目的は社員教育に
【地方企業のためのPR・広報戦略】課題解決と企業出版 その10
10回シリーズでお届けしている「地方企業のためのPR・広報戦略」。本日が最終回です。
企業の課題解決のために企業出版はどのような役割を果たすのでしょうか。
社史編纂、企業出版に関してよくある質問は、
①本を出したいが、どこに頼んでいいのか分からない
②作っても売れないでしょう
③作るからには「売れる本」にしたい
④電子書籍は出来るの?
⑤だれかに書いてもらいたい
⑥どんな資料が必要なのか分からない
⑦完成までにどのくらい時間がかかるか
⑧費用、お金の目安を教えてほしい
⑨資料が残っていなくてもできる?
⑩編集委員会はどうする?
ここで大切なことは、社史を出版する目的は何か? ということです。
私は、社史編纂の目的は「社員教育」にあるのでは、と話しています。
創業者の精神を伝え、継承するためにも社史は必要です。
「感情」だけでは人(従業員)は動かない。
「感動」が人を変え動かす力がある。
かつて社長が本を出すといえば、トップの自己顕示欲と思われたりもしましたが、現在では企業の経営戦略の一環として「出版」を考えるケースも多いようです。大切なことは、自己顕示欲むき出しの、非客観的な記述がプンプンするような本はかえってマイナス。自社の企業活動をちゃんと見直す機会としてとらえることが必要です。
社員が読んで会社のことを深く知り、地域社会にとって企業がどう役に立っているのかがアピールできるものに編集する、そして企業にとって、地域社会にとって役に立つ本につくりあげることが大切なのではないでしょうか。
ここで問題なのが、地方の企業の場合、身近なところにビジネス書を扱う出版社がないこと。地域出版自体、数が少ないうえに、扱うテーマは郷土史や民俗、観光などが主流で、企業史などはあまりありません。
さらに、地域出版はこだわりやテーマにこだわるところが多く、企業出版などはあまりやりたがらない場合もあります。
吉備人出版としては、こうした企業の歴史は、地元の産業の歴史として位置づけ、積極的に出版テーマとして取りくんでいます。
地方の印刷会社への提言
話しが少しそれますが、日本の出版社数はこの数年減少気味です。
なかでも地方の出版社はその経営維持が困難とおもわれている側面もあり、新規参入は多くありません。
確かに出版の流通や印刷・製本のインフラの面で地方はハンデキャップがあります。
しかし、逆に考えれば競争相手が少なく、掘り起こせば需要は大きいのではないでしょうか。
したがって、印刷会社の方が本書を読んでくださっているのなら、ぜひ地域の企業を対象にした地域出版に取り組むことをお勧めしたいと思います。
印刷会社は、電子化などでますます紙への印刷は減少していっているうえに、きびしい価格競争のなかで、特色、付加価値を求められることが多いと聞きます。
こうしたじり貧状態で、指をくわえて見ているだけでは、事態の打開は難しいでしょう。ならば、多少のリスクを抱えても、出版部門をテコ入れして、よくある自費出版事業だけでなく、積極的な企業出版にチャレンジすることは、より幅広い新しい顧客の獲得につながるだけでなく、社内のモチベーションアップにもつながります。
地方での企業出版は未開の地といっても過言でははありません。
企業の出版活動というと、これまでは東京を拠点としたビジネス書を得意とする出版社が、大企業を相手に手がけてきた手法でした。
最近では、そうした東京の出版社が地方を拠点にした企業に対しても、アプローチをかける動きが出てくるようになりました。
本の流通など、出版のインフラが十分整っているとはいえない地方において、販売促進や社員の意識改革、リクルートや企業イメージの向上など、企業が抱えるさまざまな課題の解決に活用するためにはどうすればいいのでしょうか。
本稿は、それを考え実践に移すまでのきっかけになることを目的としてまとめたものです。
お読みくださり、ありがとうございました。