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【ビジネスアスリート栄養学】第8回:「脂質活用術」――持久力・集中力・ホルモンバランスを高める鍵
前回(第7回)は「たんぱく質とアミノ酸の戦略」をテーマに、筋力強化や集中力、リカバリー促進のために欠かせない栄養学的ポイントをお伝えしました。今回はそこから一歩踏み込み、脂質(脂肪酸)の役割と選び方を徹底解説します。ビジネスシーンでもアスリートさながらのパフォーマンスを発揮するためには、単に「太りにくい・動脈硬化を防ぐ」だけでなく、エネルギー持久力やホルモンバランス、脳機能の維持といった多角的視点で脂質を捉えることが重要です。
1. ビジネスアスリートにおける脂質の重要性
エネルギー源としての脂質
脂質は1gあたり9kcalのエネルギーを生み出します。これは糖質やたんぱく質(1gあたり4kcal)のおよそ2倍以上のエネルギー密度です。忙しいビジネスパーソンが長時間集中し、活動を続けるための「持久力」を支える燃料として、適切に脂質を摂取しておくことは非常に大切です。ホルモンバランス・細胞膜の維持
脂質の一部であるコレステロールは、ステロイドホルモン(テストステロン、エストロゲンなど)合成や細胞膜の維持に不可欠。ホルモンバランスの乱れは疲労感や集中力低下につながり、ビジネスのパフォーマンスにも影響しかねません。ビタミンの吸収促進
ビタミンA, D, E, Kといった脂溶性ビタミンは、脂質の存在がなければ効率的に吸収されません。サプリメントでこれらのビタミンを摂取していても、極端な低脂肪食では十分に活かせないことがあります。
2. 脂質の種類と特徴
2-1. 飽和脂肪酸(SFA)
バター、ラード、ココナッツオイルなどに多く含まれ、常温で固まりやすい。
過剰摂取はLDLコレステロール値の上昇と関連するとされていますが、一定量はエネルギー源や細胞膜の安定性維持に必要。
2-2. 一価不飽和脂肪酸(MUFA)
オリーブオイルなどに多く含まれるオレイン酸が代表格。
飽和脂肪酸より動脈硬化リスクが低いとされ、加熱安定性も比較的高い。
2-3. 多価不飽和脂肪酸(PUFA)
オメガ3系:青魚やエゴマ油、亜麻仁油に含まれるEPA・DHA・α-リノレン酸など。炎症を抑えたり、脳機能維持に寄与するといわれている。
オメガ6系:コーン油や大豆油に含まれるリノール酸など。過剰摂取は炎症促進に傾く可能性があるため、オメガ3系とのバランスが重要。
2-4. トランス脂肪酸
マーガリンの製造過程などで部分水素添加すると生成。LDLコレステロール増加とHDLコレステロール減少に寄与し、心疾患リスクが高まる可能性。
3. 脂質バランスの取り方
3-1. 飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸の比率
一般的には、総エネルギーの20~30%程度を脂質から摂り、うち飽和脂肪酸は全体の7~10%以下に抑えるのが推奨とされています。
3-2. 抗酸化物質とのセット
不飽和脂肪酸は酸化されやすく、ビタミンEやポリフェノールを多く含む食材(ナッツ類や緑黄色野菜など)と組み合わせることで酸化を抑制。
4. 具体的な実践ポイント
オメガ3系を取り入れる
サバ・サケ・イワシなど青魚を食事に加える。
亜麻仁油やエゴマ油をサラダのドレッシングとして使用(加熱は避ける)。
オリーブオイルを活用する
加熱調理にはオレイン酸が多いオリーブオイルをメインにする。
揚げ物や市販のお菓子の摂りすぎに注意
スナック類は頻度をコントロールし、揚げ油の再利用は最小限に。
MCTオイルの活用
素早いエネルギー補給ができるため、朝食にコーヒーやスムージーに加える。
5. ビジネスシーンでの脂質コントロールの意義
集中力と持久力
適切な脂質摂取は血糖値の急激な変動を緩和し、脳へ安定的にエネルギーを供給。ホルモンバランスによるコンディション調整
良質な脂質はストレスホルモンの過剰分泌を抑え、テストステロンやエストロゲンの代謝を円滑に。メンタル・フィジカルの両面サポート
いかに日々の疲労を回復し、安定したパフォーマンスを発揮するかが鍵。
まとめ
飽和脂肪酸は控えめにしつつ、オメガ3系やオリーブオイルを意識的に摂る。
トランス脂肪酸を避け、揚げ油やスナック類の摂取量を見直す。
抗酸化作用のある食品と組み合わせ、酸化ストレスを低減。
「自分に適した脂質との付き合い方」を確立することが、ビジネスアスリートとしての持久力・集中力・ホルモンバランスを高水準に保つ近道です。次回は、脂質と並んで重要な役割を担う“糖質(エネルギー戦略)”に焦点を当て、仕事の効率アップや疲労回復を後押しする新たな方法をお伝えします。どうぞお楽しみに。