「帰依三法」を学ぶ(7)

【仏の道:遠望・近見】 (152)

 「帰依三法」を学ぶ(7)


   世尊在世に、二十六億の餓龍、ともに仏所に詣し、
   みなことごとくあめのごとくなみだをふらして、まうしてまうさく、

 釈尊が世にありし時に、二十六億の飢えた竜が、ともに仏の所にやって来て、皆、雨のように涙を降らせて申し上げた。

   「唯願はくは哀愍して、我を救済したまへ。
   大悲世尊、我等 過去世の時を憶念するに、
   仏法の中に於て、出家することを得と雖も、
   備さに是の如くの種々の悪業を造れり。
   悪業を以ての故に、無量の身を経て三悪道に在り。

   亦余報を以ての故に、生じて龍の中に在りて極大苦を受く。」

 「どうか哀れみを垂れて、我等をお救いください。大慈悲の世尊よ、我等は過去世を思い起こすと、昔、仏法の中に出家することが出来たけれども、皆このように色々な悪業(悪報いを受ける因縁)を作りました。この悪業のために、生まれ変わり死に変わり無量の身を三悪道(地獄、餓鬼、畜生)の中に送りました。また残りの報によって竜の中に生まれ、極大の苦を受けています。」と。

   仏 諸龍に告げたまはく、
   「汝等 今 当に尽く三帰を受け、一心に善を修すべし。
   此の縁を以ての故に、賢劫の中に於て、
   最後の仏に値ひたてまつらん。名づけて楼至曰ふ。
   彼の仏の世に於て、罪 除滅することを得ん。」


 仏は、竜たちに話した。
「お前たちは、今から皆 三帰(仏陀 仏法 僧団への帰依)を受けて、一心に善行を修めなさい。この因縁によって、お前たちは賢劫(千仏の賢者が出現するという現在の世界)の中で、最後の仏に出会うことであろう。その名を楼至といい、その仏の世で、お前たちの罪は消滅するであろう。」と。

   時に諸龍等、是の話を聞き已りて、
   皆 悉く至心に、其の形寿を尽すまで、各三帰を受く。」


 その時に竜たちは、この話を聞き終わると、皆 真心でもって、その命の尽きるまで、おのおの三帰を受けた。」

   ほとけみづから諸龍を救済しましますに、
   余法なし、余術なし、ただ三帰をさづけまします。
   過去世に出家せしとき、かつて三帰をうけたりといへども、
   業報によりて餓龍となれるとき、余法のこれをすくうべきなし。
   このゆゑに、三帰をさづけまします。


  ここで仏は、自ら竜たちを救済されるのに、ほかの方法や術ではなく、ただ三帰を授けられたのである。この者たちは、過去世で出家した時に三帰を受けていたが、悪業によって飢えた竜となった時には、ほかの法でこれを救えるものがない。そのゆえに、仏は三帰を授けられたのである。

   しるべし、
   三帰の功徳、それ最尊最上、甚深不可思議なりといふこと、
   世尊すでに証明しまします。衆生まさに信受すべし。

 このことから知りなさい。三帰の功徳は最尊 最上であり、甚深 不可思議であることを、世尊が既に証明されている。これを世の人々は、まさに信じ受け取るべきである。

   十方の諸仏の名号を称念せしめましまさず、
   ただ三帰をさづけまします。
   仏意の甚深なる、たれかこれを測量せん。


 仏は竜たちに、諸仏の名号を称え念じさせようとなさらずに、ただ三帰を授けられた。この深い仏の心を、誰が推し量ることが出来ようか。


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