人を中心とした経営 |これからの時代に求められる組織のあり方とは
「スタッフ一人ひとりの居場所となる職場をつくる」
2024年の新年、代表の円市さんは組織の未来を見据えて、その決意を語りました。
そして今、人事戦略の強化、建設事業への参入、海外人材の受け入れ検討など、その言葉は確かな歩みとなって、きぼうグループの新たな物語を紡ぎ始めています。
「利益だけを追求するなら、もっと効率的な経営もできたかもしれません。しかし、私は『人』を中心にした組織の成長を選びました。たとえ失敗があっても、それを共に乗り越え、共に笑い、感動を共有できる。それこそが会社の本当の強さだと思うからです」
きぼうグループがめざす「人を中心とした経営」。その実現のために、円市さんは具体的にどのような取り組みを行っているのか。そして、なぜそこまで「人」にこだわり続けるのか。
今回は、円市さんが描く「人を中心とした経営」と、その背景にある想いを詳しく伺いました。
[取材・執筆・校正]
株式会社ストーリーテラーズ 栗田加奈子
スタッフの未来を創作することが、会社の未来を創る
「会社の未来は、そこで働く一人ひとりの未来と共にある。だからこそ私は、人と共に成長する経営を選んだんです」
円市さんは、きぼうグループの事業の本質について、こう続けます。
「私たちの仕事は、介護であり、調剤薬局であり、人の生活に直接関わるものです。だからこそ、関わる人全てが生き生きと働いていなくてはならない。スタッフが輝いていれば、その想いは利用者さんにも伝わる。利用者さんが生き生きとすれば、また新しいスタッフが集まってくる」
そして、最近の若い世代との対話から気づいたという、ある変化について語ります。
「最初は給与が目的で入社する人もいる。それでいいんです。条件を重視する『ライスワーク』(生活のための仕事)であっても、やがて仲間や利用者さんとのつながりを感じ、仕事が『ライフワーク』(生きがいとしての仕事)に変わる瞬間が訪れます。その変化を支える環境をつくることこそが、経営者としての私の役割だと考えています」
給与という「ライス」から、生きがいという「ライフ」へ。その自然な変化を信じ、支え導いていく――。円市さんの経営哲学には、そんな温かな想いが込められています。
「この好循環を作るためには、スタッフが安心して働ける環境を整えることが大切です。例えば、研修を通じて新たなスキルを身につけたスタッフが、現場で自信を持って働く姿が増えていく。その結果、利用者さんとの関係もさらに深まり、新しいスタッフの定着率も上がっていく。そんな組織づくりこそが、これからの時代に求められる経営のあり方だと信じています」
実践から生まれる「人を中心とした経営」
「理念を語るのは簡単です。大切なのは、その想いを形にすること」
そう語る円市さんが最初に取り組んだのが、採用の仕組み改革です。紹介会社での経験を持つ人事課長を迎え入れ、採用プロセスを一新。面接後のフォローも徹底し、応募者との対話を深めることで、共感を大切にしたマッチングを実現しています。
「これまでは『人材を紹介してください』という一方的なやり取りでした。でも今は違います。きぼうグループはこういう会社で、こういう想いを持って経営している。その価値観に共感してくれる方と一緒に働きたい。そんな本質的な対話ができるようになりました」と円市さんは語ります。
この取り組みにより、スキルだけでなく、会社の文化や価値観に共感する人材との出会いが増えたと嬉しそうに話してくれました。
採用の仕組みを整えると同時に、円市さんが力を入れたのは人材育成でした。「人が育つ環境をつくるのは経営者です」と強調する円市さんは、年間1000万円以上を研修に投資しています。
「単なるスキルアップだけをめざしているのではありません。研修を通じて一人ひとりが成長を実感し、その経験が次の成長への意欲に繋がる。そんな好循環をめざしているんです」
円市さんのその想いは、日々の現場で実を結んでいます。
「先日、ある施設を訪れた時のことです。案内してくれたスタッフは、入居者さんと笑顔で楽しそうに話していました。そこで、長く勤めているそのスタッフに『どうしてこの仕事を続けているんですか?』と聞いてみたんです。
彼女は少し照れくさそうに、『入居者さんが大好きなんです!もちろん大変なこともありますけど、入居者さんの笑顔を見ると、そんなこと全部吹き飛んでしまうくらい嬉しくなるんです』と話してくれました。その瞬間、なぜこの施設が入居者さんの笑顔であふれているのか、その理由がよくわかりました」
こういった現場の姿や会社の想いを、より多くの人に届けたいという考えから、円市さんは1年前にnoteでの発信を始めました。
「募集要項やホームページでは、仕事の内容は伝わっても、その先にある可能性までは伝えきれないと感じていました。入社のきっかけは給与かもしれませんが、働く中で『ここにいたい』と思える瞬間が訪れる。その変化の可能性も含めて、私たちの価値観を深く伝えていきたいのです」と語っています。
そしてこの取り組みは、採用活動にも好影響を与えています。
「noteでは、ホームページでは伝えきれない価値観や想いを丁寧に綴っています。その結果、応募者からは『共感した』という声が増え、採用後のミスマッチも減少しています」
人材育成、現場での実践、そして価値観の発信。それぞれの取り組みが響き合い、「人を中心とした経営」は着実な歩みを進めていると、円市さんは穏やかな笑顔で話してくれました。
人と共に成長する組織をめざして
建設事業への参入や海外人材の受け入れなど、きぼうグループの挑戦は続きます。そして、その一つひとつに、「人」を大切にする円市さんの想いが込められています。
「建設事業は物を作る仕事ですよね。でも、本質のところには『人』がいる。土地にはそこで過ごした人々の歴史が刻まれ、建物にはその場所での思い出が詰まっている。私たちが手がける建設事業も、単なる物づくりではなく、そこに住む人々の未来を形作る仕事なのです」
海外人材との関わりについても、単なる人手不足の解消ではないと円市さんは言います。
「多様な価値観を持つ人たちと共に成長できる組織を作りたい。そのために、まずは現地に足を運び、その国で暮らす人たちの生活や考え方に触れていきたい」
また、今後はCOOの設置も検討されるなど、組織基盤の強化も進めていくとのことです。しかし、どれだけ事業の幅を広げても、円市さんの根底にある想いは変わりません。
「人は自分で幸せを選べるけれど、喜びは人との関わりの中で生まれる。私はこれからも、一人ひとりが喜びを感じられる組織であり続けたい。それが私のめざす『人を中心とした経営』なのです」
そう語る円市さんの表情から、きぼうグループの未来への期待が伝わってきました。
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久しぶりの円市さんのインタビューとなりました。今後も定期的に円市さんの想いやスタッフインタビューを掲載していきます。ぜひ、次回の更新もお楽しみに!