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「麻婆豆腐と6ハウス」

店の買い出しに近所のスーパーへ。
茄子、島豆腐、白胡麻、トマト缶。ほぼ無心で目当てのものをカゴに放り込みながら、「あ、今夜の夕飯どうしよう?」と、よぎった。
空腹ではないなか、何を食べたいかを考えるのは難しいこと。

スーパーの入り口から、再度ぐるり。
青果コーナーから鮮魚、精肉コーナーまで、およそ20メートルあまりをカートを押しながらゆっくり歩く。
なかなかピンと来ず2往復するも、アイディアを求めて普段ノーチェックの「〇〇の素」とか並んでいる棚へ行ってみることに。

ハヤシライスにクリームシチュー、青椒肉絲、酢豚、海南チキンライス、タコライス、キーマカレー、グリーンカレー、じゅーしーの素、中華おこわの素・・・パッケージも絢爛、おびただしい数のおかずの素。
日本家庭の食事情が一目瞭然で、「ほほう」となる。
このなかでわたしの胃を掴んだのは、
「あ!」
「麻婆豆腐」(Cook Do謹製)であった。
そうと決まれば話は早い。けれど、島豆腐を前にしたときに何故「麻婆豆腐」とならなかったのだろうか。

絹豆腐3丁、合挽肉(夕方で2割引也)500g、白葱をカゴに加える。

レジで並んでいたら、末っ子とその友だちが「ヤッホー!」とご機嫌で駆け寄ってきて、「車があったから『ママがいる!』と思ってさ」と。
なんでもふたりはこれから図書館に行くとかで、その途中の寄り道。
「なーんでも好きなもの買ってあげるから持っておいで」と言ったら、アイスコーナーに脱兎の如くダッシュで、「パピココーヒー味」。
ふたりで半分こじゃなくて、ひとりで2本食べるって。

帰宅後、すぐさま精米。のち浸水40分。この間、オリオンビールプレミアムを1本飲む。
角銅真美の「Carta de Obon」をひたすらリピートしてたらあっという間にタイマーが鳴った。1曲4分31秒だから、10回くらい聴いたことになるけど、まったく飽きない素晴らしい曲。

さあ!米を炊こう。しかも新米。
蒸気が吹いたら10分、蒸らし10分、計20分。
この20分で麻婆豆腐を完成させるべく腕まくり。

絹豆腐をざるにあげ、水気を切っている間に香味野菜の白葱、生姜、にんにくをタンタンタンッとみじん切り。Omotoの菜切り包丁は神器。

豆板醤、本味醂、玉葱糀、醤油、塩をボールに適当に合わせる。

中華鍋で菜種油と胡麻油で香味野菜をちりちりと炒める。家族が「美味しそうな匂いがする」と、次々とキッチンに集まってきた。
合挽肉を入れ、肉の水気が飛ぶまでしっかり炒める。
合わせ調味料と少々の水、賽の目に切った豆腐を中華鍋にイン。柔な豆腐が崩れないように、大きめの木のスプーンでやさしく数回混ぜる。

くつくつ、くつくつ。鍋の中は真っ赤っか&激熱で、まるで地獄。

仕上げに水溶き片栗粉でとろみをつけ、辣油をひと回し。好みで粉にした花椒を添えて。

今夜の夕飯は白飯と麻婆豆腐。だけ!
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休日の二日間は家のあれこれに勤しむ。すなわち6ハウス的雑務である。
どこにも出かけずに、ただただ家を掃除する日。

初日は各所引き出しの整理。なんとなくの衣替え。袖なしの服をしまい、長袖を出す。
ふんわりと、且つ角を揃えて畳まれた服は、然るべく場所へ収納される。

夏のあいだにすっかりよれたものはボロ布に、シミがついた白服は「染め直し」袋に。「染め直し」の服が入った紙袋は、しっかり猫にマーキングされていた。おねしょのようなでっかいシミ。
「くーーーーっやられたーっ」からの、「洗えばいいんだから」の開き直りが、最近は随分と早くなった。

埃が舞って、たちまち鼻水と喘息勃発。ぜーはー言いながらティッシュをポケットに突っ込みながら、片付けは終わらない。


二日目は庭へ出る。
草むしりのミッション。
マイ草むしりセットは、大きなバーキ(竹かご)と赤い持ち手の草刈り鎌、赤い作業用手袋。

草(サシグサ、ヘクソカズラ、アレチノギク、エダウチチヂミザサ、カスマグサ、他いろいろ)をざくざく切ってバーキにいれる。青臭い匂いが立つ。草は芭蕉の木の下のコンポストへ、たぶん、速攻で土に還る。
それにしてもいろんな種類のカタツムリがいるなぁ。
茶色くて丸っこいの、巨大なアフリカマイマイ、細長くてギザギザの縞のもの、極小産まれたてほやほや。
アフリカマイマイに関しては、過去に知り合いが食べて(もともとアフリカマイマイは食用)死にかけたせいか、勝手に警戒している。
庭でマイマイを見つけると、まるでハンマー投げかのように遠ーーくに飛ばした。
でもある日、「おかーさん、なんでそんなことするの?」と哀れみをしたためた表情で長女に迫られ、「はっ」と我に返る。

そんなエピソードを思い出しながら、よいしょと腰を上げると、そこにはこざっぱりした庭が。
あとで米糠をまく。
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目下、育成中のスリランカの土鍋で鶏手羽を煮込む。
包丁の背でガンッとつぶした生姜とにんにくを放り込み、ごま油少し。
鍋肌で炒り付けるように手羽を焼く。
じゅーじゅーと、底から油がにじみ出てくる。
酒、水、黒糖ひとかけ、しばらくしてから醤油。
だいじに冷蔵庫で保存していた、モッチンの畑からもらったハーブをこの際、全部入れよう。
バイマクルー、ラオラム(タデ)、ノコギリコリアンダー。
生のヒパーツ、刻んだ生の赤唐辛子、レモングラス。
仕上げにライムをギュッとしぼって完成。
イメージは雲南やヴェトナム北部。

今夜の夕飯は、鶏手羽と白米。だけ!

待てよ、癖のあるハーブ多量使用につき、末っ子が「むりー」とかなったときのために、挽き割り納豆を保険として、どどーんと4パック。

結局、「こんな米泥棒おかずを前に、いったい誰が納豆でごはんを食べるのか」と、口々に家族から問われる。
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近所のスナック、否、バーのDAMに紗穂さんの曲が入っていてびっくりしたのは数ヶ月前のこと。
「幼いふたり」、「楕円の夢」、「リアルラブにはまだ」の3曲。
なかでも「幼いふたり」は大好きな曲なので嬉々として、それもそのときはちょうど山野さん(寺尾紗穂を教えてくれたのは山野さんだった)もいっしょだったから、殊更イェーイとなって、「幼くないふたり」でこの曲を歌った。

つい先日、「さよならの歌」が追加されていた。
かのちゃんのことがあって、「さよならの歌」を聴くのを避けていたけど、その夜はわたしと潤ちゃんの他にお客さんがいなかったので、気合いを込めて歌うことにした。
店主のてつやとバイトのすみれちゃん、潤ちゃんの3人は雑談で盛り上がっていたからちょうどよく。
こそっと「さよならの歌」を入力して、背中を向けて歌った。








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