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死神
数日前、娘の同級生のお母さんが亡くなった。突然のことで、おそらく心筋梗塞とのこと。
個人的な付き合いはなかったが、役員をしていた方なので、顔はわかる。おそらく同年代か少し上、50歳にもなっていないだろう。自分の身近でこのような突然死があったのは初めてのことで、聞いた時は本当に言葉が出なかった。
上の子は中2、下の子は小5。まだまだ母親のことが必要な年頃だし、母親との暮らしが当然に続くと思っていただろう。旦那さんも、まさかこんなに早くパートナーを失うなんて、想像だにしていなかったはず。ご本人だって、さぞかし悔しいだろう。
こんなにもまだ必要とされている命が、あっさりと奪われる。
一方、70過ぎた自分の両親を考える。
父は私が高校生の時に倒れて、以来、腎不全で週3回の透析を受けている。その後も何度か危ない時があったが、透析患者は長生きできないと言われたにも関わらず、結局もう25年以上だ。
いまだに自分の店には顔を出しているし、最後に会った1年2ヶ月前、社長の座はまだ弟には譲らないと息巻いていた(そんなことはどうでもいい。実質的な経営権の話をしているのだし、結局は弟にあげるんでしょ?という私の意見は、ついぞ理解されなかった)。大好きな外食で脂っこい中華やフレンチを食べ、旅行もする。
母は事あるごとに「パパは長く生きられないから」「かわいそうなんだから」好きにさせてあげて、と私の口を封じてきた。
遅ればせながら、私は数年前に気付いた。悪意はなくても、こんなん、死ぬ死ぬ詐欺みたいなもんだ。
最後の話し合いが終わった時、私の中ではもう両親は亡くなった。いや、正直、むしろ本当に亡くなってくれていたらどれほどマシだろうか、と考える。最悪なことを思っているという罪悪感も、消えつつある。
彼らが生きれば生きるほど、私が彼らを憎む期間が長くなるだけなので。
こんなにも実の娘に疎まれているだけでなく、あんな人間性なので、いなくなって悲しむ他人もいないだろう。もちろん、厚顔無恥な弟家族も。
やはり、神様なんていやしない。