【こんか漬けとお酒】「常きげん 山廃仕込純米酒」
今回は石川県の伝統的な保存食である魚のぬか漬け「こんか漬け」と、それに合う石川県の地酒のお話です。
「常きげん」山廃仕込純米酒
今回紹介するのは石川県加賀市の鹿野酒造の「常きげん」、その中の山廃仕込純米酒です。
まずは簡単に蔵元の紹介、鹿野酒造は霊峰白山を望む加賀の地で、文政2年(1819年)に創業しました。「常きげん」という名は、ある年の大豊作を村人たちと祝う席で、4代目当主が『八重菊や酒もほどよし常きげん』と一句詠んだことにちなんだものです。
鹿野酒造が代々受け継いできたのは、「人、米、水へのこだわり」という基本です。
水…鹿野酒造の酒造りに欠かせない軟水の仕込み水は「白水の井戸」のものです。古来より蓮如上人ゆかりの井戸として、飲み水としてはもちろん、広く生活水として親しまれてきたこの水は、いにしえからこの地にずっと湧き出ていて、鹿野酒造は大切に守り続けています。
米…「白水の井戸」から湧き出る霊峰白山からの伏流水を引き、恵みあふれる加賀平野の田んぼで育てる山田錦。 鹿野酒造の酒蔵に一番ふさわしい酒米を知るために、自社の田んぼで自分たち自らの手で米作りを続けています。
そして人…『酒造りの神様』として、その名を全国の日本酒の関係者に知られる農口尚彦氏ですが、農口氏がこれまで在籍していたのが、ここ「常きげん」の醸造所である鹿野酒造です。 現在は、その農口杜氏の薫陶を受けた蔵人たちが、農口流を頑なに守り、より旨い酒を目指し、日夜、仕込みに励んでいます。
さて、肝心のこのお酒の話ですが、よく目にする商品の宣伝コピーや蔵元自身の紹介文も交えて紹介します。
山廃ならではのしっかりしたコクと旨味があり、濃醇な味わいながらも、喉越しの鋭いキレの良さが持ち味です。名杜氏農口尚彦氏から山廃の技を受け継いだ鹿野酒造・常きげんの看板商品です。
常温はもちろん、ぬる燗・熱燗・燗冷ましでも美味しくお召し上がりいただけます。
味わい
甘辛でいうとやや辛口。口に含むと山廃特有の酸味やコクを感じますが、すぐ柔らかさやなめらかな旨味を感じた後、スッと味が引いていきただただ静かな重さの無い状態になります。よく「常きげん」はキレが良いといいますが、これは後味や余韻が残らずスッキリする感じですね。ただ完全に残らないわけでなく、上品な甘味が奥の方に感じます。
香り
まず初めに熟成感のあるふくよかな立ち香を感じることが出来ますが、それほど強くない印象です。口に含んだ後、上品で清涼な香りが混ざってくる感じがします。
温度帯
常温だと濃醇で酸味があり、キレが良く、強さ・骨太さを感じます。後口で奥に甘味が感じられます。
ぬる燗ですと、ふんわりとした旨味が広がり、常温時より酸が強く出て甘酸っぱい飲み口になりキレが増す印象です。
このお酒に合うこんか漬け
最初の飲み口がしっかりしており、酸味や旨味が感じられますが、後口がほんのり甘くスッキリとしたお酒ですので、クセが強く濃いものや、脂分や生臭さが出るものでなく、歯ごたえがあり何度も口の中で噛みしめ、お酒とともにスッと喉の奥に消えていくような商品が良いのではと思います。
当店のものではふぐのぬか漬け(糠棒ふぐ)のスライスしたものがおすすめになります。
この棒ふぐとは、5,6月に日本海で獲れたごまふぐを3枚卸ししたあと、糠に漬け込み2年に渡り発酵熟成させたものです。
棒とはふぐが棒状になっていることからで、またこちらの地域では昔からふぐを3枚に卸したものを筋(すじ)と呼ぶことから、棒すじという名で親しまれています。
肉厚なふぐをさらに天日干ししたものを使用するため漬け込み時間がかかりますが、その分旨味の素となるいしるをしっかり吸収し、さらに麹を多めに加えているので自然な甘さも感じられる、味わい深い逸品です。