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1918年(大正7年)1月1日 祖父の日記

誓約
1 毎日必ず書くこと
2  丁寧に書くこと
3 不必要のことは書かざること
4 英語、国語どちらでもよし

形式
何月 何日 何曜日 天気
1 記事
2 善悪
3 新しき知識
4 その他

格言
光陰如矢
我己に死せり

一月一日 火曜日 晴
1 昨夜の疲れにて朝7時半まで寝たり。若水をくみ雑煮を祝えば八時なり。いそいで学校に行き校長より訓示あり。将来のためその大略を書かん。

「去年は戦争にて商業に大なる影響を及ぼしたり。欧州にては今は如何に暮しているか感へ見ること必要なり。それは多分大なる紛糾しているだろう。
しかるに我らは安穏に此れの如く祝うことのできるのは祝わねばならぬことなり。
そもそも欧州戦争は有史以来、未だかつてなき世界人類の大戦争なり。
我らは今、安穏に暮しおると言えども何時矛をとって行かねばならぬかも知れぬ。
戦争の結果は何如になるか少しもわからぬ。
然れども今年の中にかたがつくかも知れぬ。思うにこの大戦争に今年よりは来年。
来年よりは再来年と年をふるにしたがい益々困難になるべし。
其大いに困難になるには諸君の時代だろう。
その時のために今より決心しておく必要あり。
然れども徒に将来のことを心配せよと云うにはあらず。
其要は一日に本を一行にても二行にても多くよむことなり。
その目的は大なるを要し行は小なるを要す。
されば今日家に帰らば本をどれにても二、三頁読むことを望む。
今日は三頁明日は四頁と読まば何時かは其結果は来るべし。
少しづつするは諸君の気をつけねばならぬことなり。
千里の道も一歩よりはじまるものなり。
これをもって今日の式終わらんとす。
願わくば諸君よその土産をもって行かれんことを」と言いたり。

我が家に帰り心ならずも親類の人と芝居を見に行く。夜帰りたるは十時なりき。少し居ていぬ。

2 思うに今日やりたることは皆悪し。
校長の土産も学けず芝居を見に行き貴重なる時間を徒費したりは我にとって大いに遺憾なることであった。
しかしこれくらいのことにてくじけず熱心に今年は日習せんと思う。

3 自習は注意力の集中が大切なり。遊びながらの勉強は何にもならず。
注意力集中して勉強せば2時間のものも1時間にて出来るべし。

4 元旦や芝居がへりの寒さかな