失敗作
長年、入眠障害を患っている。
昼間は楽しく過ごせていても、夜になるとストンと心が落ちてしまうので、睡眠導入薬は毎晩飲んでいる。
薬なしで過ごせた時期もあったのだが、結局舞い戻ってしまった。
自分の家庭には、本当に何も不満はなく、安定した生活と、優しい夫と娘がいるのに。そう思うたび、家族には申し訳ない気持ちでいっぱいになる。
病院に行くほどの不眠に悩まされたのは、娘がまだ幼児だった時期だった。振り返ると、母からあれやこれや育児に口を出されていた頃と重なる。その後、夫の転勤で、生まれて初めて東京を出て、地方で核家族として暮らした。そうしたら、いつの間にか眠れるようになっていた。
東京に戻って来て、また眠れなくなった。東京は慣れていて暮らしやすい場所だし、仲が良くて頻繁に会える友人もいる。場所のせいではない。
母にポロッと「心療内科に行っている」と伝えたことがある。
その頃はまだ、最後の最後ではわかってもらえると思っていた。
しかし母は、ほとんど叫ぶような声で言った。「どうして!」
そして、少ししてから、暗い顔をして「どうして、そんなふうになっちゃったのかしらね」と呟いた。
ああ、いつもと同じだった、言わなきゃ良かった。私は激しく後悔した。
母は、そうなのだ。私が彼女の意に沿わない行動をした時、まず顔をしかめて叫び、非難し、それから「ママの育て方が悪かったのかしらね」と落ち込む。いや、落ち込んだ仕草をしてみせる。
「ママの育て方が悪かったのかしらね」は、「あなたは失敗作だ」の意訳である。
若い時はそれでさらに反発したが、結局はそれなりの大学をストレートで卒業している私、優しいと思う。親は全て自分達の手柄だと言うだろうし、これでも不満だらけなんだろうけど。
失敗作だと言われ続けた人間の自己肯定感がどう育つかなんて、言わなくてもわかるよね。
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