第5話»食事の咀嚼
12時15分
昼休み一緒になったイマドキは
スマホ片手に持ち、器用に昼弁食べている。
お店の休憩所はシンプルながら広い。
突然の来客に備えて外食はしなくても良いように
一通りの調理器具は揃っていて、冷蔵庫には具材が
山程入っている。
料理が得意のスタッフも居て
頼めばササッと短時間で美味しいモノが出てくると言う仕組みまであった。
そんな中イマドキはというと。
口でパクパク、スマホをトントン。
パクパクトントンパクトントン。
とてもリズミカルに口に運んでいた。
しかしよく見ているとイマドキは
噛む回数が少なかった。
2、3回で飲み込んでいる。
イカンイカン。これは指導しなければ。
奈美はそっとイマドキの前に
自分のスマホ画面を向けて置いた。
「何ですか? 先輩、それ」
「メトロノーム♫音よ」
奈美が見せた動画映像は
カチカチと正確にリズムを刻んでいる。
「これに合わせて咀嚼してみ」
イマドキは言われた通りに
パクパクと咀嚼し始めた。
素直な子だわー(^^)
メトロノーム音を95BPM、20回毎に
ベルが鳴るようにセットした。
イマドキが咀嚼しながら奈美を見ている。
いつまで噛むのだろうと言いたげだ。
チーン♫ハイ(^^)飲み込む。
待ってました、と言わんばかりに
イマドキは咀嚼したモノを喉に流し込む。
そして、はぁ~と息を吐き「先輩の事だから
何か意味が有るんですよね。これ」
モッチ、ロン。
奈美はイマドキの咀嚼回数が
少ない事を指摘した。すると
エラが張るのが心配で
すぐに飲み込んでしまうと言うではないか。
咀嚼が原因でエラ張りするには
相当な硬いモノをガリガリする必要がある。
咀嚼の原因はいくつか有るが
正しい噛み方をしていない場合が多い。
顎の付近には咬筋と言うモノがあるのだが。
正しい噛み方は、この咬筋を使うだけでなく、
口輪筋・舌筋・頬筋など複数の筋肉を
使うと良いらしい。
つまり筋肉のバランスが悪いと筋肉疲労が
たまりエラ張りがしやすくなって
しまうのだろう。
それを防ぐには、フェイス部分の
筋肉をトレーニングが
必要となってくる。
そんな話をイマドキにした。
「先輩、エラ張りの心配は解消しましたが
多く噛む利点も有るんですよね」と
イマドキが聞くので、奈美は続けて
話すことにした。
唾液には消化酵素が含まれていて
咀嚼によって効果が上がるから
なるべく噛んだ方が良いのだ。
それによって胃の消耗を助けることにも
なるからさ。
そうそう、唾液中には乳酸菌成分も有るのだよ。
「へぇ~」