言葉の海を泳ぐ
最近、机上に並んだ『言海』。
明治時代に編纂された日本初の近代的国語辞典です。
近代国家と認められるには「国語辞典」が必須と
国家事業としてその編纂が行われました。
刊行までに費やされた年月はおよそ15年。
「辞書」の定義から始まり、
混沌とした膨大な言葉を分類し
体系づけて順番に並べて一冊にまとめる・・
想像しただけでも途方にくれそうな事業ですよね。
まさに日々言葉の海を泳いでいたことでしょう。
その辞書の名前の由来がおくがきにありました。
続古今集序
いにしへのことをも筆の跡にあらわし、行きてみぬ境をも宿ながら知るは、ただこの道なり。しかのみならず、花は木ごとに咲きて、つひに心の山をかざり、露の葉よりつもりて、言葉の海となる、しかはあれど、難波江のあまの藻塩は、汲めどもたゆることなく、筑波山の松のつま木は、拾えどもなほしげし。
同、賀
敷島ややまと言葉の海にして拾いし玉に磨かれにけり 後京極
編纂した大槻文彦博士の思いが伝わってきます。
続古今集は鎌倉時代の勅撰集。
序は選者の一人、九条基家が書いています。
後京極摂政の有名な歌といえば
百人一首にも登場する
きりぎりす鳴くや霜夜のさむしろに衣かたしきひとりかもねむ
ですね。
今はネットでぱぱっと検索してしまうので
辞書さえ使わなくなっているかもしれませんが、
今に至る日本の言葉は先人の途方もない時間の上に
こうして受け継がれてきているのですね。
家で「言海」に出会わなかったら
そんなことにすら気づかなかったことでしょう。
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