五輪委会長交代にみる同質と異質

ご存じのとおり、森五輪委会長は失言により辞職されました。まだ次の会長は決まりませんが、この顛末は日本の社会だけでなく、世界の今をとてもよく表している、ということに気づきまとめてみることにしました。

森会長の失言と同席者、政治家の反応

 森会長は2月3日のJOC臨時評議員会で「女性がたくさん入っている理事会は時間がかかります」と発言。おそらくは彼やその場にいて、声を出して笑いすらした評議員のみなさん、そして彼をそのままかばおうとした政治家やIOCの意識は、ちょっとした失言に過ぎなかったのでしょう。ちなみにこの評議員会、女性は63人中おひとりしかいないようです。(https://www.joc.or.jp/about/councilor/ からお名前でのみ見ているのでもしかしたらいらっしゃるかも)彼らの感覚では、課題は理事会の前に解消し会ではシャンシャンと話を進めるもの。理事会に至って根本的な質問をしたりするのはおかしなことなのでしょう。

 それは同質な彼らにとってあまりに常識なので、女性という異質なものは、それを知らない困ったゲスト。なのです。そう、「ゲスト」です。ゲストなら余計なことは言わず、見守っていればいいのに。ということなのでしょう。

異質なものを受け入れる

 私たちはだれしも、異質を受け入れるのが大変です。多様性などと言いつつ、同質で集まり異質を排除してしまうこと、よくありますよね。これは別にジェンダーの問題ではありません。私自身も、社外での会議では異なることを前提とするため気になりませんが、社内の会議では時々、異質な意見を排除したくなる自分と出会います。異質を受け入れようとすると、時間がかかります。場合によっては「ちゃぶ台返し」に近いこともあります。でも、受け入れて話し合うと、それまでは見えなかったことが見えることがあります。これが醍醐味だなあ、と思います。

いじめの構図にのった・・・。

 その後、森会長自身が辞意を表明、ネットやマスコミでは、森たたきが始まりました。確かに彼の意識は古いし、あきらかに女性差別的な発言があったわけだし、彼には問題があります。でもそこまでたたくか、というくらいたたかれています。これ、クラスのガキ大将が、ある日突然いじめられるようになるようすとそっくりではありませんか?これもまた、同質のわな、なのではないかと思うのです。今度は、森氏が異なるものになったわけです。

同質の中にいるのは気持ちいいけど・・・

 繰り返しになりますが、私たちは同質の中にいたがるものなのではないでしょうか。仲間ってそういうものですよね。分かり合っている仲間、長く価値観をともにしてきた仲間。大切だし、心地よい。

 でもその中で、異質は登場します。同質であるつもりが、少しずつ向かう方向性が変わることもありますし、あることについては、考えが異なることもあるでしょう。これを受け入れていくことが異質を受け入れる第一歩だと思います。異なることは面倒が増えることだけど、それをあえて発信していくこと、そしてそれを受け入れていくことが大切なのでしょう。

 一方で、同質なグループに異質が入ってい来ることもある。それが今社会で起きていることですよね。男性だけだった社会に女性や男性か女性か悩む人たちが登場しつつあります。でも実は今までもあったのではないでしょうか?同じ男性でも、異質なものは入ろうとして入れてもらえないでここまで来た。のではないかと思います。

日本だけではありません

 西欧社会でも同じことが起きているのではないかと思います。白人という同質の社会に、黒人や黄色人種、ヒスパニックという「異質」を受け入れようというのが20世紀から今に至る歴史です。でも去年だって、Black lives Matter運動、が必死に行われています。グローバル、といいつつ、彼らの常識を世界に押し付けたりしているあたりも、なかなか異質を受け入れることはできていないわけです。

本当に大切なこと

 ジェンダーやら多様性やらという問題以前の問題ですよね。自分たちと異なる存在があることをまずは、受け入れること、受け入れる前にまずは、異なる存在を知り、それについて学ぶことが必要なのではないでしょうか。




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