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令和4年11月の朝礼

 全国の地方公務員のみなさん、おはようございます、今日から11月、今年も残すところ2か月を切ることになりました。昨日はハロウィンでしたが、韓国の将棋倒し事故もあり、今年は渋谷の雑踏を見に行きませんでした。

 20年前に起きた明石市民夏まつり花火大会では死者11人負傷者183人を出す群衆事故がありましたが、兵庫県警が事故から1年後、これを教訓にした再発防止のためのマニュアルとして「雑踏警備の手引き」を編集しています。手引きは、軽薄性、無責任性、興奮性、暴力性、直情性、付和雷同性という群集心理の特徴を理解し、群衆の行動特性に着目した規制方法が必要だとします。コロナ規制が明けつつあるなかイベントが復活してきていますが、手引きでは主催者に対して「万が一死傷者が出る等の事態が発生した場合には、刑事及び民事上の責任を追及される恐れがある」と責任の自覚を強く求めています。安倍元総理銃撃事件では事前の警備計画に不備があったとされますが、イベントにおいても雑踏警備計画の策定が求められます。全国のイベントに関係する職員の皆さんは一度目を通して群衆事故の恐ろしさを再認識しておいてもよいと思います。ちなみに手引きは県警のHPで公開されています。

 さて、先月19日に政府は歳出ベースで過去最大となる55.7兆円規模の新たな経済対策を閣議決定しました。今年に入っては「コロナ禍における『原油価格・物価高騰等総合緊急対策』」に次ぐものですが、4月の緊急対策の成果も実感できないうちに新たな経済対策を投入しなければならないところにわが国が置かれている厳しい真実が見えるのではないかと思います。

 ちょうど今朝の日本経済新聞が、縦割り行政を打破して官邸機能の強化を行うと謳った平成13年1月の中央省庁等改革で実現した「官邸一強」が内閣官房の肥大化を招き、官邸に縦割りを出現させることで逆に官邸が空洞化しているという様子を描き出しています。官高政低という官僚主導で動いてきた戦後わが国の政官関係を、民意を背景にした政治主導に切り替えるための中央省庁等改革でしたが、内閣人事局の強大化と権限乱用、その権限を掌握する政府与党内へのカルト教団侵入による政に対する国民の信頼失墜、その一方での新型コロナウイルス感染症のまん延やロシアによるウクライナ侵略戦争と東アジアの国際環境の不安定化、円安や物価高などの経済課題と国民生活の疲弊というように、波状で迫ってくる未曽有の危機に対する度々の管理不全に国民の不安は高まっています。

 先月25日に開かれた国と地方の協議の場において、岸田総理は第2次補正予算案に地方交付税の増額を盛り込む方向で協議していると明かしましたが、先月28日に閣議決定された総合経済対策では総額が5000億円程度の増額となることが明らかとなりました。これは地方独自の地域活性化策等の原資になる一方で、受ける側の地方自治体にとっては、ウィズコロナで事務の手間が増え対応する職員が不足していたり、円安打破のためにいつ政府日銀が金利政策を変更してくるかわからない状況で将来に高金利負担が予想される起債を思い切って当てにくかったりして消化しきれないのではないかなというような心配もされるところです。

 そうはいっても、国会も中央政府も機能不全の状況では、地方自治体がしっかりしなければ住民生活は守れません。今朝の連ドラ「舞いあがれ!」では東大阪の町工場で働く岩倉浩太が「一歩ずつ進んだらいつかは山の頂上に着ける」と主人公の舞に語り掛けるシーンがありました。中小企業のねじ工場のおっさんが人工衛星打ち上げにチャレンジするサブストーリーが同時進行しており、1週完結でもなく突然のドタバタでもない主人公とその周囲の人たちが日常を通して悩み苦しみ喜び合って成長していく姿を描く朝ドラの王道であることを象徴するセリフでした。「ちむどんどん」とは比べ物にならないつくりになっています。そして、地方自治体も永続して成長するもので、どこかで区切って物語をなかったことにしたり、ドタバタを投入して無理やりストーリーを進めるようなことは許されません。

 危機の時代においてこそ、地方自治体には日常を日常のように進め、一過性のお祭りではなく継続した住民福祉の向上に努めるという役割が求められているということを心に刻みながら、「ひとつずつ事務をこなしていったら全体がよくなる」と考えてなにわバードマンのようにチームワークよく日常業務にていねいに励んでいただきたいとお願いし、今月の朝礼を終わります。

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