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シリーズ・留学を考える [10] - 特定のビザで滞在するということ

海外留学をすると、その国に自分のパスポートを持って入国する。言い換えると、自分が持っている国籍と異なる他の国に滞在する。

その国の国籍を持たない人が留学などで長期滞在する場合には、基本的には何らかのビザが必要だ。

たとえばニュージーランドの場合、日本を含む多くの国を対象に3ヵ月間以内ならビザを取得せずに滞在できるけれど、3ヵ月を超える滞在の場合は、滞在目的によって各種ビザを申請、取得する。就学を目的とする滞在の場合は、学生ビザを申請し取得して滞在する。

ビザは滞在許可証だから、その国の国籍を持たない人が、特に長期間滞在する場合は、滞在国から許可をもらって滞在することになる。

だから、ニュージーランドに学生ビザで滞在している人は、ニュージーランド国から、就学目的での滞在許可を得て滞在し、学生ビザで許可された範囲内での活動が許されている。

ビザのことを入国許可証だと思っている人もいるけれど、ビザは、入国の可否だけではなく、滞在中の活動を制限する滞在許可証でもある。

たとえばニュージーランドの学生ビザには、滞在中のさまざまな条件が記載されている。基本的には、ビザを取得した学校で就学する期間のみ滞在が許可される。また、就学期間や就学先学校によっては、週20時間以内の就労が認められていたり、長期休暇にフルタイムで時間制限なく就労することができる。

だから、ビザの期限を過ぎてそのまま滞在したり、週20時間を超えて就労したり、就学先学校を許可なく変更したりなど、滞在許可条件を超えることはできない。それは違法だ。

そう考えると、ニュージーランドの国籍を持たずに滞在している人は、国籍を持つ人と明確に違いがある。特に、Temporary Visa と呼ばれる学生ビザや就労ビザは、いずれニュージーランド国外に出ることを前提として滞在が許可されている。今年のように入国制限が実施されたり、滞在や入国に関して何らかのラインが引かれるときには、法的なビザステイタスが問題になってくる。

では、学生ビザ保持者などに対して、ニュージーランド国や国民は排他的なのかと言えば、実際はそうではない。ビザは法律上の制限であって、普段の生活で友達や周りの人が制限をかけてくることはない。

考えてみると、学生ビザ保持者がおでこに「学」と書いて外を歩いているわけではないから、他の人が見てその人が何らかのビザで滞在しているのか、国籍を持っているのかはわからない。

そしてニュージーランドでは、いろんな民族やいろんな文化を持った人が、いろんなビザやいろんな国籍で暮らしている。

私の知り合いでも、もともとイングランドやトルコ、トンガや香港からの移民などもいる。けれど、彼ら彼女らが永住ビザや就労ビザで滞在しているのか、ニュージーランド国籍を持っているのか、周りの人は知らないし知ろうともしない。

そんな、多様な人たちが一緒に暮らしているニュージーランドの社会では、普段の生活では特定のビザを持って滞在していることを忘れてしまう。

言い換えると、法的な滞在ステイタスはあくまでも法律上の制度のことであって、普段の人間関係には影響がない。

ただ、今年のように入国制限が実施されたり、滞在や入国に関して何らかのラインが引かれるときには、国と個人との関係で法的なビザステイタスが問題になってくる。今年の入国制限の実施は、普段はほとんど気にならなかった、ビザや国籍による入国や滞在条件を、強く意識させる結果にもなっている。

でも、また以前のように、誰でも入国できるようになれば、一度ニュージーランドに滞在し始めた人は、普段の生活で自分のビザや国籍を強く意識することは、ほとんどなくなるだろう。


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