して ではなく 0:45から入るストリングスは 君が纏った死の匂いを音って型に閉じ込めたもの 僕のボーカルが埋もれて 心地よい もっと深く深くリバーブを掛けて沈めようかなと おもう どう? 死ね とおもう 誰かに対してではなく 友人が トラックメイカーとボーカルだけで組まれた或るユニット の話をし

          まじどうでもいい雑感

          第63回短歌研究新人賞について個人的に振り返る

          コロナが最初に流行ったとき、『コロナ詠』というものも自ずと流行るだろうと思った。 僕は敢えて、その年の短歌研究新人賞に何事もない虚構の世界を詠み込んだ連作『Akichi』を送ることにした。短歌研究へは二回目の挑戦だった。完全に受賞する予感がした。 結果。最終選考を通過するも受賞に至らず、上手くコロナ禍を詠んだ平出さんが受賞した。その時に僕の中で「何か」がマジで終わり、その「何か」に決定的に敗北した。 思えば最初から自分は、「現実」と仲良くできず、むしろ喧嘩しようとする歌

          第63回短歌研究新人賞について個人的に振り返る

          フェイクの詩人たち

          ポエティックで、心底抒情する、ターコイズブルーのクソな憂鬱がぼくのなかを常に満たしている。時間も宇宙も言葉も、存在しないほど深く、青い、『それ』が僕のすべてであって、本物の詩など「この世に現れたことがない」ということをまざまざ理解させてくれる。

          フェイクの詩人たち

          詩人の密集した多目的トイレで僕の文体が犯されている

          ベッドで、椅子で、上の空が綺麗にみえるから、ずっと見ていた。 この僕の詩集のくだらなさには吐き気がする。これは売らない。 死が欠如した満月の寺、僕は悟っていない。なにかを。まだ。 八月から九月にかけてやってくるあれにはうんざりした。侮蔑は美しい角度から唾のように垂らすものだ。 ここまで僕のノートを盗み見た君を、生きては帰さない。 僕はリアリストの毛皮を上手に着こなした、本物の詩人なので。ほほえみを繰り返し、繰り返し、永久に君に適応できないだろう。

          詩人の密集した多目的トイレで僕の文体が犯されている

          遺書A

          僕は二十歳までに死ぬことにした。 しかしうまくいかなかったものだから、つぎは三十歳で死ぬことにした。 / 十代のころ、強制的に植え付けられた孤独が障害になって残った。 ぼくが死んだとき、その汚れた種子がはじけて、あの絵のように胸から赤い花が咲くだろう。 なぜかというと僕は詩人だから。 超常的なことは、スプーンをねじ曲げるより簡単に起こせる。 僕は詩人だから。 / P.S.この遺書は見つかると非常に厄介。僕は目の前に現れるすべてを博愛し、特に、君を愛した。 なぜだかわ

          映画

          僕の瞳は、僕の身体は 僕の死を切り取った映画だ 人並みに耄碌して いつか崩れ落ちるときに ゆれる、空っぽの安楽椅子の下で 伏した僕を みつめてくれる人が 僕にいるだろうか もしも 後撮りのラヴシーンみたいに いまから きみに出会えたら 映画にでもゆきませんか ポップコーンをひっくり返しても 怒らない人

          smog day

          止まっている室外機。 街の塵(ごみ)が一斉に、風に巻き上げられて。 僕は 音のない蝿を追いながら、 裏路地へ 裏路地へ 裏路地へ。

          こんな頭痛すら懐かしい天国でふたりのアパートを借りに

          黒い冷蔵庫とうつ伏せのあなた。 中身はどちらもきれいなトマトだけ。 サイレースが潤んできたら、 買い物に行こうか。 ゴミ捨て場にすべてがあるさ。 部屋にはもう何もないのだし。 サイレースが潤んできたら、 散歩にでもでかけようか。 /木田昨年

          こんな頭痛すら懐かしい天国でふたりのアパートを借りに

          ら、

          ぼくらはそれを、韻律の奥に記憶する。 la rhapsodie. 上階からピアノの失敗ばかり降りてくる部屋で 僕はなにも悲しくない。 時間は、生クリームを少しずつ液体にする機械。 僕は息を殺して、立体額縁の中におたまじゃくしのいない譜面を飾る。 Allegro moderato(in a frozen sweet room or gelato.) 景観を伴わない窓。トイレに詰まった涙。 冷蔵庫に置き去りの花束とコインロッカーベイビー。 ピリオドまみれの詩。ただの指輪。