先輩にインタビュー⑦
7人目のインタビューは、7期生でキャプテンを務められた矢尾桃子さんです。
3年前に実施した「関西外大まるっと図鑑」でも紹介されていますので、そちらも併せてご覧ください。
4年間での成長
私生活では4年間の寮生活、委員会活動で責任感が身についたとお話しされていました。委員会内での仕事には、いつまでに必ず終わらせるという期限があったため、忘れないように部屋のドアに張り紙をしたり、携帯の待ち受けにしたりと矢尾さんなりの工夫をし、必ず期限内に仕上げるようにしていたそうです。
競技では、コロナが流行していた頃の自主練習期間が大きな成長につながったとお話しされていました。コロナ期間で全体練習がしばらくなくなってしまった時に、自分自身と向き合い練習メニューを考え、矢尾さんは3000m以上の距離のレースに苦手意識があったため、それを克服することを目的として長い距離を走るための体力・筋力づくりを意識してトレーニングを行っていたそうです。練習頻度は週6日で、練習時間は朝に1時間、午後は90分から120分ほど走り、起伏のある場所での距離走や坂ダッシュを中心に1日20~30㎞を目標にして練習に励んでいたそうです。モチベーションを維持するために全体練習を10割とすると、6~7割の練習強度で行い、少し強度を落として継続することを重視していました。また走る練習以外に、体幹トレーニングや縄跳び、バイクトレーニング、トランポリンなど気分転換に様々なことにチャレンジしていました。コロナ禍の逆境を味方にし、1人で走る環境に慣れ、起伏のあるコースでの練習によって競技者としてレベルアップできたとお話されていました。自分で工夫して力をつけていったことで、2021年日本学生女子ハーフマラソンで4位入賞を果たしました。自分に合った練習を見つけることができたことで、楽しく長く走れるようになったそうです。大学卒業のタイミングで競技の一線からは離れ、社会人としての新生活の中で走ることから少し遠ざかっていましたが、お仕事が忙しいなかでも限られた時間内で力をつけ、故郷の福井で初めてのフルマラソンの大会「ふくい桜マラソン2024」で招待選手として走る機会を得て、今年の年明けから練習を再開しました。そこはさすがの矢尾さん、約2ヶ月間集中してトレーニングし、見事に2時間43分30秒で3位入賞という素晴らしい結果につながりました。
苦悩と葛藤
1年間チームのキャプテンを務めた矢尾さんですが、元々は自ら先頭に立ち引っ張っていくタイプではなかったそうで、最初はチームをどのようにまとめればよいのか分からず、キャプテンを務めていた頃は悩みが多くあったとお話しされていました。キャプテンになったばかりの大学4回生の始めの頃は、怪我をしてしまい思うように走れない期間が続き、キャプテンとして競技でチームを引っ張ることができず申し訳ないという気持ちがあったそうです。怪我から復帰後は、キャプテン、また最上級生として競技でチームを引っ張るために、全体練習とはまた別で+α猛練習を積みました。「自分がやらないといけない!」という思いのもと、自分で練習を考え起伏のあるコースでの走り込みやジムでトレーニングに励み、さらに力をつけていきました。午後に全体練習が無い日には、午前中にジムへ行き、お尻や肩甲骨周りの筋肉を中心に1時間~2時間ほどトレーニングをしていました。1部練習の日には、先程のトレーニングに加え傾斜をつけたトレッドミルで1時間ほど走っていたそうです。当時を振り返り矢尾さんは、「あの頃は何かしていないと落ち着かず、トレーニングをして気持ちを紛らわしていて苦しいやり方だった」とお話されていました。
そして最終学年で迎える関西学生女子駅伝が迫ってきた頃、3年前の全日本出場を逃した記憶が蘇り、不安やプレッシャーに苦しむ日々を送っていましたが、そんなときに「桃なら大丈夫」と声をかけてくれる同期や、「桃子先輩のために頑張ります」と言ってくれる後輩に励まされ、「このチームなら大丈夫だ」と前を向くことができたそうです。苦しみを乗り越えて全員で全国の切符をつかみ取ったときは、嬉しくて涙が止まらず、支えてくれた同期や後輩たちと出会えて幸せで、本当に感謝の気持ちでいっぱいですとお話しされていました。私が1年生のときのキャプテンが矢尾さんだったので、いつも矢尾さんが先頭に立って私たちを引っ張ってくださっていたこと、ストイックに取り組んでいたことを思い出しました。
新しい道
現在矢尾さんは、地元福井で清川メッキ工業株式会社という自動車会社に勤務しており、半導体にメッキ加工をする生産技術部に所属しています。具体的には、メッキ加工装置のエラー対応、設備の条件だしや立ち上げを行っているそうです。自動車の安全性は人々の命に関わるためより高い品質が求められ、責任感を持って仕事をしているとお話されていました。細かい過程を検証するとても難しい仕事ですが、設備トラブルがあった際に解決できたときにやりがいを感じるといいます。上司や先輩方と相談しながら、トラブルの原因を設備の状態から推測し、修理や交換を行い、その後問題なく設備が稼働したときはやりがいと自身の成長を感じるそうです。
走りで貢献を
明るく努力を続ける姿が印象的な矢尾さんですが、今後の目標は、体を動かす時間とプライベートを楽しむ時間を作ることだそうです。現在は、競技としてのランニングからは離れ、社会人として新たな道を進んでいますが、「趣味で走り続けて、イベントなどに参加する機会を増やしていきたい」と目標を口にされていました。
そんな思いに至ったのは、今年3月下旬に行われ3位に入賞した「ふくい桜マラソン2024」での経験でした。当大会は、初めて福井で開催されたフルマラソンのイベントで、矢尾さんは見事3位に入賞されました。レース後、たくさんの方が「おめでとう」「私もやってみたい!」と声をかけてくださり、走ることの魅力を知ってもらえたことに喜びを感じたそうです。それをきっかけに、「自分が走ることで、陸上界や周りの人に貢献したい」「走ることが楽しいと思ってくれる人が少しでも増えるように活動していきたい」という思いが膨らんだといいます。走ることが好きな矢尾さんだからこその思いですね。様々なことにチャレンジし、努力を続ける矢尾さんの今後の活躍も楽しみです。
陸上界や周りの方々への貢献という点では、私たち駅伝部が行う地域貢献の活動はとても意義のあることだとおっしゃってくださいました。関西外大駅伝部を卒業し、違う立場からみた今だからこそ、その大切さや価値をより感じるとお話されていました。私たちだからこそできること、与えられる影響があると心に留めて活動していきたいと改めて思いました。
取材後記 (4年 上本歩未・3年 水川陽香留)
今回の取材を通して、矢尾さんの大学時代の活躍の裏にある、努力や思いを知ることができました。大学で急成長を遂げられた矢尾さんのお話からは、陸上に向き合う姿勢や実行力など、競技者として見習うべきものがたくさんあり、私自身、今後の陸上人生を見直すきっかけとなりました。仕事に就いた今も、強い芯をもち、目標に向かって努力を続ける矢尾さんは変わっていませんでした。社会人として、ランナーとしての今後の活躍もとても楽しみです。
今回の取材を通し、私たちが知り得なかった矢尾さんの苦悩や4年間の弛まぬ努力、そして何よりも走ることが好きという気持ちを改めて知る機会となりました。矢尾さんの4年間の功績はまさに努力の結晶であると感じました。陸上に対する思い、目標に対してストイックに取り組む姿勢や意志の強さには私も見習うことが多くありました。何事にも全力で努力し続ける矢尾さんの今後のご活躍を期待しています。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?