幻に惑わされず、ありのままを見るには
「傾倒することが幻を作り出す。現実をありのままに見られるのは、超然としている人だけだ。」
—— シモーヌ・ヴェイユ
みなさんは、何かに夢中になりすぎて周りが見えなくなったことはありませんか？
たとえば、好きなゲームをしているとき、大好きなアイドルを応援しているとき、あるいは熱心に勉強しているとき。そんなとき、周りのことが気にならなくなり、まるで別の世界に入り込んだように感じることがありますね。
これは「傾倒（けいとう）」と呼ばれる状態です。何かに心を強く引かれ、のめり込んでしまうことを意味します。シモーヌ・ヴェイユという哲学者は、「傾倒することが幻を作り出す」と言いました。つまり、何かに夢中になりすぎると、本当の世界が見えなくなってしまうということです。では、どうすれば「ありのままの現実」を見ることができるのでしょうか？
今回は、この言葉についてわかりやすく考えてみましょう。
1. 夢中になると、世界は変わって見える
何かに夢中になったとき、私たちは「現実」をそのまま見ているわけではありません。たとえば、こんなことを想像してみてください。
① 好きなものしか見えなくなる
あなたが大好きな食べ物を食べているとき、ほかの料理にはあまり目がいかないかもしれませんね。ラーメンが大好きな人は、どんな料理を見ても「ラーメンよりおいしいのかな？」と考えてしまうことがあるでしょう。
このように、一つのものに夢中になると、それ以外のものが見えにくくなってしまいます。
② 思い込みが強くなる
たとえば、ある人を「優しい人だ」と思い込んでいるとしましょう。その人がちょっと冷たい態度をとっても、「きっと疲れているんだ」と考えてしまい、本当の気持ちに気づけないかもしれません。
逆に、「あの人は怖い」と思い込んでいると、たとえ親切なことをされても「何か裏があるのかも？」と疑ってしまうことがあります。
こうした「思い込み」も、現実をゆがめてしまう原因になります。
2. 幻を作り出さないためには？
では、どうすれば「幻」に惑わされずに、ありのままの現実を見ることができるのでしょうか？
① いろいろな視点を持つ
一つの考え方にこだわるのではなく、さまざまな視点から物事を見ることが大切です。たとえば、「このゲームは最高だ！」と思っても、「でも、他のゲームにもいいところがあるかもしれない」と考えてみることができます。
また、「あの人は冷たい」と感じたときも、「でも、他の人には優しくしているかもしれない」と思ってみると、違った見方ができるかもしれません。
② 落ち着いて考える時間を作る
夢中になることは悪いことではありません。でも、ときどき立ち止まって、「本当にこれでいいのかな？」と考えてみることも大切です。
たとえば、好きな本を読んでいるとき、「この本が本当に正しいことを言っているのかな？」と考えてみるのもいいでしょう。
③ 感情に流されすぎない
とても楽しいときや、とても怒っているときは、冷静に考えるのが難しくなります。そういうときは、少し時間を置いてみるといいでしょう。たとえば、ケンカをしたとき、その場ですぐに「絶交する！」と決めるのではなく、少し時間を置いて冷静に考えると、別の見方ができるかもしれません。
3. 超然としている人とは？
ヴェイユは「現実をありのままに見られるのは、超然（ちょうぜん）としている人だけだ」と言っています。「超然」というのは、物事に振り回されず、冷静に考えられる状態のことです。
では、どんな人が「超然としている」と言えるのでしょうか？
① 周りに流されない
たとえば、みんなが「この服が流行っている！」と言っても、「本当に自分が好きなのかな？」と考えられる人は、超然とした心を持っていると言えます。
② 感情の波にのまれない
嬉しいときも悲しいときも、冷静に物事を見られる人は、超然としていると言えます。もちろん、感情を持つことは大切ですが、それに振り回されすぎないことが大事です。
③ いろいろな立場で考えられる
「自分の考えが正しい」と思い込まず、「他の人の考えも聞いてみよう」と思える人も、超然とした人です。
4. まとめ
ヴェイユの言葉をわかりやすく言い換えると、
「何かに夢中になりすぎると、本当のことが見えなくなる。でも、冷静に考えられる人は、ありのままの現実を見ることができる。」
ということになります。
夢中になることは楽しいし、大切なことです。でも、「本当にこれは正しいのかな？」と考えることも同じくらい大事です。そうすることで、幻に惑わされず、本当の世界をありのままに見ることができるようになるのです。
みなさんも、ときどき立ち止まって、自分がどんなふうに世界を見ているのか考えてみてくださいね。
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