もうひとつの序文
生まれた町で50年商店を営んで辞めた人がいた。
子どものころ出会った好きなものをずっと続けて仕事にした人がいた。
28歳で陶芸を始めた人がいた。地元に帰ってきた人、上京した人がいた。
取り組んでいたことができなくなってしまった人がいた。
家族との関係を見直す人がいた。
自分の持つものでお店を始めた人がいた。
これは、誰の人生だろう。
ここで、どうやって生きていこう。
誰も、自分の舟を操縦してくれはしない。
自分も、他人の舟の進む先を変えることはできない。
舟は、自分でこがなくてはならない。
自分の舟は、みんな持っていて、いろいろな形で存在する。
積み重ねた行動が、時間が、オールとなり風となり、舟を進ませる。
それは、つくって生きる、第一歩。
自分の舟をこぐことで、出会える人や一緒にできることが生まれる。
急がなくていい、焦らなくていい。「つくりかた」の動画を見なくていい。
パラパラと紙をめくって、きらりと光る言葉を、景色を、背中を見つければいい。
少しだけ立ち止まって、今の自分の中にあるものを見つめればいい。
身近なところに、ヒントはたくさん転がっている。
・・・・・・
「なわない 創刊号 ~自分の舟をこぐ~」の巻頭には、「自分の舟をこぐ」ことについて私が書いた散文を載せました。この雑誌をつくった思いも織り交ぜながら。
上の文章は、実際の本には載せていないものです。ふと、雑誌をつくるまでにたくさん書いたwordを見返していたら出てきたので、載せてみました。他にも、自分の中で整理するための物語風の文章があったり、寄稿を依頼するとき用の企画書が何枚もあったり……雑誌づくりが進みだす前は、何度も私の中の言葉の泉を掘り返しては、今はこの水だ!と救い上げて、なんとか紙の上にとどめる…の繰り返しをしていました。今後役に立つかも、という材料づくりでもあり、本当は自分が何を考えているのか?に立ち返るための作業でもありました。
2冊目をつくりだす「前」である今、また自分の頭の中に集中して、言葉を出し始めたいなと思っています。日々の生活で人と接することの多い私は、どんどん意識が外に向いていってしまうのです。それももちろん大事なことですが……間に自分の足元に戻ってくる時間をしっかりつくって、自分の舟を育てていこう。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?