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プロセカ「荊棘の道は何処へ」性差の恐怖と自責の先。

来たる2024年10月12日、暁山瑞希バナー「荊棘の道は何処へ」が公開、イベントが開催されました。

私は暁山瑞希東雲絵名の2人とも大切な推しです。そのため、このバナーが発表された瞬間、もうそれは精神が乱れ、大変な事になっていました…。

しかしながら衝撃的なバナー/内容を含め、強烈なメッセージを感じ、これは辛くてもちゃんと向き合わないといけないと感じたので真面目に、時には感情を入れながら。考えをまとめる為にも感想をつらつらと記しました。

完全に殴り書きで文章がおかしいとか突っ込まず…
ぜひ生暖かい目で見守ってくれたらうれしいです。


  • 思いっきりネタバレが含まれます。

  • 一個人の感想/観点/考察です。

  • ジェンダーアイデンティティに触れています。

  • プロセカガイドラインに従って記しています。



I.瑞希のジェンダーアイデンティティ


ボクのあしあと、キミのゆくさき 2話より
ニーゴは瑞希にとって性別を気にせず
"自分らしく"いられる場所。

まず最初に、「荊棘の道は何処へ」のストーリー中にて、ずっと隠され続けていた瑞希の"秘密"が1つ明らかとなりました。

それは身体的性別(生まれもった身体の性)
"男性"と言うこと。

性表現(ふるまいや外見)女性に見えますが、
今回、性自認(心の性)は名言されていません。

それにも関わらず、


「カワイイものが好きなだけで、性自認も男」
「男なら瑞希くん呼びでいいでしょ?」


と性自認まで決めつける行為はミスジェンダリング(本人が自認するジェンダーと異なる性として扱うこと)にあたる可能性もあり、差別的な行為です。

さらに今回、瑞希のフラッシュバック(トラウマの記憶)に新たなものが追加されました。

荊棘の道は何処へ 1話より

この文言から、クロスドレッサー(異性装を好む人/生まれ持った身体の性に違和感はない)の場合だと会話の文脈に違和感があります。

たとえば、


「ボクはカワイイ格好が好きなんだ!」
「若い時って、そう思い込む時期があるらしいね」



好みを"思い込み"だなんて違和感があります。


「ボクは生まれもった性と何か違うかもしれない…」
「若い時って、そう思い込む時期があるらしいね」



文脈としてはこちらで読み取るのが自然です。

そしてクロスドレッサーの場合は身体の性が男性である場合、性自認も男性なので社会的に扱われる性が男性であっても不都合はありません。

瑞希は学校という社会生活が必要な場で男子生徒と合わせる事を"したくない"のではなく、合わせる事が"できない"事を示唆しています。

KAMIKOU FESTIVAL! 8話より

簡単に「着替え」が出来ない事を描写していたり、クラスメイトの理解を得られずに苦しむ場面も描かれます。

ボク達の生存逃走 5話より
瑞希がクラスメイトを目撃した回想シーン。
メインストーリー9話で描かれたもの
ボク達の生存逃走 5話より
ボク達の生存逃走 5話より

一部の生徒には身体の性のみカミングアウトしているのでしょうか?性自認まで知っていれば「話せばわかってくれるかもしれない」とは思いません。

更には"想いをのせて!Dream Stage"のストーリーにてはじめて「カワイイのが特に好きなだけで"カッコイイ"のも好き」と明かされました。

想いをのせて!Dream Stage 7話より

純粋にカッコイイのも好きでクロスドレッサーならば男子制服を着て"TPOに合わせる"事は容易です。(カッコイイ、までカタカナな瑞希、こだわりがすごいです。)

中学生の時は、男子制服を着ていますが教室には行けず、社会生活に適合出来ていない様子が描かれています。(最終的には不登校になってしまいます。悲しい…)

そしていま、リボンを結んで 3話より

掘れば沢山の伏線はありますが、瑞希の口から未だ性について詳しく語られていない事も含め、生まれもった身体の性に違和感を感じているトランスジェンダーの可能性が"ある"として記載していきます。

「二ゴレンジャーとか発言したり戦隊モノも好きだから男の娘だ!」等の決めつけはジェンダーバイアス(性差による偏見や差別)となるので割愛します。

確たるエビデンスが無い限り、
性自認まで決め付けることは出来ません。

身体的性と心の性は生まれ持ったものであり、変わる事は無いのです。

余談ですが、瑞希のアイコンの配色は
トランスジェンダーシンボルフラッグと同じ
です。

左:瑞希がナイトコードで使用しているアイコン
右:トランスジェンダーのシンボルフラッグ

但し、こちらはたまたまの可能性があるので
"もしかしたら"にしか過ぎないので参考までに。

※心と体の性が異なるトランスジェンダー・Xジェンダー/中性とは限らずノンバイナリー(どちらでも無い性/流動的な性)の可能性もあります。

また、今回のお話はジェンダー問題だけではなく瑞希自身の心の問題と向き合うお話になるので、こちらは前置きとして必要な情報の為おいてあります。

瑞希の性については下記の方達が詳しく考察されているので、ぜひ参考までに。("配慮"についても詳しく記載されています。)


Ⅱ.瑞希のカミングアウト
"責任" と "覚悟"


ボク達の生存逃走 7話より

「ボク達の生存逃走」にて、まふゆが生きるために逃げる道を教えた瑞希。

ですが瑞希は逃げた先の事を知りません。

ボク達の生存逃走 8話より

教えた事に"責任"を感じた瑞希は、「秘密を話さなくてもいいかもしれない」→「秘密を話して"逃げた先"の事をまふゆに伝えよう」覚悟を決めます。

決めたはいいものの、やはりカミングアウトはとても怖いものです。今まで性別なんて気にせず"暁山瑞希"として見てくれてありのまま過ごせていたニーゴとの時間。

荊棘の道は何処へ 3話より

それが身体の性が男性だと伝えるだけで"性別"の壁が生まれてしまい、その先で配慮される事に恐怖を覚えます。どうしても性差による意識は生まれてしまいがちです。

灯を手繰り寄せて 8話より

中々話す事を決めかねていた瑞希ですが、MEIKOや姉に背中を押され、そして奏、絵名、まふゆも前に進むのを見て感化された瑞希はついに覚悟を決めます。

荊棘の道は何処へ 1話より
荊棘の道は何処へ 1話より

まずは、ずっと待ってくれていた絵名にカミングアウトをしようとメッセージを送ろうとしますが、手が震えてしまいます。もうここで早々に泣いてしまいました…ほんとに苦しいよね…。

荊棘の道は何処へ 1話より

「話したい……」

瑞希…。

文化祭に絵名が来る事を知った瑞希は、そこで伝えようと考えますが、"学校"という社会生活を送る場では瑞希の秘密(生まれもった性)を知っているクラスメイトもいます。

何かの拍子で自分の秘密を他人の口から知られてしまうのでは無いか、と危惧する瑞希。

荊棘の道は何処へ 1話より
荊棘の道は何処へ 1話より
荊棘の道は何処へ 1話より

他人の口から伝わるのはいやだ。
絶対に自分の口から伝えたい。


もう、これ、伏線ですよね…。

そんな瑞希の不安を察するかのようにKAITO、そしてMEIKO、類くんが最後の後押しを次々としていきます。

荊棘の道は何処へ 2話より
荊棘の道は何処へ 2話より
荊棘の道は何処へ 3話より

みんなそれぞれの考えがありますが、「瑞希を想う」気持ちに変わりは無い。たくさんの人が瑞希を見守ってくれています。



Ⅲ.「ずっと一緒にいたい」
ニーゴと最後の時間


荊棘の道は何処へ 4話
"本気のイカ焼き"のクラTに照れる絵名。
シンプルにかわいい。

そして遂に運命の日、文化祭当日。

荊棘の道は何処へ 3話より

瑞希はこれが「ニーゴとして過ごす最後の時間になるかもしれない。」そんな想いを抱えながら。

荊棘の道は何処へ 4話より

本来であれば、夢にまで描いていた"ニーゴと回る文化祭"それが叶ったにも関わらず、「今日、絵名に伝えるんだ」と決めている瑞希は内心気が気ではありません。切ない…。泣いてしまう…。

KAMIKOU FESTIVAL! 2話より
この頃はまだニーゴの皆を
心から友達とは思えていませんでした。

瑞希の様子にいち早く"おかしい"と気づいたのは他でも無い、絵名でした。絵名は瑞希の表情に敏感で、力になりたいと常々感じていました。

荊棘の道は何処へ 4話より
荊棘の道は何処へ 4話より
「ちゃんと話してくれるまで待つ。今は、楽しもう。」
成長しましたよね…。

自己の問題、父親とも向き合って、「画家になる」「美大に行く」と前に進む事を決めた絵名は今は心にも少し余裕ができたようにも見えます。

受け止めたいという気持ち、懐が備わったと絵名自身も少し自信がついてきたのでしょうか、とても優しい表情をしています。グッときます…。

荊棘の道は何処へ 5話より

瑞希にとってニーゴはありのままの自分で過ごせる大切な居場所です。その気持ちを更に強く確信するような時間を文化祭でも過ごしました。

秘密を話さなくても、自分の事を分かってくれていて、よく見てくれていて、ボクの理解者たち。

そんなニーゴ達と「ずっと一緒にいたい」その想いを強める瑞希。

荊棘の道は何処へ 5話より

「ずっと一緒にいたい」

その想いは瑞希はずっと前から持っていました。

話したら一緒にいれなくなるかもしれない。

でも、本当の意味でずっとずっと一緒にいたい。
それは瑞希にとって「話す」他無かったのです。

シークレット・ディスタンス 8話より

「ボクのあしあと、キミのゆくさき」では絵名に伝えるチャンスだったのにも関わらず、怖くなってしまい、「ずっと待ってる」と言ってくれた絵名に甘えて「ずっと一緒にいるため」に嘘をつきます。


"一緒にいる為の嘘"


悲しくてすごく尊いですよね。

ボクのあしあと、キミのゆくさき 8話より
享楽とは、嘘で成る…。

しかしまふゆに逃げた先の事を伝えたい、"責任"を感じている瑞希、そしてより一層強くなる"ずっと一緒にいたい"という想い。

荊棘の道は何処へ 6話より
「また、ナイトコードで」
今の瑞希にとっては心の救いになる言葉です。


もう「話さない」選択肢は無くなりました。



Ⅳ.待ち続けた絵名との約束


荊棘の道は何処へ 6話より

「─── 絵名。」
「……屋上に行かない?」

奏とまふゆの2人を見送り、絵名と2人になった瑞希。いつもの様に明るくおどけるような姿は無く、神妙な面持ちといつになく真剣な声色で絵名に提案します。

みんなと繋がれた気がした場所。
絵名が「ずっと待ってる」と言ってくれた、
あの場所、屋上で伝える事を決めました。

ボクのあしあと、キミのゆくさき 8話より

「ボクのあしあと、キミのゆくさき」で絵名は「話してもいいって思ったら(私の事を信用出来たら)話して。」と伝え、瑞希も「絵名の事をちゃんと信じて、全部話したい」と感じていました。


これが、2人の約束でした。

ボクのあしあと、キミのゆくさき 8話より

時を重ね、双方の信頼関係は当時より厚くなり、
遂にその時が訪れようとしています。

荊棘の道は何処へ 6話より

「全てを受け止めてあげたい」覚悟をとっくに決めていた絵名は、優しい笑顔と声色で瑞希に「行こっか」と返します。

荊棘の道は何処へ 6話より
「これからも一緒に」遠回しに伝える絵名。

遂に伝えるとなった時、不安の色が隠せなくなってしまった瑞希。そんな瑞希の心境にもすぐ気付き、優しく諭してくれる。本当に優しい。人の気持ちを汲める。なんて優しいの…えなぁ…。

荊棘の道は何処へ 6話より

時が近づき、今までずっと「逃げたくない(願望)」だった想いが「逃げない(決意)」に変化します。この変化は本当に大きいです。

荊棘の道は何処へ 6話より
荊棘の道は何処へ 6話より

瑞希の気持ちを汲み取る「優しい絵名」クラスメイトの為に動き、絵名を気遣う「優しい瑞希」双方の信頼関係はここでも相対的に描写されています。

先に屋上に行く事になった絵名は、自分を信頼してくれた嬉しさを感じ、受け止める覚悟と心の準備をして瑞希を待つことになります。

荊棘の道は何処へ 6話より
荊棘の道は何処へ 6話より

しかし、2人の約束は果たされる事なく、
ある事件により引き裂かれてしまいます。


Ⅴ.無意識のアウティング/意識的陰口


荊棘の道は何処へ 7話より

屋上で2人で話せると思っていた矢先、
男子生徒たちがやってきてしまいます。

さらには瑞希本人がいない事をいい事に男子生徒は

「暁山は"何もなきゃ"普通に可愛いよね」

と噂をはじめます。

"何もなきゃ"とは「暁山は男じゃなかったら普通に可愛い」という陰口になります。これ、性別が弊害だと言っているようなものです。

とても差別的ですよね。

絵名も男子生徒達の存在に気付き、「場所を変えて話した方が…」と考えている間に男子生徒達に話しかけられてしまいます。

そして恐れていたことが起こります。

それがアウティングです。
(性的マイノリティの秘密を暴露する行為)

荊棘の道は何処へ 7話より
荊棘の道は何処へ 7話より

ここで絵名は「私は"普通に"女の子って、なに…?」「瑞希が…?冗談じゃ…ない…?」と気付き始めます。

荊棘の道は何処へ 7話より
荊棘の道は何処へ 7話より

どんな事でも受け入れると覚悟をしていた絵名ですが、まさか性別の事を打ち明けられるとは夢にも思っていません。

瑞希のふるまいは女性、見た目も女性、今までずっと何も考えずに同性だと思っていたのですから驚くのは無理ありません。それが当たり前の反応です。

信じがたい事実に驚いてしまう絵名。
思わず顔を歪ませてしまいます。

そしてその瞬間、見てしまうのです。

瑞希が。

"キミの顔"を。

("キミの顔"は7話のタイトル…惨いです…。)

荊棘の道は何処へ 7話より
驚きと戸惑いを隠せない絵名

「瑞希が…?」「どういう事?」
「どうすればいいの?」「女の子じゃ…ない…?」


本当にこの表情、絶妙ですよね。
東雲色の夕焼けをバックに…。
色んな解釈が出来ます。

絵名は戸惑いを抑える事が出来ませんでした。
その表情を見てしまった瑞希。

「性差が、配慮が、生まれてしまう。」

荊棘の道は何処へ 7話より
暁色の夕焼けと共にショックを受ける瑞希

ニーゴと、絵名との思い出がフラッシュバックで蘇り、ありのままで過ごせていた居場所「変わる」事実に耐えきれず、瑞希は逃げ出してしまいます。

フラッシュバックの表現、本当に凄いですよね。
瑞希の記憶、私たちの記憶にも触れてきます。嗚咽不可避です。

そしてこれが「ズレる」
性差によりズレてしまう感覚。

今回の描き下ろし楽曲
「化けの花」でもうまく表現されています。

化けの花、瑞希の緊迫感や心境、絵名の心境もすごく繊細に描かれています。そしてカッコよく仕上げられています。なきそさん、すごい。天才だ。


さて、話は戻りますが「話す予定だったのに何故そんなにショックを受けているの?」と言う疑問が生まれると思います。

瑞希は順を追って話す予定でした。絵名が少しづつ受け止め、理解して、今後とも変わらないまま、ニーゴという居場所で自分らしく、ありのまま過ごせるように。

荊棘の道は何処へ 3話より

「待って」くれていた絵名との約束をどうしても自分で果たしたかった。時間をたくさん掛けて、覚悟を決めたのだから。

しかし他人の口で、短絡的な情報だけが伝わってしまった。絵名との約束を自分が早く話せなかったから破ってしまった。そしてキミの顔を見てしまった。

そんな様々な想いから耐えきれず、逃げてしまったのではないでしょうか。

Xでも「男子生徒A」が良いか悪いか論争が繰り広げられていました。

確かに男子生徒Aは絵名が瑞希の身体の性を"知っている"事を前提にからかうような発言をしました。同じ制服、付き合いが長く仲が良い。知っていて当然だと思ったのでしょう。

しかし、その前に「男子生徒C」が放った
「"何もなきゃ普通に"可愛いよな」
と言う発言、明らかな悪意があります。

荊棘の道は何処へ 7話より
アウティングは無意識であっても、性別の事に対して陰口を言っている悪意は自覚していました。

人の性に触れることはデリケートな事であり、
さらに陰口は悪意をもって行われる事です。

誰しもがわかる、やってはいけない事ですよね。

造り手はこの部分を伝えたかったのではないでしょうか。
だからこそここまで残酷な描写にした。

アウティングは実際に社会事件で残酷な結果を生み出してしまった過去もあります。人の生死さえも決めてしまう大変危険な行為です。

"ただのフィクションだ"と終わらせることなく、いまいちど私たちも考えるべきかもしれません。


Ⅵ.瑞希が見せた涙と本音の吐露


荊棘の道は何処へ 8話より

瑞希の秘密を知ってしまった絵名。
逃げ出してしまった瑞希を必死に追いかけます。

「なんて言ったらいいかわからない」そう思いつつも、瑞希の顔を思い出してそれまで以上に全力で追いかける描写があります。

瑞希の表情1つで行動しようと思う絵名の気持ち。瑞希は大切な仲間であり友達であり、ニーゴのメンバー。その気持ちは秘密を知った後も変わっていませんでした。

「お悩み聞かせて!わくわくピクニック」でも、絵名は瑞希の表情を見て「放っておけない」と感じるくらい、瑞希の顔をよく見ています。本当に優しい子です。

お悩み聞かせて!わくわくピクニック 7話より

なんとか瑞希を追いかけて捕まえた絵名ですが、うまく言葉が出てきません。その沈黙を破るように第一声を放つ瑞希。

荊棘の道は何処へ 8話より

「……ごめんね」

謝罪する瑞希。
本当に悲しいです。

ボクのあしあと、キミのゆくさき 8話より
この時のラストシーン…思い出してしまいます。

絵名は「でも…」「けど…」とうまく言葉を発することが出来ません。

瑞希は絵名が「びっくりした」だけで、変わらずに大切に思ってくれていることニーゴのメンバーとして受け入れてくれていること理解していました。

なぜなら、とっくに信頼していたから。

ただひとつ、
「性差による配慮」
が生まれてしまう事を除けば。

荊棘の道は何処へ 8話より

今まで瑞希はニーゴのメンバー誰の前でも悲しみの涙を零すことはありませんでした。

(カーネーション・リコレクションでは、奏の気持ちに寄り添い涙ぐむ描写はあります。)

カーネーション・リコレクション 6話より

「ボクのあしあと、キミのゆくさき」でも今にも泣き出しそうな感情を必死に抑え、絵名の前で涙だけは決して見せませんでした。(涙ぐむ場面も瑞希の心理描写のみ)

いつも明るい、気丈な瑞希が、
声を荒らげて、泣いている。──────

初めて見る瑞希の涙に、
絵名は強い衝撃を受けます。

荊棘の道は何処へ 8話より

涙と共に、溢れ出てしまう感情を瑞希は抑えることが出来ません。
今まで思っていた本音を泣きながら吐露しはじめます。

荊棘の道は何処へ 8話より
荊棘の道は何処へ 8話より

瑞希はニーゴのメンバーをとっくに信用しきっていて、その先に性差による配慮の"優しさ"が生まれてしまうことを何よりも恐れていました。

その優しさを持たれてしまう事も、"特別扱い"されてしまう事も、瑞希にとってはありのままで自然体でいたいだけなのに、そのままでいられなくなってしまう事がどうしようも無くだったんです。

ここの配慮の部分は感じ方、捉え方による部分。
瑞希自身の心の問題です。

瑞希が抱えている今まで経験して来たトラウマ、性は生涯変えられない事実もあり、瑞希自身もどうしたらいいかわからなくなっています。

荊棘の道は何処へ 8話より
荊棘の道は何処へ 8話より
感情を抑えられず泣き喚き本音を吐露する瑞希。
推しの悲しむ顔は正直見たくありませんでした…。

でも、実はこんな風に吐露するのは心の奥底で「救済」を求めているのではないでしょうか。

自分ではどうすればいいかわからない、だから絵名の言葉が欲しい。誰も知らない感覚で助けてほしい。安心させてほしい。

そんな淡い期待も伝わってきます。

しかしそんな期待を抱えても無駄だと言うことは瑞希自身も分かっています。自分の問題だから。

瑞希が思っていた性と違った。絵名にとって初めての体験です。どうしたらいいかわからない。どう受け止めて、どう対応していいかわからない。

絵名も必死に考えますが、言葉に詰まってしまい、捕まえていた瑞希が絵名の手から離れてしまいます。

荊棘の道は何処へ 8話より

自分の手から、瑞希が、仲間が、友達が離れていってしまう。

私が何も言えないから。

悲しみに満ち溢れる絵名の表情、なんとも言えないですよね。

人と向き合う難しさ…。

荊棘の道は何処へ 8話より
後ろ姿の表現、初です。
様々な解釈が出来ます。悲しい。

瑞希は絵名と、自分と向き合うつもりだった。
でも出来なかった。

瑞希は男子生徒によるアウティングを責めることはなく、自分の心の問題と向き合う事が出来ず、そして絵名と向き合う事が出来ず、そんな自分を責め、落胆し、逃げ出してしまいます。

逃げ続けるのはオススメしない。

そう言っていたのは自分だったのに。
瑞希は自責を抱えました。

ボク達の生存逃走 7話より

瑞希は自らに失望してしまい、
1人の殻に閉じこもります。

余談ですが、ラストシーンで瑞希は「消えたい」と独白します。実はこれ、初めてだと思います。

まふゆに「消えたがってるくせに」と言われた時は「さぁ、どーだろね」と感じたり、「もういいかな」などの曖昧な表現でした。

そしていま、リボンを結んで 3話より
「スーって消えちゃえたらいいのに」の発言はあります。

今までメンバー達が消えたいと発言する中、瑞希は1度足りとも「消えたい」と発言する事はありませんでした。


まるでこの時の為だけに「消えたい」という発言を
とっておいたかのように。


それだけ、今回の事は瑞希の心にとって1番残酷で、強く深い傷を負ってしまったというインパクトを与えました。

私は以前から瑞希だけ希死念慮の直接的な発言が無いことが気になっていただけに、聞いた瞬間「そこまで堕ちてしまったのか」と気付いた時はもう…本当に辛かったです。


Ⅶ.絵名と瑞希、
2人が抱えた自責の先は。


荊棘の道は何処へ 8話より

瑞希が去り、ひとり残された絵名。
後悔し、耐えきれず、涙を流します。

どうして、何も言えなかったんだろう?
ちゃんと受け止めるって思ってたのに。
ちゃんと、待ってるって決めたのに。
大事な仲間なのに、どうして…!!

何も言わずとも、絵名の気持ちが伝わってきます。

ステンレスのロッカーを殴るような音が鳴り響き、「私は、なんで…!!」とうなだれ後悔の念を表した所で「荊棘の道は何処へ」の物語は幕を閉じます。

荊棘の道は何処へ 8話より
この時の絵名の感情表現、あまりに凄いです。

絵名はずっと前から瑞希に話して欲しい、頼って欲しいと常に願っていました。ニーゴのメンバーとして、友達として、もっと深く繋がりたかったから。

「言葉にしてほしくて 東雲絵名 」
サイドストーリー前編より
お悩み聞かせて!わくわくピクニック 8話より
ボクのあしあと、キミのゆくさき 8話より

話してくれるまで待つ、と決めた後はその信念を変えることなく、気がかりに思いながらも「いつか話してくれるその日」を信じて瑞希を待ち続けていました。

「正しさの天秤 MEIKO」
サイドストーリー 後編より
祈りの先 願う明日は 8話より
「楽しい午後と見えない未来 東雲絵名」
サイドストーリー後編より

ここまで待つと決めた絵名ですが、思いがけないカミングアウトで「覚悟」が揺らいでしまいました。

自分には覚悟が足りなかったのか、瑞希を受け止める度量が無かったのか、何か掛ける言葉があったはずなのに。瑞希を止める事が出来なかった。絵名の悔しさと自責はユーザーにも伝わってきました。

しかし絵名は信念を曲げない。1度折れたとしても、逃げたとしても、諦めない性格です。決して筆を折る事はありません。自分の事も、相手の事も。

大切な絵、大切なニーゴ、大切な仲間。
その全てを諦める事は決してしない。
諦めてしまったら自分を許せなくなるから。

満たされないペイルカラー 8話より
ボクのあしあと、キミのゆくさき 6話より
Knowing the Unseen 8話より

絵名は自分の責任は自分で背負う事が出来る子です。

絵にも向き合い、覚悟を決めた。そして責任を背負うと父親にも伝えられるほどに自分の"責任"に自信を持っています。

Knowing the Unseen 8話より

今回の件は覚悟を決めた絵名の自責でもあります。
この結果に決して納得はしていないはずです。

夏祭り、鳴り響く音は 6話より

諦める瑞希諦めない絵名。
そんな対照的な2人だから築けた信頼関係。
1度のもつれで崩れるとは思えません。


この先は、どうなるのでしょうか?

瑞希は、絵名に向き合えず待たせています。
そしてまふゆに伝える責任を果たせぬまま
自分とも向き合えずに自責を抱えたままです。

絵名は、瑞希を待ち続けています。
まだ、瑞希の口から何も聞いていないのだから。
瑞希に対する自責も晴らせていません。

次の行動は絵名自身が納得するまで
何度もぶつかっていくでしょう。

そして、瑞希も願っています。
「怒ってほしい」と。

ボクのあしあと、キミのゆくさき 8話より
ロウワー 2DMVより

きっと何回でも繰り返されるでしょう。
もし離れてしまっても、

その度に何回も繋がれるように。

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