日本にはホームレスがいない???

 3週間(8/28-9/18)、アメリカ北西部ワシントン州シアトルにてグローバルリーダーシップ研修を受けて来ました。
 アメリカの滞在期間で驚いたことの一つに、ホームレスの方々、身体に問題を抱えてる方々、外見からの判断ですが低所得者と思われる方々、薬物中毒、アルコール依存症と思われる方々が非常に多くみられたことです。彼らは街頭に立ち、食事やお金の要求等を行っていました。
 私にとってこの事実は非常に驚きでした。なぜなら、シアトルは非常にアメリカ国内でも高級住宅街で、安全な街というイメージがあったからです。また、彼らのような存在は先進国よりも発展途上国に多くみられ、アメリカでは日本と同じようにほとんどみられないのではないかと想像していました。現実を見て、想像と大きく外れていることがわかりました。

 タイトルでは過剰なことを言いましたが、もう少し詳しく説明すると、私は日本社会はホームレスがいないよう(インビジブルな存在)に感じさせられる社会だなと思います。
 日本に住むホームレスの方々の多くは、都市の公園、川の土手、駅の周辺等に住んでいるように感じます。彼らが街中を歩く姿や買い物する姿等をみた経験が私にはほとんどありません。彼らが生きるのはどちらかというと暗がりな場所が多いのではないでしょうか。
 彼らは社会という枠から外され、インビジブルな存在になっている、もしくは、社会という枠から消され、インビジブルな存在とならざるを得ない状況に追い込まれているといえるのではないでしょうか。
 ただし、アメリカの社会が良く、日本が悪いと言いたいわけではありません。正直に言って、私は彼らに恐怖を感じました。特に何かをされたわけでも、アジア人蔑視を受けたわけでもありません。
 ただ、差別をしたつもりはありませんが、彼らと同じ空間にいる際にはより自らの安全を守らなければいけないと思ったことは事実です。無意識的に彼らの存在を差別する心があったからなのかもしれません。
 私がこの考えに至った時に、一つ頭に思い描いた映画があります。それが是枝裕和監督の『万引き家族』です。インタビュー内でも「invisible people(見えない人々)」がテーマだったと語っています。

 日本は本当に安全で美しい国だという事を改めて感じました。誇るべき事実だと思います。ただ、その一方で、無自覚のうちに「invisible people(見えない人々)」の存在を作り上げているのではないでしょうか。
 残念なことに、その問題を解決するための具体的な案は一切持っていませんが、考えること、表現することだけでも価値があると私は思います。

上野 友寛


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