シネマチック桃太郎
(昔々あるところにおじいさんとおばあさんがいました。)あれはそう、海岸で拾った巻貝の中の砂つぶを一つ一つピンセットで取り出すかのように、本当に気が遠くなるような月日を隔てた過去のある日のこと。使い込まれたナイフのように鈍い銀色を放つ白髪の割に、どこか若々しさの滲んだ笑みを口元に浮かべる老人の男と、そんな男が醸し出す未だに瑞々しい少年らしさに対し愛おしさと諦めが混ざったような視線を向ける妻である女、そんな老夫婦がこの一連の、奇妙な勇気をくれる物語の扉を意図せず開いてしまうことに