見出し画像

【LOST CORNER】デカくて重くてあったかいアルバム

あたらしいアルバム

初めて買ったCDはRADWIMPSの『人間開花』だった。たしか高校3年生の時だったと思う。当時はまだ音楽サブスクが普及していなくて、聴きたい音楽はTSUTAYAでCDをレンタルしてパソコンに取り込んで聴いていた。米津玄師を聴き始めたのも高校生の頃だった。
それから10年後、僕は26歳のニートになり、米津玄師はもうなんて説明したらいいかよく分かんないくらいの巨人になった。

絶対に外せない大作のタイアップを次々に任され、液タブを導入し、海外のエラい賞を取り、そしてツナギしか着られない体になってもなおその歩みは止まらず、ついに来年ワールドツアーを行うことが決まった。

そんな米津玄師の新しいアルバムを買ってしまった。お金もないのに!
でも後悔はしていない。なぜなら僕は米津玄師が大好きだし、なんといってもアルバムがとても良かったから。よければ自慢させてください。

どーん!

通常版、映像版、がらくた版のどれを買うかとても迷ったのだが、『空想』のライブ映像が観たかったので映像版にした。
まず、箱を開ける前から違和感があった。アルバムってこんな重たいもんでしたっけ?と。忌々しいいつもお世話になっている短答過去問パーフェクトよりわずかに軽いぐらいである。
箱を開けると、冗談みたいに重厚感のあるブリキ缶が出てきた。ブリキ缶に入っていることは知っていたが、こんなに質感が良いとは思ってなかったので、この時点で映像版にしてよかったなと思った。

今回のジャケットもかっくいいね。

中身はCD・BDケースと、今回のジャケットが描かれた歌詞カード。
この歌詞カードがすごい。手触りはしっとりなめらかで、表紙がなんとハードカバーである。開くと“歌詞カードのにおい”が鼻腔をくすぐり、艶やかなページにイラストと歌詞が印刷されていた。もはや“歌詞アルバム”というべき代物である。

裏面もかっくいいね。
歌詞カードって…いいですよね…。

このデカさと重さが、「あぁ、アルバム買ったんだな」と思わせてくれてたいへん良い。
月々いくらかお金を払えばほとんどの音楽が聴ける時代に、部屋の一角を明け渡してでもCDを持っていたいと思って買ったのだから、これくらい存在感のある方がありがたい。


あたらしい米津玄師

この日はバイトがあったので、アルバムを開封した時点で午後11時半を回っていた。あと20分ばかし待てばスマホで聴けるようになるのだが、せっかくフラゲしたからと、わざわざパソコンを引っ張り出してきてCDプレーヤーを繋ぎ、1曲目の『RED OUT』から順に聴いていった。

既出の曲を除けば、「がらくた」と「YELLOW GHOST」、そして「LOST CORNER」がお気に入りだ。もう聴いたことのある曲は全部良いなと思っていたものの、やっぱり新しいアルバム曲も楽しみだったので嬉しかった。

当たり前だが、ずっと同じようなテイストの曲を作り続けるアーティストはいない。その人自身が日々変化していくわけだから、それはもう仕方のないことである。なので、バンドやアーティストに対して、なじみのラーメン屋のような感覚で同じ味の曲を作り続けてほしいと期待するのはお互いに不幸なのであまりよろしくない。たとえロックから入ったバンドがピアノメインのなんか満ち足りた感じの曲ばっかり作るようになっても「お願いだからロックをやってください」とか言ってはいけない。いや、頼むやってくれ。

とはいえ、歌詞を覚えてしまうくらい聞きこんだバンドの曲がなんだか刺さらなくなった時の寂しさは筆舌に尽くしがたいものがある。聴き手である自分が変わったからではなく、音楽性が変わってしまったがゆえに好みの範疇から外れてしまったときには、自分だけ置いてけぼりにされたような気がしてしまうものだ。

今回のアルバムは半分が既出だったので、米津玄師に置いていかれたらどうしようという不安はあまりなかった。むしろほとんどの曲が好きなくらいなので、「あれ、米津さんもしかして俺のために曲書いてる?」って思ってる。不敬。

「生き続けることは 失うことだった」。
最初は正直、「いや、失うもんなんて何もねえや」と思っていた。勝手に持たざる者としての卑屈をこじらせていたわけである。
それでも、もし米津玄師が刺さらなくなるような日が来れば、僕はきっとこの一節を思い出すのだろう。「生きてればそんなこともあるよな」と。

うん、やっぱり俺のために書いてんじゃねえかな。そう思わせてくれるようなデカくて重くてあったかいアルバムでした。


オマケ

written by...!

しっかりクレジットに「天体観測」ありました。
ライブで聴いた時も震えましたが、ちゃんと映像にも入ってて嬉しかったです。そこだけいまだに2回くらいループしちゃう。

ファンって極めると自分のライブでリフ使うんやなって。しかもその後に「懐かしい音楽が頭のなかを駆け巡る」って歌うんやなって。

いいなと思ったら応援しよう!