【KIC物語部】

【月1本更新!!】キックファクトリー新入社員がオリジナルの短編ストーリーを投稿していき…

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【月1本更新!!】キックファクトリー新入社員がオリジナルの短編ストーリーを投稿していきます。まだまだ拙い文章ですが、修行日記としても暖かく見守ってください!【https://www.kic-factory.co.jp/

記事一覧

タイムマシン

ある日、俺は廃品の山にいつものようにガラクタを投げていると、見たことのない文字が書かれている不思議な機械を見つけた。丸い大きな扉が正面に付いており、ドラム式洗濯…

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【短編】インターネットを知らない彼女

僕の彼女は今どきにしてはめずらしくスマホを持っていない人間で、インターネットをまったく見ない。SNSでキラキラしている女子たちや、「バズる」なんてものには無縁で、…

【KIC物語部】
1か月前
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【短編】すれ違いサプライズ

私と彼は付き合って10年になる。学生時代の青春の思い出も、社会人になってからの生活も、全て彼に捧げてきた。友達よりも彼を優先してきたことは、言うまでもない。そんな…

【KIC物語部】
2か月前
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【短編】天使と悪魔

高層ビルの屋上、あたしは落下防止のフェンスを超えた先に佇んでいた。 「もうこれでいいんだ…」 ふわふわした足取りで前に進んでいく。 とっても景色は綺麗で、遠くまで…

【KIC物語部】
3か月前
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【ご褒美アイス】

今回の案件は自画自賛する訳ではないけれど、思っていたよりも上手に進められたと思う。会社に入って2年。先輩方に言われるより早く対応しお客様の信頼も高まっている。 …

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【街で見かけた看板で】#07

「いま“求められる広告”ってなんだと思います?」 競合のプレゼン中。クライアントの会議室で企画案の説明をするクリエイティブディレクター。 「近年実は、“広告に見…

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【巨大な亀が住む川】

その雄大で広くのんびりした大河には、大きな生き物がいるらしい。らしいと書くのには、目撃者が多い割に、証拠となる写真や動画がなかなか出てこない都市伝説のような話だ…

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【なんて素敵なディスプレイ】#02

すべてのモノにドラマがある。 「どうです?こちらの写真」 「公衆電話ですか。近頃メッキリ減りましたね」 「電話ボックスに、素晴らしい商品ディスプレイがございます!…

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【なんて素敵なディスプレイ】#01

すべてのモノにドラマがある。 「ヒーローとして生きるって…大変だよな…」 「ヒーロー?」 「ほら…あれ」 「あ!定食屋の客引きしてるじゃん!」 「だろ?」 「M7じゅ…

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【街で見かけた看板で】#06

「俺けっこう、こういう洒落の効いた看板、好きなんだよね…」 カフェの入り口に、折りたたみ式の立て看板が出ている。 「何これ?春夏秋冬?」 「知らない?良く見てご覧…

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【なれとります】#04「日々是勉強」

「今回はですね、男性、女性の掛け合いとなります」 「掛け合い…」 「あ、もちろん女性ナレーターさんもお呼びしてあります」 ナレーターというは摩訶不思議な仕事である…

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【二十九、三十】

「水飲めよ」   コンビニの前で今日3度目の嘔吐をした俺に、 蓋を開けたペットボトルを差し出してくるのは小学校からの付き合いの悪友だ   「いらねぇよ。チューハイ買っ…

3

【紫の濡れ衣】

「この季節は紫の花が多くて、私好きだな…」 「…そうなんだ」 彼女と映画鑑賞の帰り道、夕飯のお店を考えながらスマホを見ていた僕は、沿道に植えられた花の色には意識が…

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とあるハサミ③

4人の男が留置場でそれぞれ距離を取りながら佇んでいる 中央に置かれたベンチには両手で顔を覆う、ハサミを振り回して捕まった男   「どうりで皆さんと連絡が取れない訳で…

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【街で見かけた看板で】#05

「なんだよな、努力義務って!」 居酒屋の酒が入り、愚痴も出てしまう。男三人、いま世の中で溢れる自転車ヘルメット問題を語っている。 「オレさ、ここ来る前にヘルメッ…

10

【とあるハサミ②】

マジックミラーの窓越しに警官2人 窓の向こうには取り調べ中の警官と、うなだれて座る男   「今月に入ってからやたらと多いな」   窓越しに取調室の様子を伺いながら一人…

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タイムマシン

タイムマシン

ある日、俺は廃品の山にいつものようにガラクタを投げていると、見たことのない文字が書かれている不思議な機械を見つけた。丸い大きな扉が正面に付いており、ドラム式洗濯機のようだが服を洗えそうにもない。俺の仕事は認可されていない安月給の廃品回収業者で、このガラクタも全て不法投棄しているに等しい物のため、いくら取ったってバレることも怒られることもない。俺はこの機械を持ち帰ることにした。

汗だくになりながら

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【短編】インターネットを知らない彼女

【短編】インターネットを知らない彼女

僕の彼女は今どきにしてはめずらしくスマホを持っていない人間で、インターネットをまったく見ない。SNSでキラキラしている女子たちや、「バズる」なんてものには無縁で、話題の音楽や言葉、スイーツなど、ネットユーザーならばみんな流行りだと知っているようなことを彼女は全く知らない。

けれどネットを見ない分、彼女は様々な知識や文化に日々触れている豊かな人だった。道端でふと見かける植物や花の名前だったり、飛ん

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【短編】すれ違いサプライズ

【短編】すれ違いサプライズ

私と彼は付き合って10年になる。学生時代の青春の思い出も、社会人になってからの生活も、全て彼に捧げてきた。友達よりも彼を優先してきたことは、言うまでもない。そんな私の若干重めな愛をも受け止め、応え続けてくれた本当に大切な存在である。ただ、最近彼の仕事が忙しくなっており、彼は真面目で完璧主義なタイプであるため、体調が心配だ。

「いやあ、新しい案件がトラブっちゃっててさ。」

彼はそう笑っているけれ

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【短編】天使と悪魔

【短編】天使と悪魔

高層ビルの屋上、あたしは落下防止のフェンスを超えた先に佇んでいた。
「もうこれでいいんだ…」
ふわふわした足取りで前に進んでいく。
とっても景色は綺麗で、遠くまでキラキラして見えている。
足元には粒みたいな車のライトがいくつも通り過ぎていく。

ちょっと怖いけれど、ギリギリのところに足をかけてみる。
「本当にできるかなあ。」
恐怖心から若干戸惑ってしまった。

すると突然、顔の両横にボン!とふたつ

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【ご褒美アイス】

【ご褒美アイス】

今回の案件は自画自賛する訳ではないけれど、思っていたよりも上手に進められたと思う。会社に入って2年。先輩方に言われるより早く対応しお客様の信頼も高まっている。

「ということで…」
会社の帰り道、コンビニのアイスコーナーと対峙している。
「ご褒美だもの!」
いつ以来だろうか…すっかり忘れてしまったが、私にとっては高価でちょっぴり贅沢なカップアイス。その何味を買おうかと先程から悩んでいた。
いわゆる

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【街で見かけた看板で】#07

【街で見かけた看板で】#07

「いま“求められる広告”ってなんだと思います?」

競合のプレゼン中。クライアントの会議室で企画案の説明をするクリエイティブディレクター。
「近年実は、“広告に見えない広告”が多いと感じませんか?」
「広告に見えない広告?」
「ステルスマーケティングに代表されるネット世界でぼーっと見ていると実は広告だったみたいな」
「ああ、ありますね。個人が投稿したSNSのように見えて、それが広告だったとか…」

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【巨大な亀が住む川】

【巨大な亀が住む川】

その雄大で広くのんびりした大河には、大きな生き物がいるらしい。らしいと書くのには、目撃者が多い割に、証拠となる写真や動画がなかなか出てこない都市伝説のような話だからだ。

近くには江戸時代の浮世絵の類や美術品も多く展示されており、昔書かれたその川の絵には実は黒く大きな生命の影らしき姿もよく描かれている。

「巨大な亀!?」
「し!大声出すなよ!」
中学校の昼休み、男子ふたりが話をしている。
「兄ち

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【なんて素敵なディスプレイ】#02

【なんて素敵なディスプレイ】#02

すべてのモノにドラマがある。

「どうです?こちらの写真」
「公衆電話ですか。近頃メッキリ減りましたね」
「電話ボックスに、素晴らしい商品ディスプレイがございます!」
「商品、ディスプレイ…ですか?」
「日本酒の紙パックです」
「有名な、どこのコンビニでも見かけるモノですね。でもこれゴミですよね?」
「良く見てください!ワンカップでは無いんです!紙パックなんです!コレをこの場所で開けて飲んで飲み切

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【なんて素敵なディスプレイ】#01

【なんて素敵なディスプレイ】#01

すべてのモノにドラマがある。

「ヒーローとして生きるって…大変だよな…」
「ヒーロー?」
「ほら…あれ」
「あ!定食屋の客引きしてるじゃん!」
「だろ?」
「M7じゅう…なんだっけ?なんか銀河系の遥か遠い所からやって来てさ」
「いわゆる出稼ぎなワケだ…やっぱり、家族とか多いと稼ぎ頭は大変なんだろうな…」
「怪獣が現れれば活躍の場もあるだろうけれど、なんだな…最近では、街とか人間の暮らしを壊してし

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【街で見かけた看板で】#06

【街で見かけた看板で】#06

「俺けっこう、こういう洒落の効いた看板、好きなんだよね…」
カフェの入り口に、折りたたみ式の立て看板が出ている。
「何これ?春夏秋冬?」
「知らない?良く見てご覧よ」
「春夏秋…あれ、春夏冬…ナカ…?何これ?どういうこと?」
「想像力ないなあ…もう一回読んでご覧よ」
「春・夏・冬・ナカ…間違いじゃないの?」
「わかんない?」
「秋…秋ナカ…秋が無い…秋ない!」
「だから!」
「商い中!」
「洒落て

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【なれとります】#04「日々是勉強」

【なれとります】#04「日々是勉強」

「今回はですね、男性、女性の掛け合いとなります」
「掛け合い…」
「あ、もちろん女性ナレーターさんもお呼びしてあります」
ナレーターというは摩訶不思議な仕事である。ただ紙に書かれた言葉を音にするだけではなく、時には声だけでお芝居をしたり、書かれた言葉をメロディーにして歌い上げたり、その1枚のナレ原からは想像できない多くの可能性を秘めているという、普通の感覚では理解しがたい職業だと思う。
「アハ…で

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【二十九、三十】

【二十九、三十】

「水飲めよ」
 
コンビニの前で今日3度目の嘔吐をした俺に、
蓋を開けたペットボトルを差し出してくるのは小学校からの付き合いの悪友だ
 
「いらねぇよ。チューハイ買って来てくれよ」
「まだ飲むのかよ」
「今全部出しちまったから、リセット状態。ほぼ素面。あぁ~明日バイト10時から
なのにぃ~。お前明日は?」
「朝からびっちりミーティング。まぁ夕方くらいには落ち着くから早めに切り上げて爆睡すると思う」

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【紫の濡れ衣】

【紫の濡れ衣】

「この季節は紫の花が多くて、私好きだな…」
「…そうなんだ」
彼女と映画鑑賞の帰り道、夕飯のお店を考えながらスマホを見ていた僕は、沿道に植えられた花の色には意識が行かなかった。
「だって、紫陽花とかさ、藤の花とか、菖蒲とか…」
「ああじゃなくて、紫色好きなんだって方」
「そうね、紫って落ち着いていて好きかな」
「欲求不満なの?」
「は!?なんでそうなるの!?」

彼女は一気に怒り出した。怒りっぽい

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とあるハサミ③

とあるハサミ③

4人の男が留置場でそれぞれ距離を取りながら佇んでいる
中央に置かれたベンチには両手で顔を覆う、ハサミを振り回して捕まった男
 
「どうりで皆さんと連絡が取れない訳ですね・・・銃も刀も弓も、どうして剝き出しで持ち歩いてるんですか・・・」
 
ハサミの男は自分以外の3人に話しかける
一番奥で不貞寝している男が反応する
 
「そういうお前だって、ハサミ持ってて捕まってるじゃないか」
「私はちゃんと刃渡り

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【街で見かけた看板で】#05

【街で見かけた看板で】#05

「なんだよな、努力義務って!」
居酒屋の酒が入り、愚痴も出てしまう。男三人、いま世の中で溢れる自転車ヘルメット問題を語っている。

「オレさ、ここ来る前にヘルメットかぶって、フラフラ走る高齢男性見かけたのね…」
勢い先行で呂律が怪しい。
「それがさ…白い防災用のヘルメットだったんだよね…自転車用のヘルメットじゃないワケよ!」
「俺もそんなの見かけた!工事現場の作業着オジサンが黄色いヘルメットカブっ

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【とあるハサミ②】

【とあるハサミ②】

マジックミラーの窓越しに警官2人
窓の向こうには取り調べ中の警官と、うなだれて座る男
 
「今月に入ってからやたらと多いな」
 
窓越しに取調室の様子を伺いながら一人の警官が話す
 
「先週は銃、その数日前には刀、その前はボウガンだっけ?」
「弓、でしたね」
「おっかない世の中だよ。そんな凶器を平然と持ち歩いてる輩がこんな短期間で何人も。日本の平和信神話はどこ行ったんだか・・・で、今日は?」
「ハ

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