課題は何でしょう?
【地方企業のためのPR・広報戦略】課題解決と企業出版 その2
企業活動は、その企業が掲げた「理念」の実現に向かって、立ちはだかる課題を一つひとつ解決していくことの連続のようなものです。
例えば、売上をアップしたい、ブランド力をつけたい、従業員のモチベーションを高めたい、販売エリアの拡大、事業の承継、新規事業の立ち上げ、周年記念事業の計画、リクルート対策……どれもこれも重要な課題ですが、企業が存続していくためには一つひとつ解決策を考え、実践していかなければなりません。
具体的には、売上増なら、販売店の拡大、広告展開、ポイントカードの導入、POPの活用……。ブランド力の向上なら、イベントの冠(協賛)、デザインの統一などがあります。
このような課題の解決のためには、どういった方法が考えられるでしょうか。
通常業務の延長線上にあるような課題なら、社内にプロジェクトチームをつくり、問題解決の水先案内人になってもらうこともあるでしょう。
しかし、新規事業の立ち上げや広告宣伝などは、外部のコンサルタントに協力を仰いだり、マスメディア、広告代理店、PR会社など専門の会社に仕事を委託するケースも少なくないはずです。
また、大企業なら社部にある専門のセクションで解決していくことができますが、中小企業では、そういった専門性の高い分野、また通常業務とは異なる日常的ではない分野では、外部の専門分野を巻き込んで問題解決するのが一般的です。
なかでも、企業に関する本をつくることは、企業にとっては通常業務にはほとんどないイレギュラーな業務です。外部に依頼しようにも、どこにどう依頼していいかもさえも見当がつかないこともあります。
東京ならビジネス中心の出版社はたくさんあります。
ダイヤモンド社、日経BP社、プレジデント社、中経出版、かんき出版などなど…。印刷会社でも、社史などを専門にやっているところ、セクションをもっているところがあります。社史を専門に編集・制作を請け負っている制作会社もあります。
あなたの住んでいるまちでは、いかがでしょう。ビジネス書の出版社どころか、出版社さてない地域が日本にはたくさんあると思います。
【事例①】
倉敷市片島に本社を置くカモ井加工紙株式会社、は大正12(1923)年に創業し、2013年2月に創業90年を迎えた会社です。現在の鴨井尚志社長(写真)は創業者・鴨井利郎氏の孫にあたり、4代目の社長です。
今から4年ほど前、90年、100年を見据えて、会社の記録を残しておかなければということになりました。
ところが、だれに頼み、何から手を付ければいいのか見当がつかず、時間だけが過ぎて行くという状態でした。
たまたま、倉敷ロータリークラブでの講演に招かれた私は、そのクラブで世話役をしていたメンバーの一人だった鴨井社長と話す機会がありました。
「数年後には90周年を迎えるので、社史の準備をと考えているのですが、どこから手をつけていいのか…」というのが、鴨井社長の悩みでした。
「きっとお手伝いできることがあると思いますよ。近いうちに一度お邪魔します」といってその場は別れました。
そのころ、ぼくは「おかやまビジネスライブラリー」という、新しい出版企画にとりかかったところでした。
これは、地元の企業、特に長い歴史をもつ老舗や独自のビジネスモデルで岡山から国内外へ飛び出して行くような企業のドキュメントを、シリーズで出そうというものです。
地域企業の歴史を残しておくことは、その地域の産業の歴史を記録していくことになります。企業にとっても、自社のことが本になり、多くの人の目に留まることは、PR 効果も高いはずだと。
これが『粘着の技術?カモ井加工紙の87年』という本のスタートです。
社内報や商品のカタログ、創業45周年記念でつくった記念誌、そして新聞や雑誌の切り抜きなどをもとに大まかな流れを作り、鴨井社長をはじめ主要スタッフ、OB社員らにインタビューをしてまとめた一冊です。
ライターと一緒に社長へのインタビューを重ね、資料を読み込み、取りかかって、出来上がるまで1年半以上かかりました。
カモ井加工紙のように、企業出版はもちろん通常の社史編纂などでも、相談できるようなところは思いつかないのが、地方の現状です。
広告代理店、印刷会社とのつきあいもあるので、それとなく尋ねたらしいのですが、社史の原稿制作から編集といった作業の場合、どちらも専門分野ではないので、具体的な形にはならなかったようです。